【衝撃事件の核心】凶器は「つまようじボーガン」最速100キロ超の威力、玩具にあらず

産経ニュース / 2018年2月7日 11時2分

 最高速度は時速にして102キロ。弾丸のごとく放たれたその鋭い物体は、人間の体に見立てた豚足に、ぶすりと突き刺さった-。大阪府警の科学捜査研究所が鑑定したのは通称「つまようじボーガン」。手のひらサイズの玩具だが、その威力のすさまじさから暴行の凶器として使用された。府警に逮捕された男らは、被害者の顔面につまようじを撃ちまくった。合計数十本が突き刺さったその表皮からは、出血が止まることがなかったという。焼き肉店で起きた凄惨なリンチ事件の顛末とは。

えげつない写真

 「もう一面、つまようじや。女の子が見たら、卒倒するんちゃうかな」

 歴戦の捜査関係者がまゆをひそめ、半ばあきれたようにつぶやいた。

 押収物のスマートフォンに残された1枚の画像。被害男性(35)のアップで、両目を閉じた顔に、高密度でつまようじが刺さっている。

 傷害などの容疑で逮捕されたのは大阪府泉大津市で焼き肉店「ぎゅうぎゅう」を経営する向井正男容疑者(42)だった。

 店は平成28年夏ごろにオープン。当初は被害男性が店長に就いていた。

 2人は以前の職場が同じで、出身も隣町同士。なじみの間柄ではあった。しかし経営者と店長という雇用関係はいつしか、支配・従属の関係に変わっていく。

 向井容疑者らは「店の金を使い込んだ。勤務態度も悪い」として昨年5月ごろから、男性に暴行するようになった。

 男性のあまたの生傷を見かねたのか、同年9月には家族や知人が府警泉大津署に相談に行った。

 これを受け、同署は男性本人から事情を聴いたが、男性は暴行を否定し、何かにおびえた様子で多くを語ろうとしなかったという。

 10月にも別の知人から同様の相談があったが、またも男性は「そんな(暴行を受けた)ことはない」と口をつぐんだ。

暴力のオンパレード、住民の噂に…

 状況が変わったのは11月中旬だった。「もう店を辞めたから」と、男性が過去の暴行被害について吐露し始めたのだ。

 「歯もペンチで抜かれた」。捜査員に打ち明けた男性の上あごの歯はほとんどなくなっていた。

 府警は昨年11月、男性に対する傷害容疑で、向井容疑者と、当時の焼き肉店店長、御園生(みそのお)裕貴容疑者(25)の逮捕に踏み切った。今年1月には暴行に関与したとして、向井容疑者の妻でスナック店従業員、岬容疑者(26)も逮捕している。

 このうち主犯格の向井容疑者は、すでに3件の暴行罪と2件の傷害罪で起訴されている。

 リンチの態様は残虐だ。つまようじボーガンによる暴行以外にも、太ももや尻に熱湯をかけ、大やけどを負わせる▽針金で両手首と手指を縛り付け、針金の先端につけたティッシュに火をつける▽鼻の中にティッシュを詰め、燃やす-と暴力行為のオンパレードだった。

 焼き肉店の近隣住民らの間でも、男性へのリンチの噂が飛び交っていた。店の評判も芳しくなかったようだ。

 近くで喫茶店を営む女性は「詳しくは知らないが、顔が腫れ上がっている人が店に出入りしているのを見かけた」と証言した。

 息子が焼き肉店で短期間アルバイトしていたという40代男性も「従業員がどつかれていたという話を聞いたことがある」という。

サイトでは発禁に

 犯行に使われたつまようじボーガンは全長10センチ、幅12センチ。科捜研の鑑定では時速91〜102キロを計測した。府警の調べに対し、向井容疑者らは「スマホからネットのショッピングサイトで購入した」と供述した。

 つまようじボーガンはもともと、中国で子供向けの玩具として販売されるようになった。日本円なら数百円程度で購入できる手軽さで人気を集めた。ただその威力が問題視され、当局による規制で販売禁止になったという。

 玩具安全(ST)基準で知られる「日本玩具協会」の津田博専務理事は「これだけ威力があるものを販売すれば、流通業者も責任を問われる。販路が確立されているとは考えにくく、個人が海外から購入しているのではないか」と話す。

 その上で「製品設計で安全性が担保できないものは国際的にも玩具として取り扱わない」と指摘。「つまようじボーガンはもはや玩具ではなく、武器だ」と強調した。

 現状では、つまようじボーガンの所持を禁じる法律はないが、国内ショッピングサイトなどの運営元はすでに対策を講じている。

 ヤフーの場合は、ガイドラインに照らして出品禁止物に該当するとして昨夏以降、オークションサイトでの出品を禁止した。ショッピングサイトでも今回の事件を受けて監視を強化し販売を禁じている。

 楽天もボーガンのたぐいは以前より禁止商材としているという。

産経ニュース

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