園バス置き去り死亡事件から1年…遺族は「廃園」を求めるも園は「継続」する意向示す 現場では多くの人が献花(静岡・牧之原市)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2023年9月5日 17時45分
静岡・牧之原市の認定こども園で、3歳の女の子が通園バスに置き去りにされ、亡くなった事件から、9月5日で1年が経ちました。遺族は園の廃園を求めていますが、4日夜、取材に応じた運営法人は「園を継続する」意向を示しました。
3歳の女の子が亡くなった痛ましい事件から5日で1年。事件が起きた現場などには献花台が設置され、早朝から多くの人が献花に訪れていました。
(献花した人)
「(事件を)忘れたことはないよと、心で声をかけさせていただいた」
(献花した人)
「小さい子がずっと暑い中耐えていたと思うとかわいそう。いまだにご両親がつらい思いをされているので、花を供えて千奈ちゃんとご両親が少し気が楽になればと思った」
2022年9月、牧之原市の認定こども園、「川崎幼稚園」で起きた置き去り事件。バスで通っていた3歳の河本千奈ちゃんは、通園バスに約5時間にわたり取り残され、重度の熱中症で亡くなりました。当日、バスを運転していた増田立義元園長は、バスから園児を降ろす際、全員が降りたか確認をせず、さらに、当時の担任も、千奈ちゃんが園にいないことを把握していたにも関わらず、保護者へ連絡をしていませんでした。この事件をめぐっては、2022年12月、増田立義元園長と元保育士ら、あわせて4人が業務上過失致死の疑いで書類送検されていて、現在も捜査が続いています。先週、報道陣の取材に応じた千奈ちゃんの父親は、この一年を「これまでの人生で一番長かった」と話しました。
(河本千奈ちゃんの父親)
「朝起きるときも妻の泣いている声で起きたり、妻と一緒に気持ちを吐き出して、共感しあったり、そういった中で育児もやらないといけない、生活もしていかないといけない。つらい時間というのは長く感じる」
一方、9月4日、制限付きで取材に応じた川崎幼稚園を運営する「榛原学園」の理事長は、改めて謝罪をしました。
(榛原学園 増田多朗 理事長)
「千奈さんの幼く、尊い命を奪ってしまったことに対し、心よりご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまには心よりおわびを申し上げる」
園の関係者は月に1回、遺族との面会を続けています。
事件から1年を前に、4日、増田立義元園長や息子である現在の理事長らは、千奈ちゃんの自宅を訪れていました。千奈ちゃんの父親によりますと、事件直後、元園長は遺族に対し「廃園にする」との約束を交わしていたといいます。しかし、いまだ園の運営が続いている状況について、千奈ちゃんの父親が問い詰めると、元園長は「やめた人間なので何も言えない」と答えたということです。この1年、遺族は一貫して、園側に約束を守るよう訴えています。「廃園」について今の理事長は…。
(榛原学園 増田多朗 理事長)
「ご遺族の悲痛な思いは理解しているが、希望者がいる以上は園の継続をしていく」
「希望者がいる以上は継続する」と繰り返し説明しました。理事長は就任時、「暫定的な就任」と説明していましたが、今後の進退について聞かれると…。
(榛原学園 増田多朗 理事長)
「安全安心な園であることが確信でき、後継者が決まりましたら、理事長を交代したいという考えに変更はございません」「安心安全な園であると思いますが、一般的に確信が持てたら理事長を交代したい」
なぜ千奈ちゃんは命を落とさなければならなかったのか…。これまでの取材で明らかとなったのは、園のずさんな管理体制でした。
(川崎幼稚園 増田立義 園長(当時))
「(バス車内の)後ろをちょっと見た、見るには見た。ドアのところを見たが、その後運行記録に目を移したのがミスだった」「年齢的に一つのことをやると一つ忘れてしまうことがあるため、本当に申し訳なかった」
事件直後、県と牧之原市は、川崎幼稚園の安全管理の状況について調べるため「特別監査」を実施しました。その結果、送迎バスの運行体制や、安全確保のための、組織的な体制がなかった事が判明。県は、川崎幼稚園の運営法人に対し、「安全対策」や「保護者との連絡体制」について、法令に抵触する事実があったとして、県内の認定こども園に初めての改善勧告を出しました。現在、園では送迎バスの運行は停止していて、外部からの専門家を招き講習を受けるなど、安全管理を徹底していることを強調しました。
(榛原学園 増田多朗 理事長)
「事故前までは縦と横のつながりが希薄であったという反省から、事故後は職員同士が協力し合える風土を築き、風通しの良い組織作りを目指してきた。それまで管理職主導だったことが、職員主導で決めるなど、安全管理について話し合う風土ができた」
安全管理の徹底…。その、当たり前のことができずに、失われた代償は余りにも大きいものでした。事件から1年。遺族は大切な娘を失った現実と向き合い続けています。
(河本千奈ちゃんの父親)
「事件当初は現実を受け止められない部分があった」「日数がたつにつれて、いやでも生活をしていかなければいけない、そういった時に娘の存在は大きかったと、何をするにも幸せや楽しいと実感できなかったが、事件後、千奈が亡くなってから改めて実感することが毎日、いまでも私たちの家族の主役の1人」
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