下田市で出産できなくなる 病院がお産をやめてしまう背景は 伊豆南部で出産できる病院はゼロに
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2025年1月20日 17時30分
下田市の産婦人科が1月いっぱいで、「お産」の対応を終了します。伊豆南部で唯一、出産できることができる医療機関でした。産婦人科とそこに通う妊婦たちを取材しました。
下田市にある産婦人科、臼井医院。開院したのは、最初の東京オリンピックが開催された1964年です。
(先生の赤ちゃんの診察)
「体重も良く増えているようです」「冬場の時季は結構肌が荒れやすいが、きれい」
(先生の妊婦の診察)
医師「おなかの張りとかはどうですか?」
妊婦「おなかの張りより腰が痛くなってきて」
医師「夜、眠れますか?」
妊婦「眠れてます」
父親から病院を受け継いだ2代目の臼井文男院長…。これまでこの病院で多くの赤ちゃんを取り上げてきました。しかし、1月の分娩の予約を最後に、“受け入れを終了する”と決断したのです。
(臼井文男院長)
「時代の流れで少子化というのがあって,当然産婦人科としてお産が減れば病院の経営にも関わってくることなので,収支が合わなくなってくる」「(赤字が)多かったときは一昨年くらいかな,2000万円 くらい赤字になった」
日本全体の問題でもある“少子高齢化”。臼井医院での分娩の件数も,およそ20年前は347件でしたが,10年前は167件、おととしは88件まで減少しました。
また、産婦人科を経営するには特殊な医療機器も必要で、設備の更新にも“多額のコスト”がかかるといいます。
(助産師 高木里枝さん)
「これが陣痛と赤ちゃんの心拍数を確認する『胎児心拍モニター』」「これ一つで100万単位だそうです.医療機器は全て高いので,エコーもいいやつだと何千万になる.どこの病院でもそうだと思うが,そう簡単にはどんどん新しい物 を入れられる状況ではない.今,物価も上がり機材も高い」
およそ20人いるスタッフの人件費も支払わなければなりません。さらに…
(看護師)
「きょうは午後3時半からあした の朝9時までの予定です。」「前は結構いたときは入院してい る赤ちゃんを見ながら電話対応 なので夜勤は一人なので」
産婦人科は24時間体制…臼井院長は「夜勤にも対応できるスタッフの求人をかけても中々集まらない」と話し、“医療従事者が不足”していることも、今回、決断に至った理由の一つだといいます。
臼井医院は、2月以降も予防接種など検診は続けるということですが、地元の下田市で赤ちゃんを産める産婦人科がなくなってしまうことについて母親たちは…。
(妊婦たち)
「若い世代の人が下田に住まなく なってしまうという、人口が減っちゃう増えることがなくな るという不安があります」
「二人目を考えているので、ここで当然のように産む予定というか産みたかった」:「順天堂(伊豆の国市)とかが近いけどそこまで行くとなると大変」
「ここで産めるのか伊東の方まで 行かなくてはいけないのか、ぎりぎりここで産めるとなって、やった!めっちゃ親孝行って思った。
今後、1月中に出産予定の4人は臼井医院で出産することになりますが、中には、別の産婦人科で出産することになった人も…。
下田市に住む笹本真琴さん、お腹には2人目の赤ちゃんがいます。予定日は2月で、伊東市の産婦人科で出産することになりましたが、車で1時間ほどかかるといいます。
(笹本真琴さん)
「旦那も仕事をしているので検診は自分で車で行きます。2人目でお産も早い可能性もあるので、前もって宿泊することもあると思います。下田に産める所を作ってほしいのが本音です」
医療不足が大きな課題となっている県東部。これは産婦人科がある医療機関の数を表したもの。全てが分娩に対応しているわけではなく、対応していない地域を囲うとこうなります。そして、臼井医院も分娩が終了すると「賀茂地域」で出産できる産婦人科が無くなり、遠くの市町で出産しなければならないのです。
こうした状況に下田市も“応急措置”をとっています。下田市に住民票がある妊婦を対象に、出産に伴う宿泊費、最大2週間分の補助。分娩の際はタクシー代を、検診の際も交通費やガソリン代を補助することを決めました。
(下田市 市民保健課 吉田康敏 課長)
「お金の部分ではある程度やると決めたが、距離と時間を縮めるこ とについての取り組みがどこまでできるか今模索している」
長い間、出産に対応してきた臼井医院。院長は、分娩の受け入れが終えることで不安もあるといいます。
(臼井文男院長)
「お産やめちゃったら、病院は維持できるのかな、という間の中 でこの数年間考えていた。」「それに付随した収益も無くなるので、外来診療だけで病院としてやっていけるかという不安はちょっとある」
下田市に限らず分娩に対応する医療機関が少なくなっていく懸念がある今、子どもを生みたいと考えている人たちのためにも対策が急がれています。
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