【どうなる】新築移転工事巡り“入札不調”の新県立中央図書館…“難儀”の背景と今後の見通しは?(静岡)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年11月14日 17時7分
(勝俣 宜彦 記者)
「東静岡駅の目の前にある、現在は駐車場になっているこの土地に、新たな静岡県立中央図書館が移転する予定になっています」
JR東静岡駅前にある2万4000平方メートルの広大な県有地に、2028年に開館する予定の新県立中央図書館。県の基本設計では、建物は9階建てで、約200万冊が収蔵できる国内最大級の図書館で、交流の場として、1階にはカフェも併設される予定となっています。しかし、その計画に大きな動きが…。
(県教委 新図書館整備課 金嶋 克年 課長)
「建築工事の入札に関する第1報で公告をかけたが、1社からも手を挙げてもらえなかったので、『入札不調』という取り扱いとなった。札を入れてもらって金額が折り合わないとの想定はあるのかなと考えていたが、入札参加が1社もなかったのは少し残念で、要因や背景の分析が必要になってくると考えている」
県は10月、新図書館の建築工事に関する入札を公告していましたが、期限の12日までに入札した業者がなく、「入札不調」となったのです。その背景について、県は資材や人件費の高騰のほか、人手不足に原因があるのではないかとの見解を示しています。
(県教委 新図書館整備課 金嶋 克年 課長)
「34か月の工事想定の中で、やはり、人を集めるのが大変な工事になっているのは原因として考えられる。 工事業界の話で言うと、大阪万博などはじめ、多くの工事に多くの業者が手を取られている。あるいは、働き方改革という中で、工事に関する働く人の働き方も変わっている中で、人手が足りなくなっているところも大きい要因かなと考えている」
この結果を受けて、開業時期がさらに遅れる懸念が出てきました。
現在、静岡市駿河区谷田にある県立中央図書館。近くには県立美術館や、県立大学があります。1969年に開館し、多くの県民に親しまれてきましたが、開館から55年が経ち、施設の「老朽化」が問題になっています。地下にある書庫を案内してもらうと…。
(県立中央図書館 山内 小百合 副館長)
「この辺りが(ひび割れの)一番ひどい所になっています」「ひび割れが分かった後は、ひび割れの工事をしまして」「一時的というか、何年かはもつという形での補強をしています」
ひび割れが初めて見つかったのは2017年で、床が本の重みに耐えられなかったとみられています。図書館では、これ以上の悪化を防ぐため、閲覧できる本を減らすという苦渋の決断をしました。
(県立中央図書館 山内 小百合 副館長)
「この下の床のひび割れが発見されまして、床の耐荷重を減らすために、もともと20万冊あったものを10万冊に減らしたのですけども、この書庫の所に、すき間ができている状態になります」
老朽化の影響は、床のひび割れだけではなく、本の品質管理にも及んでいました。
(県立中央図書館 山内 小百合 副館長)
「建築から55年たっている空調設備が壊れているので、今は夏の間だけ送風をしています」
空調システムが正常に作動しないため、貴重な資料や本に、カビや変色のリスクがあるということです。
移転計画について図書館の利用者は…。
(利用者)
「利便性が良くなれば、その方がありがたい」
(利用者)
「蔵書の数と環境。静かに落ち着いて本を読むことができれば」
そもそも、新図書館は川勝前知事肝いりの「文化力の拠点」構想の一部として整備が検討されてきました。県は、図書館のほか、宿泊施設やオフィス機能などをもつ施設を検討してきましたが、整備費が最大で270億円に見込まれることから県議会が反発。その結果…。
(川勝 知事・当時)
「文化力の拠点として提示した結果論点が、ぼやけているということだったので、一旦、白紙に戻すのが正しいと思います」
その後は、図書館機能を中心とした計画に変更し、県は2023年、基本設計を公表。総事業費は192億円で、開館時期を2027年度後半としていましたが…。2024年9月、資材費や人件費の高騰などの影響により、総事業費が計画段階を100億円余り上回る298億円となり、開館時期が2028年夏ごろにずれ込むことを明らかにしていました。
入札した業者がなく“2028年開館”の雲行きが怪しくなった新県立中央図書館。開館がさらに遅れる可能性について県は…。
(県教委 新図書館整備課 金嶋 克年 課長)
「応札があって仮に落札したとしても、5億円以上の工事になると、議会の承認を得なければ契約を結べない条件があるので、議会にどのタイミングで議案を出して承認をしてもらえるか、日程をしっかり詰めた上で、今のスケジュールで行けるのか、遅れる可能性があるのかを見極めていきたいと考えている」
開業が遅れることで、総事業費がさらに増える可能性もあるといいますが、再度、入札に向けて準備を進めていくということです。また、県は、「入札不調」となった理由を詳しく調べるため、ゼネコン10社以上に不参加の理由についてヒアリングをしていく予定です。
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