【大統領からみる韓国(5)】世界も驚愕…文氏“北(朝鮮)を守る”ベルリン構想 THAADも迷走

産経ニュース / 2017年9月11日 11時7分

 人前で“格好良さ”を演出することを好む文在寅(ムン・ジェイン)は20カ国・地域(G20)首脳会議出席ため訪れたドイツの首都ベルリンでも世界を驚かす「イベント」を用意した。

 「南北(朝鮮)の平和・協力に寄与した功績」でノーベル平和賞を受賞した元大統領の金大中(キム・デジュン)がベルリンで演説を行ったことにならい、文は北朝鮮に対話を呼びかける「ベルリン構想」を発表した。

 ところが、発表2日前の7月4日、北朝鮮は文をあざ笑うかのように大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行った。

 「ベルリン構想」は修正を余儀なくされたが、それでも驚くべき内容が含まれた。

 「私は、この場ではっきりと言う」と文は力を込めて言った。「われわれは北朝鮮の崩壊を望まない。いかなる形の吸収統一も推進せず、人為的な統一も追及しない」

 1948年、建国とともに制定された韓国憲法は、その後9回の改正を行っているが、「大韓民国の領土は韓半島およびその付属島嶼とする」(第3条)となっている。つまり、統一は至上課題のはずだ。   

 驚くことはまだある。「韓半島で恒久的な平和構造を定着させるため、(朝鮮戦争の)終戦とともに関連国が参加する韓半島平和協定を締結すべきだ」と訴えたのだ。

 「平和協定締結」は、北朝鮮と中国の主張を認めるものだ。2016年2月、中国の外交部長、王毅は「(朝鮮半島の)非核化を実現するのと朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換するのを並行して推進すべきだ」といった。

 北朝鮮は平和協定を結ぶためには、「外国軍隊(在韓米軍)の撤収、外国との軍事関連条約破棄」など6つの条件をクリアしなければならないと主張しつづけている。

 平和協定の落とし穴を知る韓国の歴代政権は慎重な姿勢を貫いた。文はそれを勇ましく「構想」にもりこんだばかりか「合意は政権が変わるたびに揺れるか壊れてもならない」と、不可逆性にも言及したのだ。

 文政権は米軍の最新鋭迎撃システム高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐっても迷走している。

 朴槿恵前政権がTHAAD配備を決めたのは16年6月。当時の野党第一党「共に民主党」常任顧問だった文は、「配備は得るものより失うものが多い」(16年7月13日)と反対を表明。10月には「THAAD配備を暫定的に中断し、北の核廃棄のための外交努力を再スタートさせるべきだ」と主張した。

 しかし、大統領就任後、米国との関係悪化を懸念したのか文は米公式訪問に先立って高官を派遣し、THAADを米韓首脳会談の議題からはずしてほしいと要請した。

 ワシントン入りした文は、首脳会談に先立つ6月28日、米議会を訪問した。文を待ち構えていた共和党のライアン下院議長が「THAADに明確な立場を表明してほしい」と求めると文はこう述べた。

 「もしかして、韓国新政府が、THAAD配備決定を覆す意図で環境影響評価の手順を踏んでいると疑心を抱いているかもしれないが、そのような心配は捨ててもよい」

 ところがその1週間後にドイツで行われた中国の国家主席、習近平との首脳会談で文は「THAADは国内的に正当性を確保できなかったので環境評価などをおこなっている」「その間、北の核問題に進展があればTHAADそのものが必要なくなる状況が来るかもしれない」と言った。

 韓国未来研究所長の黄長洙はこう警告する。「THAADは米韓同盟の行方を占う試金石だ。THAADを配備できなければ米軍は撤退するしかない。そうなれば真っ先に外国資本が韓国から逃げるだろう」

 7月28日、韓国大統領府は「環境影響評価を実施した後、その結果を踏まえて(配備を)決定する」と発表した。同日深夜、北朝鮮はまたもやICBMを発射したのだった。        =敬称略   (龍谷大学教授 李相哲)

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