【検証】グランドオープンから2周年…「静岡市歴史博物館」その現状と課題は?
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2025年1月15日 17時18分
2周年を迎えた「静岡市歴史博物館」。建設時は多額の事業費を巡り批判などもありましたが、入館者数が目標に届かないなど課題も出ています。博物館の今と課題を取材しました。
1月13日、グランドオープンから2周年を迎えた「静岡市歴史博物館」。13日は、2周年を記念して観覧料が無料となったほか児童合唱団によるミニコンサートが開かれるなどにぎわいをみせました。
約30年にわたる構想の末、駿府城公園や県庁のすぐ隣の静岡市有地に建てられたこの博物館。建設前には紆余曲折がありました。
建設が具体化していた2015年ごろ、この計画に苦言を呈したのは、この人…
(川勝 前知事)
(2015年当時)
「箱モノは大変お金がかかるし、一度作ったら取り返しがつかな い。よほど注意しないといけない」
(2016年当時)
「ただのハコモノを作るならムダ 使いだとはっきり思います」
川勝前知事が巨額の事業費がかかることを理由に計画を批判。これに対して当時の静岡市長だった田辺前市長は…。
(田 辺前市長)
(2015年当時)
「歴史と文化の街を目指すという中で、整備を加速させていこうと」
「歴史文化の街の拠点となる施設」と、”博物館の意義”を示し、市長市長肝いり事業として建設費など約62億円を投じ2023年1月にグランドオープンしました。初年度は、当時放送していた「大河ドラマ」の波及効果などを見込み、目標入館者数を50万人に設定しましたが…。入館者数は目標を大きく下回る約28万4000人。この結果に 2025年1月、難波市長は「当初の目標に課題があった」と話しました。
(難波市長)
「過大な設定をして続けていくのは適正ではないと思いますので、適切な入館目標を決めて、どういう展示をしていくのか。地に足をついた運営をしていく必要がある」
2024年度の入館者目標は18万7000人に下方修正。2024年12月末までの来場者数は、約14万5000人となっています。入館者数で苦戦する「静岡市歴史博物館」ですが、そもそも、どういった施設なのか。学芸員に案内してもらいました。
(学芸員 増田 亜矢乃さん)
「江戸時代の中ごろから後期にかけての駿府城内を描いている絵図になります」
館内には静岡市の歴史を知ることが出来るおよそ130点の資料展示のほか「戦国時代末期の道と石垣」の遺構など一つ一つに分かりやすい解説がついています。
(学芸員 増田 亜矢乃さん)
「二の丸の中を見ると石垣がたくさん描き込まれていて、駿府城というと家康が隠居の時代を過ごしたと言われていますが、実は、こういうふうに防衛設備も万全になっている。そんな駿府城の姿が見ていただける」
しかし、市が約4700万円の製作費をかけた徳川家康の2点の甲冑など展示物の約4割がレプリカ。そこでオープン2周年の目玉として市が、都内の刀剣商から1800万円かけて購入したのが「徳川家康の刀剣」です。
徳川将軍家お抱えの刀工、初代・越前康継が駿河で打ったと推測され、家康の死後は、子どもたちに分け与えた遺品、「駿府御分物」として、紀州徳川家当主となった家康の十男・頼宣が所持したということです。また、展示だけでなく、貴重な資料を未来に引き継ぐため保管や収集、調査「学校への学習支援」も行っています。
(学芸員 増田 亜矢乃さん)
「静岡市の歴史を語る大事な資料を集めて、100年後、150年後の未来の人に伝えるために、大切に保管していく役割を持っています」
では、この博物館の魅力について入館者はどう感じたのか?「観覧料600円」で、展示に「満足」か、それとも「物足りない」か聞いてみました。
(来館者)
「静岡にいても知らないことがあったり、今、住んでいる場所が昔はこんなだったとか」「(滞在時間は)2時間以上、2時間半近く」
(来館者)
「意外と思ったより広くて展示があったので、勉強することがいっぱいありました」
来場者40人にアンケートした結果、37人が「満足」という結果に。
満足と答えた人の中には、「思っていたよりも展示が充実していた」「自分が住む地域のことを深く知れた」などの意見が。一方、物足りなかったという人の中には「レプリカが多かった」「徳川家康関連以外の展示が少ない」などの意見が聞かれました。
続いて、多額の税金が投入されてつくられた博物館に対して、市民はどのような印象を持っているのか聞いてみました。
(20代男性)
「行ったことないです」「中に何があるか全然知らない」
(70代女性)
「(博物館があることを)知りませんでした」「見学者が少ないならもったいないような」「みんな知らないのでわかるように広報した方がいいと思う」
(50代男性)
「2回ぐらい行ってる」「もっと展示物があった方が関心を寄せられたり、より楽しめるというのはありますね」
入館者の満足度は高かった一方で、市民からは「博物館があることを知らなかった」という声も聞かれ、市の”PR不足”が課題ともいえそうです。
さらに、気になるのが博物館の維持費。市によると企画展の事業費や人件費、修繕費など合わせて年間約3億3000万円かかっています。それに対して、入場料金など2023年度の収入は約4400万円。年間維持費から収入を引くと、2023年度は3億円弱の赤字ということになりますが、市としては想定通りの運営状況なのでしょうか?市の担当課は、「前提として行政の博物館は教育普及施設であり、黒字経営は現実的ではない」としたうえで、2023年度の収入については、「4000万円ほど想定を下回った」と回答しました。
(静岡市歴史文化課 前島 将人 係長)
「(博物館は)教育普及施設という位置づけになっているので」「元々観覧料や施設の使用料で運営費が賄えるというものではないというのが大前提になっている」「実際ですね、もう少し30万人強ぐらいは、できればいきたかったというのが事実」「より多くの方に来館いただきたいというのは変わらないので、展示や運営の見直しというのは随時行っている」
「徳川家康の刀剣」の購入やさまざまな企画展示など集客力向上に努めるなか、難波市長に今後の運営ビジョンについて聞いてみると…。
(難波市長)
「このところ展示や企画展を見ていると、入場者が増えているんじゃないかと思う。私自身も行ってみて、最初のころはあまり面白くなかったが、最近、行ってみると非常に面白くなってきている」「勉強というよりも楽しみながら学ぶのが一番なので、そういう展示になればいいかなと思っています」
”歴史文化の街の拠点施設”として、前静岡市長が肝いりで建設した「静岡市歴史博物館」。今後、静岡市にどういった価値をもたらすのでしょうか。
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