ベネズエラ「希望」に手届かず ハイパーインフレで経済悪化 大統領選迫るも…

産経ニュース / 2018年5月17日 22時24分

品不足のイメージを避けるためか、ベネズエラの国営スーパーの棚には同一商品ばかりが並んでいた=2018年5月16日、ベネズエラ・カラカス

 大統領選の投開票が20日に迫った南米ベネズエラ。首都カラカスでは選挙戦の熱気はほとんど感じられず、多くの人々は日々の暮らしに追われていた。「赤ん坊のミルクも買えない」「年金だけじゃ暮らしていけない」。わずかな現金を求めて銀行のATM(現金自動預払機)にできた長蛇の列からは生活困窮を訴える声は聞かれるが、選挙については口が重い。悪化し続ける経済の改善策が候補者たちから示されないうえ、独裁傾向を強めてきた反米左翼マドゥロ大統領の再選が予想される中、人々からは希望が失われつつある。(カラカス 住井亨介)

■「暮らしていけない」

 「もう3時間半も並んでいるわ」

 生後2カ月の女児ジャンケラリスちゃんを抱え、ATMの列に並んでいたマリソール・バラガスさん(27)は疲れ果てたようにこぼした。毎朝、子供を学校に送った後に列に並ぶが、一度に引き下ろせる上限額は2万ボリバル、日本円では約32円にすぎない。

 ハイパーインフレーションに歯止めがかからず、出回る紙幣の数が圧倒的に不足。数少ない紙幣を人々が奪い合うような状況だ。

 「それだけじゃクッキーや飲料水も買えない。でもバスに乗るには現金がいるから」と語るバラガスさん。食料の調達はままならず、「この娘のミルクも買えないので、パスタやコメをゆでたお湯に砂糖を加えてあげているの」と苦しい状況を訴えた。

 朝7時半から4時間以上待ち続けていた年金生活者のブラス・アグデロさん(65)は、1カ月分の年金240万ボリバルを下ろしに来た。「これだけではとても暮らしていけない」と語るが、大統領選についてたずねると、野党指導者らを次々と投獄、公職追放したマドゥロ政権を気遣うのか重く口を閉ざしてしまった。

■国営スーパーは閑散

 国営スーパーをのぞくと、客の姿はまばらで警戒する警備員や店員ばかりが目立つ。生鮮食品はなく、冷凍食品の冷蔵棚は空っぽ。物不足のイメージを避けるためか、床用洗剤といった必需品とはいえないような同一商品ばかりで棚は埋め尽くされていた。

 一方、富裕層向けの大型スーパーでは、国営スーパーにはなかったさまざまな食料品や雑貨が棚を埋め尽くし、欧米のスーパーと変わらない雰囲気だ。値段はとても一般労働者には手が届かないレベルだが、それでも多くの客でにぎわう。

 この高級スーパーでよく買い物をするというソラマイラ・ロメロさん(24)は「とても高い。でも国営スーパーでは食料を見つけられないんだもの」と肩をすくめる。

 商品は豊富にそろうものの、大量購入する客はあまりおらず、多くは必要最低限の品物だけを吟味して大切そうに買っていく。

 近くに住むエウヘニア・ロハスさん(48)も「何を買うにもお金が足りない。子供用のミルク缶が1つ400万ボリバル。最低賃金の倍以上するのよ」と首を振る。

 過去の事例などから不正な票操作の可能性も取り沙汰される大統領選。人々が力なく訴える声からは諦めの気持ちが伝わってきた。

■ベネズエラ 日本の約2・4倍の国土に約3197万人(2017年推定)が暮らす。公用語はスペイン語。13年3月、チャベス前大統領の死去に伴い、当時のマドゥロ副大統領が大統領に就任。原油確認埋蔵量は世界最大で、主要産業は鉱業や石油化学。しかし、バラマキ政策に加えて外貨収入の9割以上を依存する原油価格の低迷で財政が破綻。ハイパーインフレを招き、今年4月の物価上昇率は前年同月比で1万3779%(国会発表)。食料、医薬品不足で餓死者も出て、大量の避難民が近隣国に流出している。

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