【解説・袴田さん再審無罪】最大争点「5点の衣類」巡る裁判所の判断は?若狭弁護士が詳しく(静岡)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年9月26日 19時19分
(スタジオ解説)
(澤井 志帆 キャスター)
再審公判での、最大の争点は検察側が袴田さんが犯行時に着ていたものだと主張する「5点の衣類」の”血痕の色”です。「5点の衣類」は事件から1年2か月後にみそタンクから発見され、血痕の赤みが残った状態でした。
15回にわたる再審公判でも、双方、法医学者が証言を行うなど、争ってきました。最終的に2024年5月、検察側は、「5点の衣類」が1年以上みそに浸かっていても赤みが残る可能性はあると主張、罪責は誠に重大だとして袴田さんに死刑を求刑しました。一方、弁護側は「5点の衣類」は、犯行着衣ではなく、袴田さんのものでもない。袴田さんを犯人にするため、捜査機関が「ねつ造」したもので、袴田さんは無罪であると主張していました。
そして、26日、静岡地裁が下した判決は「無罪」です。判決の理由として袴田さんを犯人だとする証拠に「3つのねつ造」があったと述べています。
一つ目は検察の取り調べ調書です。自白は肉体的、精神的な苦痛を与えた取り調べによるものだとしました。
そして、5点の衣類については、タンクに1年以上みそ漬けにされた場合には、赤みが残るとは認められず、発見直前に、捜査機関がタンクに入れたと認定しました。
さらに、袴田さんの実家で発見されたズボンの共布についても、捜査機関にねつ造されたものであり、いずれもこの事件の証拠とすることはできず、袴田さんは犯人であるとは認められないと判断理由を示しました。
(津川 祥吾 アンカー)
「無罪判決ですけれども、これは裁判んのやり直しが決まった段階で、ある程度予想された範囲かと思うのですが、この理由、表現の仕方かもしれませんが、「被告人袴田さんが本件犯行の犯人とは認められないと判断した」この判決を聞いて若狭さんはどのように思いますか。
(コメンテーター 若狭 勝 弁護士 元東京地検特捜部 副部長)
「判決文の詳細をみてみないとなんともえないのですが、『犯人であるとは認められない』という表現が、必ずしも、いわゆる「真っ白無罪」というものを意味するものではないと。というのは実務的には我々はそう考えるのですけれど、むしろ『犯人出ないと認められる』とか、判決文でそこまで積極的に認定するのであるとすれば、これは全くの無実だという判決になるのですが、『犯人でないと認められる』というところまでではなく、表現が『犯人であるとは認められない』というふうになっていること自体は、裁判所の判決のスタンスとして、無実というところまで積極的に認定していない可能性もあるのかなと。ただ、判決文をよくみてみないとわからないのですが、ただ、少なくとも弁護側にとってみると、画期的な判決だと思うんですね。自分たちの主張をすごく認めてもらっているし、裁判所も、きょう、冒頭の方で、「3つのねつ造」という表現をしているんですね。「3つのねつ造」というのを聞くとですね、これは完全に無実、「真っ白無罪」じゃないかなというふうに思えるような雰囲気だったのですけれど、先ほど言ったように、『犯人であるとは認められない』という表現からすると、必ずしも「真っ白無罪」、「えん罪」だというところまでスタンスとしてもっていない可能性もあるかなと感じました。
(津川 祥吾 アンカー)
「ねつ造」という言葉が非常にインパクトがあるので、最初の方で出てきたので、そこまで踏み込んだなと思ったのですが、この「ねつ造」の中にですね、自白調書、これが、そもそも調書が任意性を欠いて、証拠とすることができないから職権でこれを排除すると、これは非常によくあるパターンだと思うのですが、だからこれを「ねつ造」だと言うのはちょっと踏み込んだ表現だと思うのですが。
(コメンテーター 若狭 勝 弁護士 元東京地検特捜部 副部長)
おっしゃる通りで、今まで、いっぱい調書の任意性、証拠能力がないというところは指摘されるケースは多々あるのですけれども、それが「ねつ造」だというところまで結びつけるのというはかなり異例だと思うのです。少なくとも、今回、確定判決で、ずっと調べを、最高裁までいっているときには、これは「ねつ造」だというような認定が一切されていなかったのが、今回、初めて「ねつ造」だという言葉を調書に対して使ったということ。その意味においては「3つのねつ造」、ぽん、ぽん、ぽんと「ねつ造」「ねつ造」「ねつ造」ということでしたら、聞く私たちとしたら、それは裁判所は相当、無実そのものでしょう、えん罪でしょうと言わんとしているのかなと思っていたのですけれど…その辺がどうなのかは、もう少し聞いてみないとわからないし、最後の裁判所の謝罪、が何だったのかというところも結構ポイント、分析できるのではないかと思います。
(澤井 志帆 キャスター)
国井 恒志 裁判長は、裁判の最後に涙ぐみながら、「無罪判決だが検察は控訴できる、巌さんの自由の扉は開けた、しかし閉まる可能性がある。裁判所として時間がかかり申し訳ない。有罪か否かは裁判で決まる。真の自由を獲得するには時間がかかる。ひで子さんには心身ともに健やかに過ごしてほしい」と述べました。
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