浜名湖特産のカキ 処分が課題だった殻をビール造りに活用へ【静岡・浜名湖】
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年12月2日 17時42分
浜名湖で冬の味覚カキの水揚げが始まりました。地域の名産品ですが、課題となっているのが大量の“カキ殻”の処分です。
そのカキ殻を“あるもの”に有効利用する取り組みが始まっています。
浜名湖名産のカキ。プリプリで濃厚な味わいが特徴の冬の味覚です。
先週、私たちは浜松市の舞阪港から漁船で20分ほどのところにある浜名湖の養殖場へ。養殖用のいかだからカキを水揚げしていたのは養殖業者の八木田昇一さんです。
(八木田昇一さん)
「高ぶりますね。皆さんずっと待っていてくれたので、これから皆さんの期待に応えられるようなカキをご提供したい気持ちでいっぱいです」
明治時代から130年以上続く浜名湖のカキ養殖。淡水と海水が混ざり合い、にごっているように見えますが…これは栄養分となるプランクトンが豊富な証。そのため“ミネラル成分”が豊富なカキが育つといいます。
(八木田昇一さん)
「1つは味が濃いこと、2つ目は身が肉厚であること、3つ目は加熱しても縮みにくいという特徴があります」「浜名湖の環境、汽水湖だからこそ満たされるものだと思います」
水揚げされたカキは舞阪町にある八木田さんの加工場へ。
「むき子」と呼ばれる人たちが手際よくカキをむいていきますが…プリプリの身とともに大量に出るのが“カキ殻”です。
これが養殖業者の“悩みの種”となっています。
(八木田昇一さん)
「年間200トンぐらいのカキ殻が出ています」「カキの養殖をやり始めてからカキ殻の処理の仕方というのは模索しながらやってきたが」「毎年処理の不安を抱えながら、新たに模索しながらというところではあるので、安定的に処理ができるような仕組みができればいいなと思っています」
舞阪町にある8軒の養殖業者で年間200トンにもなるカキ殻。
八木田さんが見せてくれたのは…
(八木田昇一さん)
「こちらが去年、浜名湖舞阪産のカキ殻になります」
積み上げられていたのは昨シーズン出たカキ殻です。この日は、水揚げが始まる直前でカキ殻の処理はほぼ終わった状態でしたが…
水揚げシーズンが終わる毎年4月は、このように大量のカキ殻で埋め尽くされます。
カキ殻は廃棄物として扱われ、処分には費用がかかります。
そのため、舞阪町のカキ業者は8割を農業用の肥料に・・・残りの2割も水質浄化や海の中の漁礁などに再利用しています。
今のところ、全てのカキ殻を何とか再利用できていますが、新たな利用方法を模索していた八木田さんに“あるもの”に活用する話が入ってきました。
(八木田昇一さん)
「“ビール”の醸造工程の中で使えないかと打診をうけて」「“成分”を有効活用してくださったことに関してはとても画期的なアイデアだと感じています」
“カキ殻の成分”を生かしたビールとは一体どのようなものなのでしょうか。
“カキ殻ビール”の製造を始めたのは浜松市の中心街にあるこちらのバー。店の奥にある醸造所を見せてもらうと…
(千葉恭広さん)
「こちらにカキ殻でつくったビールが入っています」
細かく砕いたカキ殻から煮だした抽出液を発酵させてつくったビールにはカルシウムやマグネシウム、カリウムなどの“ミネラル成分”が通常のビールの5倍から10倍多く含まれているといいます。
(千葉恭広さん)
「ビールづくりのほぼスタート時に麦芽などをお湯と一緒に煮込むわけですが、そのタイミングで煮込むことによってカキ殻の成分をかなりの量抽出することができて」「風味を豊かにする効果が表れるという感じです」
こちらがカキ殻を使った新しいクラフトビール「ミネラルブリュー」
地元のデザイナーが描いたラベルには浜松のシンボル・アクトタワーに弁天島の赤鳥居、そしてカキのイラストも。
ビールに使われるカキ殻はビン1本あたり、およそ10グラム…カキ殻の成分を抽出しているだけなのでカキ特有の生臭さはありません。
現在は品切れとなっていますが今月10日ごろには新たに出荷する予定で浜松市内の飲食店などで販売されるということです。
浜松の魅力が詰まった“カキ殻ビール”そのお味は?
(西尾拓哉記者)
「非常にさっぱりとした味わいで、フルーティーです。ビールが苦手な方や初心者の方でも飲みやすい味わいとなっています」
“カキ殻ビール”はこの秋、浜松市で開かれたイベントでお披露目されました。
「乾杯!」「カキ~!」*****
ビールの開発を企画した町おこしなどを手掛ける一般社団法人「ファンバンク」が開催。運動で失った“ミネラル”を補えるとしてランニングを楽しんだ人たちがビールを味わいました。
(参加者)
「すごい飲みやすい」「軽いけれどちゃんと味が、カキの味や臭みは全然ない」
(参加者)
「地ビールはクセがあるイメージがありますけれどクセがない」「お店で売っているクラフトビールよりは飲みやすいです」
舞阪町で100年以上続く養殖業者の5代目である八木田さん。長年、課題となってきた浜名湖のカキ殻の問題を多くの人に知ってもらうきっかけになればと期待しています。
(八木田昇一さん)
「浜名湖舞阪産のカキ殻を使った商品という活用の仕方になっていけば、カキ自体の価値も上がると思いますし」「今後、幅広いところでカキ殻の有効活用を取り組んでいきたいと思います」
浜名湖の名産品カキが抱える課題解消のために始まった新たなプロジェクト。環境に優しいカキ殻の有効活用が広がることで地域の活性化につながることも期待されます。
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