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“健幸”になるためにはどうすればいいの?

政治山 / 2017年11月21日 11時50分

 本連載では、PB地方創生幸福度調査検討委員会(事務局 パイプドビッツ パイプド総研)による全国2万人の幸福度調査結果の紹介や、委員会の有識者との対談など、「地方創生」と「幸福度」の関係性を読み解いていきます。

 第4回は「健康・ヘルスケアと幸福度」をテーマに、健康状態と幸福度や健康と地域のまちづくりとの関係について、PB地方創生幸福度調査検討委員会の委員の米澤麻子氏(NTTデータ経営研究所)に同委員会の委員長である伊藤健二氏(政策創造塾塾長/明治学院大学学長特別補佐(戦略担当))がお話を伺いました。

健康だと幸せ? ~健康状態と幸福度~

【伊藤】 現在自治体では、住民が健やかで幸せに暮らせる「健幸」(=スマートウェルネス)なまちづくりを目指した取り組みが進められており、今年2月には健幸都市の実現を目指す「日本健幸都市連合」が発足しました。この「日本健幸都市連合」には全国93※の市町村が参加しており、「健幸」という言葉が日本全国に広げられようとしています。

 各自治体は健康で幸せなまちづくりを目指しているようですが、そもそも健康状態と幸福度にはどのような関係があるのでしょうか?

※2017年10月現在の参加自治体数

【米澤】 一般的に、健康状態が良いと幸福度が高いといえますね(図1)。また健康で幸福な人は、運動に対する意識が高く、ストレスも発散できている人が多いようです。

図1:健康状態と幸福度(年代別)
図1:健康状態と幸福度(年代別)(出典:『第2回PB地方創生幸福度調査レポート』2017年5月)

【伊藤】 なるほど。健康と幸福度の相関は高いようですね。運動という言葉が出ましたが、運動(1日8,000歩を歩くなど)をすると自治体からもらえる「健康ポイント」で景品と交換できる、というような健康増進イベントが全国各地で行われていますね。

【米澤】 そうですね。そのようなイベントに参加すれば、楽しみながら健康になり、かつ幸福度も上がると思います。ですが、地域の健康増進イベントに参加する人って、実は参加前から「健康で幸福な人」が多いのかなと思っています。

【伊藤】 健康で幸福な人は運動に対する意識も高いから、ですね?

【米澤】 その通りです。自治体が「健幸」なまちづくりを目指すには、健康で幸福な人だけでなく、健康だけど幸福ではない人、または健康でなく、かつ幸福ではない人へ向けた施策に取り組む必要があると思います。

健康でなく幸福でもない人には「健康寿命」を延ばす施策を

【伊藤】 健康でなく、かつ幸福でない方のために、健康でなくても幸福を感じられるような健康施策って何かありますか?

【米澤】 例えば、「健康寿命」と平均寿命との間を幸福に生きるための施策というのがあります。

【伊藤】 「健康寿命」とは、元気に自立した生活を過ごせる期間のことですね。

【米澤】 そうです。健康寿命と平均寿命には約10年の差があります。この期間を幸福に生きるために、地域包括ケアといった支援体制の整備や、地域社会に誰もが積極的に参加・貢献できる「共生社会」の実現ができるような地域づくりを進めていくことが重要だと思います。

【伊藤】 健康寿命と平均寿命との間の過ごし方も重要ですが、健康寿命を延ばす、というのも重要ですよね?

【米澤】 まさにその通りで、健康寿命の延伸も国や自治体の大きなテーマとなっています。現在、国が積極的に進めている取り組みとして、従業員の健康増進へ企業が投資をする「健康経営」が挙げられます。

【伊藤】 健康経営は「働き方改革」の施策としても注目されていますね。

【米澤】 はい。各企業が健康経営に取り組むことによって、従業員のこころもからだも健康増進が見込めます。また「健康経営」は従業員の心身の健康保持だけでなく、社員のモチベーション向上による生産性の向上や医療費適正化にも効果が期待できます(図2)。

図2:健康経営により期待される効果
図2:健康経営により期待される効果(出典:『NTTデータ経営研究所』2017年1月)

【伊藤】 「健康経営」は従業員の健康増進だけでなく、企業の業績も上げられ、医療費の支出も抑えられる可能性がある、ということですね。

健康だけど幸せを感じていない人には幸福度を高める施策と健康施策とを一体にした取り組みを

【伊藤】 では、健康だけど幸福ではない方々への施策とはどのようなことがありますか?

【米澤】 そのような方々を健康かつ幸福にするには、幸福度を高める地域づくりと健康施策とを一体として進めていくと良いと思います(図3)。例えば、地元の商店街のイベントを活用するなど、各地域の資源に合わせて、様々な人が参加しやすいイベントと健康施策とを合わせて行うと良いでしょう。

図3:幸福度を向上するための健康施策のあり方
図3:幸福度を向上するための健康施策のあり方(出典:政策創造塾キックオフセミナー(5/30)米澤氏講演資料)

【伊藤】 本連載の第2回の記事にもあるように、地域でのイベントの参加者は幸福度が高くなる傾向がみられます。ただし、住民の幸福度を高める分野は地域特性によって違います。したがって、自治体がどのような活動を市民に提供していくか、ということがポイントになっていくでしょう。

【米澤】 健康づくりに関しても、地域でのイベントを開催してもなかなか人が集まらない、といったことがよくあると耳にします。そのような場合には、「イベントに参加しない人ってどんな人なんだろうか」と考え、もっとポジティブに、「行くと楽しそう」と思わせるような仕掛けづくりが重要だと思います。

 自治体が健康づくりの施策やイベントを行うにあたり、どのような人をターゲットにするべきかを考える際には、「PB地方創生幸福度調査」の結果が良いヒントになるのではないでしょうか。

【伊藤】 市民の幸福度を喚起するポイントは、仕事だったりプライベートだったりと人それぞれで異なります。イベントを開催する際には、ターゲットとなるペルソナ(人物像)を設定し、ターゲットの幸福度を喚起できるポイントを調査結果も活用しながら整理したうえで、地域でのイベントの企画に取り組むことが大切かと思います。

 次回は、「社会人の学び直し」に焦点を当て、個人の学習意欲や地域における生涯学習の環境の有無と幸福度について検証していきます。

        ◇

米澤 麻子
株式会社NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションユニット
アソシエイトパートナー
大手保険会社においてヘルスケア領域の事業開発を経て現職。遠隔医療、企業や保険者の健康経営やメンタルヘルス、地域の健康増進や疾病予防、高齢化対策やケアマネジメントを中心に医療・保健・福祉分野のコンサルティング・調査に取り組んでいる。専門はヘルスケアビジネス、社会保障。

伊藤 健二
政策創造塾 塾長
明治学院大学 学長特別補佐(戦略担当)
みずほ情報総研、慶應義塾大学にて7省庁の委員等で政策提言を行いつつ、産学官連携のプロジェクトを長年にわたって企画・推進する。慶應義塾大学では、産学官連携によりビジネスモデル研究・実践を行い、株式会社パイプドビッツとの3年共同研究として政策創造塾の前身となる「政策創造プロジェクト」を推進。2015年に政策創造塾を設立し、塾長に就任。

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