【リニア】全線開業で静岡県への10年間経済効果1679億円…国交省が試算 県への説得狙いか
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2023年10月20日 17時55分
国交省はリニア新幹線が全線開業した際の静岡県への経済効果について10年間で1679億円に上ると発表しました。
リニア開業に伴い新幹線の県内駅への停車頻度はどのぐらい増えるのでしょうか。
(斉藤 国交相)
「東海道新幹線の静岡県内への停車が現状の約1.5倍増加するとした場合、利便性の向上が期待されます、リニアの開業は静岡県や東海エリア全体にとっても大きな効果がもたされることが期待されます」
20日、斉藤国交大臣は、リニア新幹線の全線開業に伴い、県内の駅にとまる回数が現状の1.5倍程度に増加した場合の経済効果などを発表しました。リニア新幹線の静岡工区をめぐっては、大井川の水問題や南アルプスの環境問題について議論が続いていて、県は着工を認めていません。
(川勝知事)
「トンネルを掘るということがもたらすデメリット、デメリットしかないんですね、何のメリットもありません」
2017年、川勝知事はリニア新幹線事業について、県内区間にはリニアが通過する地下トンネルの建設工事により、大井川の水が流出することから「デメリット」しかないと訴えていました。一方、リニア開業後は「のぞみ」利用者の減少が予想されることから、「ひかり」と「こだま」が県内に停車する回数が増えることが期待されていましたが、JR東海はリニア開業後の東海道新幹線の具体的な増便数を示していないため、開業による効果を県民がイメージしづらい状況が続いています。リニア問題が膠着する中、事態が動いたのは2023年1月。
(岸田 首相)
「リニア開業後の東海道新幹線における、静岡県内の駅等の停車頻度の増加について、本年夏をめどに一定の取りまとめを行い、関係者に丁寧な説明を行っていきたい」
岸田首相が、年頭の記者会見で新幹線の停車頻度の増加について、夏をめどに取りまとめる方針を表明。県とJRの協議が進まない中、事態の打開に向けて国が「静岡県へのメリット」について調査を行うことになりました。しかし、予定された「夏」を過ぎても発表がなかったことから、9月、川勝知事は取りまとめが進んでいないことに苦言を呈しました。
(川勝知事)
「もう秋なんですね 暦の上では。夏までというのはどうなっているのか」「なぜ遅れているのかを含め、我々にはお示しいただきたい」
こうした中、20日、ようやく発表された国交省の調査結果。国交省によりますと、リニア新幹線が東京-大阪間の全線で開業した場合、全体の輸送量が約3割減少する可能性があると試算。この輸送力の余力を活用して、静岡駅や浜松駅での停車頻度を、現在の20分に1本から12分に1本、熱海駅や三島駅で24分に1本から15分に1本に増加させることで、県外から来る観光客などが増え、10年間で1679億円の経済効果が見込まれるということです。リニア開業が静岡県にもメリットがあることを示し、県が認めていない静岡工区の着工に理解を求めるのが狙いです。“静岡県を説得するため”ともいえる国の調査結果について、街の人は…。
(60代 男性)
「1時間で東京に行く便が1本でも2本でも増えれば、新幹線通勤が増えるので、向こうで家を構えなくても静岡から通う人が増えるのは確かでしょうね」
(30代 男性)
「(新幹線を)使う人にとってはありがたいとは思うが、ひかりは1時間に1本、それが1.2、1.5倍になったからといって、そんなに変わるのかと」
東京-名古屋間の2027年開業が難しくなっているリニア新幹線。静岡県へのメリットを示した国の調査結果は、事態の打開につながるのでしょうか。
(スタジオ解説)
あらためて、20日、国交省が発表した調査結果について整理します。現在、県内には新幹線が停車する駅が6つあり、それぞれ、一日に停車する本数は、静岡駅でおおむね53本、浜松駅で49本などとなっています。
リニア新幹線が東京-大阪間の全線で開業した場合、国交省は、これまで東海道新幹線を利用していた人が3割ほど減少する可能性があると試算しました。そこで、ダイヤの余力をいかし、県内の駅に停車する回数が1.5倍に増加した場合、利便性が向上すると発表しました。
具体的に見てみますと、一日に停車する本数は静岡駅が27本増えて80本、浜松駅で25本増え74本、三島66本、熱海60本などとなっています。昼の時間帯は、大体1時間に3本、赤字のひかりは1時間に1本です。これが、1.5倍、一日80本となると、昼の時間帯は1時間に5本、つまり、20分に1本が12分に1本となり、在来線との乗り換えもスムーズになり、時間短縮が期待できるということです。さらに、国交省では「1.5倍」に増えることで、こうした効果が期待できると示しています。
県外からの観光客などが今より年間67万人増え、県内での新幹線利用者は71万人増えると見込んでいます。これによる経済効果は、2037年からの10年間で1679億円と見込み、雇用面でもいい影響があると示しています。
一方で、東京‐名古屋間での開業の場合は、県内の駅の停車回数は1.1倍~1.2倍となるなどと発表されましたが、細かい数字は示されませんでした。また、県が構想を掲げる「静岡空港新駅」については一切触れられていません。今回、国交省が調査結果を発表しましたが、そもそもダイヤを決めるのは、JR東海であり、示された「1.5倍」というのもあくまで仮定の数字で、本当に実現可能なのか不透明です。
Daiichi-TVの取材に対し、JR東海は「当社としても、リニア新幹線のメリットを静岡県の皆さまに実感していただくことが大切だと考えており、今回の調査結果を参考にしながら、将来に向けて、ご利用になるお客様に便利なダイヤを検討していきます」とコメントしています。
また、川勝知事の反応も入ってきました。
「県内の東海道新幹線各駅の停車本数が増加する方向性を、国として示していただいたことを歓迎する。ただし、具体的な停車本数については示されていない」とコメントし、国には引き続き、JR東海を指導するよう求めています。
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