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標高1200m 日本一高い蒸留所 南アルプスの大自然が育んだウイスキー(静岡市)

Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年5月30日 18時12分

Daiichi-TV(静岡第一テレビ)

ウイスキー人気が高まる中、県内にも個性的な蒸留所が増えてきています。そんな中、南アルプスの自然を利用してのウイスキーづくりが進められています。日本一高い場所、大自然に囲まれた蒸留所を訪ねてきました。

5月26日静岡市の中心街で県内産のクラフトビールやウイスキーが一挙に楽しめるイベントが開かれました。8回目となる今年は41のブースが出展。2日間でおよそ5千人が訪れました。

そこにコアなウイスキー愛好家が集まるブースが・・・・

(来場者コメント)

Q「どちらから?」

A「東京から、このためだけに、これだけのために来ました。中々飲めないから」

(来場者コメント)

「これがどう熟成していくか、楽しみに追っかけています」

「とにかくおいしいすっきりとしていておいしい」

提供されていたのは、ニューボーンと呼ばれる熟成から3年未満の若いウイスキー。静岡市の北部、井川で造られています。

標高3千メートルを超える山々が連なる南アルプス。

ウイスキーの蒸留所は畑薙湖の北、許可がないと一般車両が入れない道を通って行きます。

静岡市の中心部から、車を走らせること4時間。「井川蒸溜所」です。

標高1200メートル、ウイスキーの蒸留所としては日本一高い場所にあります。

2020年11月に開業。

積雪のある冬を除いた4月から12月の間、稼働し、年間7万リットルの生産能力があります。

でも、なぜ、アクセスが悪く、自然環境も厳しい山の奥に蒸留所をつくったのでしょうか?

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「対岸に木賊(とくさ)という場所がある、そこからかなり質のいい水が昔からこんこんと湧き出していて、水がやはり一番大事で木賊の湧水を使おうと思ったらここしか平な所がない」

さらに、雨量が多く、年間を通して湿度が高く、気温が低いというこの山の気候条件がウイスキーの熟成に向いていること。また、周辺に樽の原料となるミズナラの木が豊富にあることがこの場所に蒸留所を作った理由だと言います。

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「水もいいし、熟成環境もいいし、熟成させるための樽も作れるし、三拍子揃っています」

この「井川蒸溜所」を造ったのは特種東海製紙のグループ会社「十山」。

およそ130年前、創業者が、林業、製紙業を営むため取得した南アルプスの広大な森林を有効活用するため、試行錯誤の結果、ウイスキー事業にたどり着きました。

所長の瀬戸さんもここに来る前は製紙工場で働いていました。

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「僕がやっていたのは化学分析の紙屋さんのバージョン、異物が出た時にこれがどこから入ったのかなど、ある程度化学について物を調べることができる、あと酒が好きだよねっていうのが合わさって・・・」

現在、蒸留所には所長を含め、5人のスタッフがいます。皆ウイスキーづくりの経験はありませんでした。

(熟成担当 石原紀一さんコメント)

「やり方も何も分からない中で始めたので苦労しました」

スタッフは南アルプス登山の玄関口にある「椹島ロッヂ」に寝泊まりしながら、蒸留所に通っています。

生活は不便なことも多いようですが、仕事にはやりがいを感じています。

(熟成担当 石原紀一さんコメント)

「こういう環境で仕事をしているので、時間がだいぶゆっくり進んでいるような感じで僕らの仕事も熟成も時間を待つゆったりとした生活が送れるのがいいところ」

(室伏大司 副所長コメント)

「ここの自然環境がいいので季節ごとの風景だったりとか昆虫が好きなので、そういったものを見ながら仕事がきるのが魅力的」

現在、貯蔵庫には、所狭しと樽が積み上げられ、熟成が進められています。最初の樽詰めから4年が経つこの秋、初めてのウイスキーが出荷されます。

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「ちょっと苦味が強い樽甘味が強い樽、フルーティな香りがする樽それぞれ樽によって個性がありますから樽を選んでブレンドしていく作業を今後していって、リリースになります」

井川蒸溜所では、熟成から3年未満の若いウイスキー「ニューボーン」をこれまでに5種類、リリースしています。

静岡市内のバーではそのニューボーンを味わうことができます。

(徳増キャスター)

「華やかな香りがします」

これは熟成から20か月のニューボーン。

(徳増キャスター)

「若いって感じがしますね。」

バー・ル・ルフュージュ バーテンダー 田井中 正剛さんコメント

「高いアルコール度数で蒸留をして樽に詰めて、そのままのアルコール度数でボトリングしているんですね、ですからアルコール度数も60度ぐらいあるんです」

(徳増キャスター)

「本当にちょっとしか飲めてないんですけど、口の中にふわ~って広がって。豊かに広がりますね。おいしい。」

続いて先月出たニューボーン。シェリー樽で熟成されています。

(徳増キャスター)

「なんかとっても、口の中で少しまったりとして、落ち着いた感じもしますね。レーズンのような香りがしてフルーティーな味わいです。」

バー・ル・ルフュージュ バーテンダー 田井中 正剛さんコメント

「ウイスキーって造られる環境で味が変わったりする、元々の原材料は数種類、シンプルなお酒なんですが、作り手が樽を変えたり、蒸留の仕方を工夫したりとか、そういう所で個性を出す、そこがまた面白いところ」

バーテンダーの田井中さんもこの秋に出る井川蒸溜所、初めてのウイスキーに期待を寄せています。

(バー・ル・ルフュージュ バーテンダー 田井中 正剛さんコメント)

「地元のお酒である親近感と誰も行ったことのないような本当に秘境で造られているそのスケールの大きさ、日本の数多い蒸留所の中でも他にないと思う、その背景も踏まえながらたくさんの方々に召し上がっていただけたらいいなと思います」

南アルプスの自然が育むシングルモルトのウイスキー。どんな味になるのでしょうか・・・

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「うちが目指しているのは、クリーンで華やかで雑味がなくって甘くってというようなウイスキーを目指しています」

ユネスコエコパークに認定されて今年で10年、南アルプスの自然を体感するきっかけになってほしいと話します。そして将来的には南アルプスの山小屋などでウイスキーを提供したいと夢を語りました。

(井川蒸溜所 瀬戸泰栄所長コメント)

「せっかく山へ来たなら釣った魚をつまみにちびりちびりとやるのが楽しいんじゃないでしょうか」

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