開票事務改善の取り組みを通じた組織変化の兆し
政治山 / 2015年7月30日 15時40分
選挙開票事務改善のきっかけ
2010年から参加している人材マネジメント部会も4期目の2014年には参加者が延べ15人となり、「何か一歩踏み出すことはできないか」と頭を悩ませていたとき、山口伸樹・笠間市長と早稲田大学マニフェスト研究所の北川正恭先生の対談の機会がありました。その中で、人材マネジメント部会の手をお借りして「選挙開票事務改善の取り組みができないか」との話があり、この開票事務改善が動き始めました。
開票の様子
「日本一過酷」と言われた笠間市の開票事務
笠間市では、2014年12月の選挙は当初、県議選と市議選の「ダブル選挙」の予定でした。その想定で開票事務改善を話し合っていた矢先、衆議院が解散して「トリプル選挙」になってしまいました。
笠間市独自の事情もあります。2006年に1市2町が合併した笠間市は、衆議院小選挙区では選挙区を2つ(1区と2区)有します。つまり、衆議院選挙(比例区、1区、2区)、県議選、市議選、そして最高裁判所裁判官国民審査の計6つの開票作業が重なります(最終的には、県議選が無投票となったため、衆議院選と市議選の5つの開票作業になりました)。
通常の県議選、市議選の「ダブル選挙」であれば、開票終了2時間を目標とするところですが、衆議院選と市議選の5つの開票作業です。国民審査が伴うことを考慮すると、「6時間以上掛かるのでは」という声もありましたが、開票に要する目標時間を4時間に設定しました。計15人の人材マネジメント部会参加者と選管職員は10月から勉強会とシミュレーションを8回重ね、開票前日には開票に従事する職員114人でリハーサルも行いました。
結果は4時間35分と、目標を達成することはできませんでしたが、「効率化・時間短縮」という成果以外にも、勉強会に参加したメンバーの熱意を感じたことはもちろん、開票リハーサルに参加した若手職員の意識の高さは頼もしく思えました。
班長会議では活発に意見交換された
回り道でも“誰のために”“何のために”を忘れずに
選挙の開票事務改善の取り組みで組織・職場がどう変わったか。開票事務は、長年当たり前に行われてきた業務であり、簡単には変えられないと考えられがちですが、何を目的に業務を進めるか、今回の場合は「いかに正確に、早く開票するか」を目標にすることによって変えられる要素はあると思えました。そうした変えられる要素はあっても、地方への権限移譲や職員の増員が難しい現在においては、多くの自治体では業務の「効率化」のみのウエートが高くなってしまいがちです。効率化そのものが目的となってはいないでしょうか。
私が農政担当をしていた10年以上前、上司と農家を訪問し、直接話をしたことを思い出します。事務が忙しいのになぜ外に行く必要があるのかと聞いてみると、「いいから、行けば分かるよ」とその上司は笑って言いました。当時は、そうして時間を割いて農家の意向を聞いていたのです。
必要なのは、事務業務を効率化することで時間を作り、本当に必要な市民の声を聞き、今、求められているものは何かを把握することなのです。求められるすべてに対応することはできないかもしれない。それでも、インターネットなど通信手段が発達している現在だからこそ、直接話を聞きに行ったり、回り道になってしまっても、“誰のために”“何のために”を忘れず業務に励むことが重要です。
人マネ笠間メンバー
現状とこれから
選挙直後は、同僚たちから、「面白かった。何かに活かしたい」といった話が自然と出てきました。半年経った今、その話が出ているでしょうか。残念ではありますが、まだ継続して変革の芽を育てていくことができていない現状があります。
それでも、開票事務改善の取り組みでマニ研を含めた開票班長と行ったダイアローグ、そして、選挙前日の開票リハーサルでは参加者の熱意を感じることができました。
また、今年度の人材マネジメント部会には、このダイアローグを面白いと言ってくれた参加者から部会に参加してくれるメンバーが出てきてくれました。そういった小さな芽吹きが、変化の兆しなのでしょう。私たちが求める組織・職場の変化は、こういった小さな芽から育てていかなければならないと思っています。
茨城県笠間市 上下水道部水道課 係長 鈴木滋さん
◇ ◇
自治体職員のスキルアップ研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラムです。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴ります。
<茨城県笠間市 上下水道部水道課 係長 鈴木滋>
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