【袴田さん再審】判決を目前に…弟を支え無実訴え続けた姉・ひで子さんが語った“58年の闘い”とは(静岡)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年9月25日 17時26分
袴田巌さんの再審=やり直しの裁判は、26日、判決が言い渡されます。拘禁症状が残る弟を支え無実を訴え続けてきたのが、姉のひで子さんでした。姉と弟、58年の闘いとは?
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん・91歳)
「もう58年闘っていますからね。ごくごく平常心でございます」「裁判だからどうとかこうとか思ったってしょうがないでしょ。もう答えが出ているでしょうからね。だから待っているだけ」
25日、報道各社の取材に応じ“判決前の心境”を語った袴田巌さんの姉・ひで子さん。
死刑とされた袴田さんが釈放されてから10年。ひで子さんは、長い拘禁生活で精神をむしばまれ意思疎通が難しい弟を、そばで支えています。
袴田さんの日課は支援者とのドライブ。
(支援者)
「巌さん、きょうはどちらに行きますか?」
(袴田 巌さん)
「きょうは“新丸子”」
「新丸子」は、袴田さんがプロボクサーだった頃、所属していたジムがあった神奈川県内の住所です。この日は、子どもの頃によく遊んだという浜名湖へ。最近は“事件前の記憶”を口にすることもあるといいます。そんな弟の様子について、ひで子さんは…。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「10年たって少し明るくなって、言葉も出るようになって」「ネコにエサをやってくれとかそういうことを言うようになって」「やっぱり妄想の世界にいることが多い。だから後遺症というのは恐ろしいものだと思っている」*
2人の闘いが始まったのは58年前。旧清水市で、みそ会社の専務一家4人が殺害された事件で、住み込み従業員の袴田さんが逮捕されました。当時30歳でした。
(警察の取り調べの録音)
(袴田 巌さん)
「あんた方、自信をもって言っているけど、他に犯人が挙がったらどうする」
(取調官)
「ないよ、挙がりっこない」
(袴田 巌さん)
「いや必ず挙がる」
しかし、長時間にわたる取り調べで自白。裁判では一転して無実を主張しましたが、1980年、最高裁で死刑が確定しました。ひで子さんのもとには、獄中から無実を訴え続ける悲痛な叫びが残されていました。
(袴田 巌さん)
『神様僕は犯人ではありません』
弟の無実を信じて、「死刑囚の姉」というレッテルを張られながらの長い闘いが始まりました。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「最初の10年は、家族全体で署名運動から何からやっていた。その10年間が本当につらくてね。母親は68歳で亡くなった。母親はどんな辛い思いをして死んでいったか。これは私がやるしかないと思って始めた」
声をあげ続け、理解してくれる支援者も少しずつ増えていきましたが、再審開始への扉は重く開きませんでした。
(テレビのニュース)
「2人の死刑が執行されました」
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「2人処刑されたの。東京拘置所というとどきっとする」
欠かさなかったのが、月に1度の東京拘置所での弟との面会です。しかし、袴田さんは、長い拘禁生活で精神をむしばまれ、面会を拒むようになりました。それでも通い続けたひで子さん。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「家族はお前を見捨てないよとメッセージを送るため。そのために毎月、面会できないで、行ったってしょうがないという人もいたが、それは他人様でね」
事態が動いたのは、2014年、静岡地裁が再審開始を認め、袴田さんは48年ぶりに釈放されました。
(袴田 巌さん)
「国会に世界を呼んで死刑廃止を決定した。私が決定して」
このとき、袴田さんには妄想的な言動が見られるようになっていました。その後、再審開始決定の取り消しや差し戻しが繰り返され、東京高裁が再審開始を決めたときには9年の月日がたっていました。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「完全に今度無罪、完全に勝った、良かったね、あんた。あんたの言う通りになった、もう安心だよ」
再審公判では、精神状態を理由に免除された袴田さんに代わり出廷したひで子さん。最後の意見陳述では、弟が逮捕された直後に母親へ送った手紙を読み上げ無実を訴えました。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
『58年闘って参りました。私も91才でございます、巖は88才でございます』『余命幾ばくもない人生かと思いますが、弟の巖を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます』
望むのは無罪判決のみ。25日、半世紀以上支えてきた弟への思いを問われ、ひで子さんはこう訴えました。
(袴田 巌さんの姉 ひで子さん)
「死刑囚じゃなくなるということが一番大きい。今でもね、死刑囚でも街中歩いていますが、それでも死刑囚なんですよ。だけど死刑囚でなくなって街中を歩くのはまた違うと思う」「巌は、あの年で足も弱っているからね。静かに暮らしてくれればいいと思っている。でもね、長生きさせたい」「10年で48年のもとはとれんよ。だからせめて、もう10年ぐらいは生きてもらいたいと思っている」
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