【ユーロ経済学】独政権発足でEU改革やっと本腰? 「共通予算」「財務相」で方向性出せるか
産経ニュース / 2018年4月17日 12時15分
ドイツのメルケル首相がようやく政権を発足させ、停滞していた欧州連合(EU)改革の議論進展が期待される。“本丸”はユーロ圏の統合深化。野心的な改革を示しながら待ちぼうけにされたフランスのマクロン大統領に「欧州の盟主」はどんな返事を出すのか。独仏両輪がそろい、統合深化は進むのか-。
独政権発足後初となった3月22~23日のEU首脳会議の閉幕後、独仏首脳は一緒に報道陣に姿を見せた。
「再任おめでとう」。そう述べたマクロン氏に、メルケル氏は直前に起きた仏南部スーパー襲撃テロを受け、「できる支援を行う」と表明した。今や恒例の共同会見は両首脳の“蜜月”を物語る。
英国のEU離脱や英在住の露元情報機関員への神経剤襲撃、対米貿易問題など喫緊の課題がめじろ押しだった首脳会議はユーロ圏改革も重要な議題だった。EUは6月の首脳会議で改革の方向性をまとめる方針だ。
マクロン氏は昨年9月の独総選挙直後、改革議論の加速のため、具体的な改革案を打ち出したが、独側の政権樹立難航という誤算のため、「3月まで」とした両国の改革方針のとりまとめもずれ込んだ。会見では「6月までに独仏共通の工程表を提示する」と意気込みを示した。
銀行同盟と欧州版IMF
改革はユーロ圏の弱点の克服と強化が狙いだ。債務危機では「通貨は同じでも財政はバラバラ」との欠陥や危機対応の準備不足が露呈。EUが支援の条件として危機国に求めた財政緊縮策は「反EU」感情が広がるきっかけともなった。
ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力はなお根強いが、経済情勢は改善した。「再度の困難に備えなければならない」とメルケル氏も改革を急ぐ考えだ。
優先は「銀行同盟」の完成と「欧州通貨基金」(EMF)創設。銀行同盟は金融行政の統合が目的で、3本柱のうち銀行の監督一元化と破綻処理の共通化は実現したが、預金保険制度の共通化が残る。EMFは債務危機でつくられた「欧州安定メカニズム」(ESM)を拡充し、欧州版国際通貨基金(IMF)に発展させる構想だ。
預金保険制度ではドイツなどが自国預金者が負担をかぶる形となるのを懸念して議論が難航してきた。ただ、銀行同盟も通貨基金も方向は定まっている。ユーロ圏改革でより大きな課題となるのは、その「先」だ。
レッドラインはない
焦点はマクロンが提唱するユーロ圏共通の予算と財務相の新設だ。欧州委員会はこれに対し、ユーロ圏予算をEU予算の枠内に置いて、欧州委副委員長が財務相を兼ねる案を提示。欧州委には非ユーロ導入国への配慮があるが、権限をめぐる仏側との駆け引きもうかがえる。
独側ではメルケル政権は連立協定で「限定的な予算手段」を支持し、将来的な予算創設に含みを残す。他国の財政を支える形に反対で、使途で仏側とズレも指摘される上、非ユーロ国への配慮も強い。課題は多いが、独外交政策評議会(DGAP)のシュワルツァー所長は「レッドライン(越えられない一線)は敷いていない」と柔軟さをみる。
独政権では連立相手の社会民主党がマクロン氏の提案に積極的な一方、メルケル氏の与党には慎重論も強く、今後、マクロン氏とどう折り合いをつけるかが注視される。
議論を受け、他国も動きだした。オランダやフィンランドなどユーロ非導入国を含む欧州北部8カ国は3月上旬、「健全財政が最善の危機予防」と共同声明を出し、統合深化を牽制。念頭にあるのは共通予算などの新設で、オランダのルッテ首相は独メディアで「私らは独仏の合意にうなずくだけでない」と独仏主導に横やりを入れた。
これらはドイツ同様に財政規律を重視する国々。統合深化に対するドイツの姿勢がなお不明な中、「これまでは陰に隠れていたが、今、ドイツが仲間か、相手側かを見定めている」とDGAPの仏独関係専門家、デメスマイ氏は指摘。「ドイツは立場を明確にせねばならないときだ」との見方を示した。(ベルリン 宮下日出男)
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