【静岡県知事選】15年にわたった“川勝県政”が残した課題について考える
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年5月17日 17時36分
知事選を前に静岡県の課題をお伝えするシリーズ。今回は、15年にわたった川勝県政が残した課題について考えます。
知事選に立候補しているのは、届出順にいずれも新人で、
諸派の横山正文候補56歳。
共産党の森大介候補55歳。
無所属で立憲民主党と国民民主党が推薦する鈴木康友候補66歳。
無所属で自民党が推薦する大村慎一候補60歳。
無所属の村上猛候補73歳。
無所属の浜中都己候補62歳
の6人です。
いまから15年前、学者から政治の世界に進んだ川勝前知事。就任後は、開港間もない静岡空港の利用促進策などに奔走しました。また、新東名高速道路の1年前倒しでの開通を実現に導いたほか、富士山振興では、2月23日を「富士山の日」と制定するなど機運を高め、世界文化遺産の登録に繋げました。
(川勝前知事)
「ちょっと興奮したというかうれしかった。これ自然に作ったものなので、それが文化だと認められたということ」
続く2期目は、圧倒的な支持を受けて就任した川勝前知事。2015年には、韮山反射炉が世界文化遺産に登録され、県内に2つ目の世界遺産が誕生しました。
一方、3期目から浮上したのがリニア問題です。
(川勝前知事)
「いざ悪影響が出たらどうするか。きちっと協定で文書化して、誰にもわかるようにしてからでないと工事はできない」
リニア新幹線の工事による「大井川の水問題」について厳しい姿勢を示し、静岡工区での工事を認めてこなかった川勝前知事。県とJR東海では、これまで、多くの議論が交わされてきましたが、意見は平行線をたどり、対立が続きました。その結果、JR東海は2024年3月、静岡工区の見通しが立たないことから、品川・名古屋間の2027年開業を「断念する」と正式に表明しました。
リニア問題以外にも、型破りな言動で国や企業と相対する一方で数々の分断やあつれきを招いた川勝前知事。最後は、職業差別とも受け取れる発言により、あっけなく終止符が打たれ、多くの課題を残したまま、15年の県政に幕を閉じました。
これまでの川勝県政について県民は…
(有権者)
「35人学級や高校生までの医療費無料を国より先にやっていた」「問題があったらそれを解決するまできちんとやる点では、国に対応できる数少ない知事だった」
(有権者)
「(静岡)市長と仲が悪かった」「もう少しうまく会話ができたのではないか」
新たな知事に求められているのが混乱する県政の建て直しです。
元県職員で地方行政に詳しい静岡産業大学の小泉祐一郎教授は、川勝県政の残された課題として指摘するのが、「都市開発の遅れと若者の人口流出」です。
(静岡産業大学 小泉 祐一郎 教授)
「県が何か施設を作るのであれば、周辺と一体になるので、周辺を市はどうするのか、また民間の企業にも出店なり、もしくは共同で合築したりして、民間の活力も入れて、商業的な面やアミューズメントだとか観光だとかっていうところにも広げてくなど、そういう発想は弱かったと思う」
静岡県の人口は川勝知事が就任した2009年は約379万人でしたが、現在では約353万人まで減少。静岡県から出ていく「転出者」が県内に入ってくる転入者を上回る「転出超過」は15年間で計7万8000人で、人口流出は止まる気配がありません。この問題ついて小泉教授は、市町や民間企業と一体化した街づくりが行われてこなかったため、若者が魅力を感じるような都市の発展ができなかったと説明しています。
(静岡産業大学 小泉 祐一郎 教授)
「知事の思いだけで進んでしまうところがあったので、そこは課題だったと思う」
続いて、指摘したのが、国とのパイプが弱体化してしまったことについてです。川勝前知事は、地方創生を目指し「ポスト東京時代」という言葉を掲げていて、県独自の政策に力を入れてすぎていたと小泉教授は指摘します。また、県によりますと、川勝前知事が就任した2009年には、国からの派遣職員が12人いましたが、いまでは4人まで減少し、国との関係性が薄れているのがわかります。
(静岡産業大学 小泉 祐一郎 教授)
「連携が弱いと、県の予算だけでなくて国の予算も活用して、もう少し事業を拡大できたりするようなところが、 県だけの予算となると規模的に弱くなってしまう」「国のやってること、 それと連携するのではなくて、むしろ静岡県独自に東京を介さないで全国や世界と繋がってやっていく意識が非常に強かったため、そこに非常に力が入り、国の政策、全国的に進めようっていう政策とは連携が弱くなった」
史上最多の6人が立候補する県知事選挙。残された課題をどうのようにして解決していくのでしょうか。
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