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【全文】袴田巌さんの姉・ひで子さん 最後の意見陳述(再審公判が結審)

Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年5月22日 19時38分

きょうの法廷

 58年前、静岡県旧清水市で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審公判が22日 静岡地方裁判所で開かれた。再審は結審し、判決が9月26日に言い渡される予定。また22日の公判では、長年の拘禁生活による心神喪失の状態のため裁判所が出廷を免除した袴田巌さんに代わり、姉・ひで子さんが出廷し、袴田さんが逮捕直後から家族に送っていた無実を訴える手紙を読み上げ無実を主張した。

【袴田ひで子さんの最終意見陳述の全文】

 ひとたび狙われて、投獄されれば、肉体深く食い込む虐待、あの虚偽、虚構の覆われた部屋、あの果てしなく、底知れぬ眩暈、最早正義はない、立ち上がって、眩暈む、火花、壁に飛び散る赤い血、昔の悲鳴のように、びくりとし、立ち上がっても、投獄されれば、最早帰れない、最早正義はない。十三夜のお月さんが、南東に昇った 7 時の獄である。

 息子よ、お前はまだ小さい、分かってくれるか、チヤンの気持ちを、勿論分かりはしないだろう、分からないと知りつつ声の限りに叫びたい衝動に駆られて成らない、そして、胸いっぱいになった、真の怒りをぶちまけたい。チャンが悪い警察官に狙われて逮捕された、昭和 41 年 8 月 18 日その時刻は、夜明けであった。お前は、お婆さんに見守られて眠っていたはずだ。

 今朝方、母さんの夢を見ました。元気でした、夢のように元気でおられたら嬉しいですが、お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね。

 弟・巖の手紙です。そして、47年 7 か月、投獄されて居りました。獄中にいる時は、辛いとか哀しいとか一切口にしませんでした。釈放されて、10年経ちますが、いまだ拘禁症の後遺症と言いますか、妄想の世界に居り、特に男性への警戒心が強く、男性の訪問には動揺します。玄関の鍵、小窓の鍵など知らないうちに掛けてあります。就寝時には電気をつけたままでないと寝られません。釈放後、多少は回復していると思いますが、心は癒えておりません。私も一時期、夜も眠れなかった時がありました。夜中に目が覚めて巌の事ばかり考えて眠れないので、翌日の、仕事に差支えがあるために、お酒を飲むようになり、アルコール依存症のようになりました、今はと言うより、随分前に回復しております。今日の最終意見陳述の機会をお与えくださいまして、ありがとうございます。長き裁判で裁判長様はじめ皆様には大変お世話になりました。

 58年闘って参りました。私も91才でございます、巖は88才でございます。余命幾ばくもない人生かと思いますが、弟巖を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます。

                            袴田ひで子

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