星空を邪魔しない照明 パナソニックが開発、光害も防ぐ

産経ニュース / 2020年9月16日 16時1分

夜空に光が漏れないパナソニックの照明に交換した岡山県井原市美星町地区の街並み(同社提供)

 照明の光が天体観測に影響を及ぼす「光害」を防ごうと、パナソニックが夜空に光が漏れない照明の開発に成功した。「天体観測の聖地」として知られる岡山県井原市美星(びせい)町地区からの依頼で、年内に町内の防犯灯を順次取り換える予定。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、天体観測は3密(密閉、密集、密接)になりにくい趣味として注目を集める。パナソニックは同地区を足がかりに全国に普及させたい考えで、街中で気軽に星空を楽しめるようになると期待が高まっている。(山本考志)

シートで光の漏れカット

 パナソニックが開発した照明は、ランプの上部に黒いシートを取り付け、道路と平行に設置することで光害の原因となる夜空への光の漏れをカットできる。一方で、まぶしさの原因となる青色光が少ない電球色を採用して道路の明るさも保つことができる。

 開発のきっかけは井原市からの依頼。平成17年の合併で井原市に編入された美星町は、なだらかな地形による安定した気候と、工業地帯などから離れていることで人工の光が少ないことから天体観測に適しており、昭和58年ごろから天体観測のイベントを開くなどしてまちおこしを進めてきた。平成元年には全国に先駆けて「光害防止条例」を制定し、5年には天文台を建設して一般に公開。天体観測の聖地として天文ファンから親しまれている。

 井原市は28年、世界各地で光害対策を進める米国のNPO団体「国際ダークスカイ協会」(IDA)が美しい星空を保全する地域を評価する「星空保護区認証制度」の存在を知り、認定に向けての活動を開始。その中で、省エネのため蛍光灯から白色LED(発光ダイオード)への交換を進めてきた防犯灯の明るさが課題として浮上し、パナソニックに相談を寄せていた。

星空保護区の認定目指す

 井原市からの依頼でパナソニックが開発した照明は今年1月、IDAが日本メーカーの製品では初めて光害対策への効果を認証。7月には一部の地区で試験的に従来の白色LEDの防犯灯と交換して効果を確認した。市は10~12月に計411台を交換したうえで、来年3月末までに星空保護区への認定をIDAに申請する。早ければ来年半ばには結果が判明するという。

 取り組みを担当する市定住観光課の藤岡健二課長補佐は「照明を交換した地区の住民から苦情はなく、街中が落ち着いた雰囲気に変わった。天体観測に適したこれからの季節に、生活の中でも星空に親しめる環境をつくりたい」と意気込む。

 天体観測や星空観察は、新型コロナの感染防止に有効な3密を避けながら楽しめる趣味の一つだ。

 星空がきれいに見える「星取県」としてPRする鳥取県は6月から、自宅で天体観測を楽しんでもらおうと「うちで星を見よう」キャンペーンを実施。県のホームページで星座早見盤の型紙のダウンロードや、スマートフォンで星空をきれいに撮影する方法などを紹介している。

 パナソニックの広報担当者は「きれいな星空を魅力としてPRする地域の自治体などに、光害対策の一環として照明の交換を提案していきたい」としている。

ウミガメの繁殖にも悪影響

 IDAによると、過剰な人工照明による光害はエネルギーを浪費し天体観測を妨げるだけでなく、星の光を頼りにするウミガメの繁殖や渡り鳥の飛行を乱すなど、自然環境へのさまざまな悪影響が確認されているという。1988年に設立されたIDAは現在、世界に60以上の支部を設け、フィールド調査や啓発活動などを通して光害対策を進めている。

 IDA東京支部代表の越智信彰・東洋大准教授(自然科学)は「美星町の取り組みをきっかけに多くの人が光害の影響を知り、無駄な光を減らしていく全国的な動きにつながってほしい」と期待している。

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