【広島「正論」友の会】憲法改正「残された時間少ない」五嶋清・本紙編集長 カギは「国民投票時に安倍首相人気が高いかどうか」

産経ニュース / 2017年12月8日 11時32分

産経新聞大阪本社編集局の五嶋清編集長を招いた広島「正論」友の会の第9回講演会=広島市

 「安倍政権をとりまく政治情勢と憲法改正」と題して4日、広島市で開かれた広島「正論」友の会の第9回講演会。産経新聞大阪本社編集局の五嶋清編集長は、「改憲勢力」が衆参両院で3分の2以上を占めていても憲法改正へのハードルがいまだ高いとの現状分析を示した上で、再来年夏の参院選以降も3分の2以上が維持されるとは限らないと指摘。「憲法改正のための動きを急ぐ必要がある」と訴えた。講演の要旨は次の通り。

 北朝鮮をめぐる情勢は、米共和党の幹部が韓国に駐留する米軍兵士の家族を帰国させるべきだと発言するなど緊迫している。北朝鮮が核兵器とミサイルの開発を止めないためだが、なぜ止めないかというと、核兵器による攻撃能力を米国と均衡させ、攻撃すれば核戦争にエスカレートして双方に甚大な被害が生じるため、結果的に戦争が抑止されるという形に持っていきたいためだ。

 しかし今は、まだ米軍の戦力が圧倒的なため、対抗するための核兵器開発を止めることができない。開発の速度は、米軍によるシリア空爆後に加速しており、これは北朝鮮の指導者が「シリアがやられたのは、核ミサイルを持っていなかったから」と考えたのは間違いない。

 この情勢に対して日本はどうすべきか、というと、できることはほとんどない。自衛隊は北朝鮮まで出掛けて戦争をする能力をほとんど持っていないし、すでに実施している経済制裁にしても、中国やロシアが原油をパイプラインで送り続けているため実質的な制裁になっていない。

 韓国に不法占拠されている竹島、ロシアに不法占拠されている北方領土についても言えることだが、武力という背景を持たない“話し合い”が通じる外交相手ばかりではない、ということだ。制限をかけられた外交にもかかわらず、安倍晋三首相は良くやっていると評価できる。

 歴代の首相と比べても高得点の安倍外交だが、国民からの人気には反映していないのが現実だ。例えば、歴史的な意義を持つオバマ前米大統領の広島訪問を実現させた昨年5月、安倍内閣の支持率は上昇したが、翌6月には下降した。

 逆に、安全保障法制を閣議決定したときに下がった支持率は、法案が可決され法律ができてしまえば元に戻った。功績も悪評も、国民の多くにはすぐに忘れられてしまうのが現実で、特に外交に関しては、その傾向が強い。

 アベノミクスについては「評価しない」とする意見もあるが、消費税をめぐる安倍首相の判断は常に受け入れられているといえる。従来「消費税率を上げる」と言って選挙に勝った政権はなかった。

 ところが10月の衆院選は安倍首相が税率アップを明言したにもかかわらず、自民党が勝った。これは安倍政権の経済政策についての理解が、国民の間に浸透してきたからではないかと思う。

 一方、竹島に関する安倍首相の姿勢は物足りない。島根県が制定した「竹島の日」の記念式典を政府が主催する行事にすると、政権を奪回した選挙で公約したにもかかわらず、5年経っても実現できていない。韓国に対して及び腰だ。

 その理由は、「憲法改正を実現するためには、その前になるべくダメージを受けないことが重要」と判断しているためだ。なぜダメージが改憲を妨げるかというと、明確に賛否を決めておらず、そのときの気分や政治家の人気で決める層の動向が、国民投票の結果を左右するからだ。

 従って、憲法改正が実現できるかは、国民投票時に安倍首相の人気が高いかどうかにかかっている。

 安倍首相は自民党総裁の任期を今年3月、従来の6年から9年に延長したが、これを憲法改正に使える期間が延び、3年の猶予ができた、ととらえるのは間違っている。本当の狙いは、政権末期の影響力低下を避けるためだ。さらに、再来年夏の参院選は春の統一地方選後の実施で、過去の戦績から自民党が弱いとされ、改憲勢力が3分の2以上を維持する可能性は少ない。

 となれば、憲法改正が発議できるのは再来年夏までの1年半しかないとみるのが現実的で、残された時間は少ない。安倍首相も改憲に向けてかなり急ぎ足になっているはずで、今後の動きを注視してほしい。

産経ニュース

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