第65回 地域・自治体の未来を創る人材育成の内製化~枚方市版人材マネジメント部会が目指すもの
政治山 / 2023年2月27日 16時39分
「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。
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大阪府枚方市では、2016年度から早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会に研究生3名を送り出し、2020年度までに5期15名の人材マネジメント部会の研究生(マネ友)が誕生しています。
そこで、これまで研究生が積み重ねた経験やスキルを生かしながら、これまで以上に庁内へ展開できないか検討した結果、2021年度は研究生としての参加を一旦中止し、まずは自分たちでやってみる「枚方版人マネ内製化」を始動しました。
なお、執筆者は2017年度の研究生です。2020年度から人事課に配属されましたが、2021年4月半ばに新型コロナワクチン接種対策室へ事務応援(兼務)となり職場を離れてしまい、人マネ未経験の「担当者T」1人が内製化の事務局を担うことになりましたので、「思い」を記事に込めてもらいました。
1.2021年度「枚方市版人材マネジメント部会」始動への流れこれまでの研究生派遣の取り組みでは、参加した研究生個人という点では個々の意識、能力の向上に大きな成果があったと感じています。しかしながら、5年間継続して参加した結果、以下の課題も浮かび上がってきました。
- 人材マネジメント部会の活動や考えが、研究生以外の職員に浸透していない。
- 研究会に参加した職員も、年度ごとに活動が途切れてしまい、継続した活動ができていない。
- 人材マネジメント部会は、意識の高い人たちがやっている“何か特別なもの”という周りの職員からの偏見。
- 【担当者Tの思い】
- 自分たちが働く枚方市をより良い組織にしたいという思いはきっと職員みんながどこかで持っているはずで、人マネでやっていることは何も特別なことではない。組織のことを考えてアクションを起こすことは、もっと当たり前のように多くの職員が実践しているはず。この人マネの活動を庁内にもっと拡げていきたい。
この担当者の思いも受けながら、これらの課題解決を図るため、枚方市では、人材マネジメント部会の研究会を内製化し、対象者を増やすことで、庁内対話を促進させて、職員力の底上げを図るとともに、これまで研究会に参加した職員(マネ友)に講師、助言者として研究会に参加してもらうことで、継続的、拡散的な活動ができないかと考え、2021年度から枚方版人マネが始動することになりました。
2.内製化の難しさを実感枚方版人マネは年4回のスケジュールで、枚方版研究生は2グループ各3人の合計6人でのスタート。担当者Tは、人マネ研究生としての経験がないため、マネ友が残した資料を頼りに準備を進め、8月4日に第1回、9月14日に第2回の研究会を開催。それぞれマネ友が中心になって講師を担い、「人マネ部会とは」「対話って何」「生活者起点」「問いとは」などをテーマに、個々が学んだ知識・経験を6人に伝えました。
第3回の研究会では、人マネ幹事の水谷智子氏が参加し、各チームが今考えているありたい姿、アクションプランを発表する場を持ちましたが、各チームとも職員インタビューを実施しながらアクションプランなどの検討も順調に進んでいると思っていた矢先、新たな課題が浮かび上がりました。
- 【担当者Tが感じた課題】
- 人マネが大切にしている価値観が枚方版研究生にしっかりと落とし込まれていない
- 枚方版研究生の意欲が低いわけではないが、どこか受け身の体制
- アクションプランを形にすることが目的となって対話が十分にできないまま課題をこなしている
人マネの幹事団のみなさんが伝えてくださったような、研究生の意欲が湧き上がるメッセージを我々がどう伝えていけばいいのか、事務局としてどう働きかけをすれば枚方版研究生の気付きにつながり、対話を深めて前に進むことができるのか、内製化を進めていく中で大きな課題であると感じました。
また、研究会の取り組みは、幹事から答えを示されたり、ゴールまでの道筋が敷かれていたりするわけではなく、自分で自由に考え、そこに辿り着くこと自体に意味があると考えますが、枚方版研究生の一部からの意見では、活動領域が幅広く自由すぎて、どう対応すればよいか悩み、葛藤しているといった声も上がってきました。
3.試行錯誤で取り組みを進める中、思わぬ効果が内製化ならではのさまざまな課題を抱えながらも、第4回研究会、年度末の市長・副市長報告会に向け、各チームと事務局が何度も対話を続けました。その結果、各チームとも「人マネ通信の発行」や「人材育成基本方針の浸透」など具体的なアクションを実行するとともに、市長・副市長報告会でも一定の評価を得ることができました。自分たちで行う内製化には困難も多々ありましたが、その過程で得るものもたくさんありました。
- 【枚方版人マネ(内製化)の効果】
- マネ友の大きな支援、マネ友自身にとっての追い炊き
- 継続することの重要性
- 市長・副市長の評価
- 【担当者Tが感じたこと】
- 枚方版人マネの取り組みをとおしてとても嬉しかったことは、マネ友の職員が本当に積極的に協力してくれたこと。カリキュラム検討のときからほぼ全員と一緒に考えてアドバイスをもらい、毎回の研究会にも多くのマネ友が参加してサポートしていただいた。
- そしてそれが、マネ友の皆さん自身が当時のことを思い出すことで追い炊きにもなり、改めて組織のことを考える機会になっていたと感じた。
- 一緒に頑張れる仲間がこれだけいるということは、これまで5年間研究生を派遣してきた枚方市の強みだと感じ、だからこそ、これからもマネ友を巻き込みながら、内製化の取り組みを進めていきたい。
人マネの取り組みのさらなる庁内への拡がりや地域への価値提供という点では課題はあるものの、枚方版研究生、マネ友、事務局のつながりの強さを感じる1年となりました。担当者が感じたとおり、継続してきたからこそ得られた成果もありました。
また、市長・副市長報告で一定の評価を受け、業務時間の20%までを通常業務や組織の枠にとらわれず自身が取り組みたい活動に充てることができる「枚方市版20%ルール」などの提案内容が実現に向けて取り組みが進められることになったことで、2021年度の枚方版研究生にとっても自分たちがやってきたことは意味があったのだと感じてもらえるのではないかと思っています。
一方で、1年間をとおして「様々な人と対話することは、気づきがあるだけでなく、庁内への浸透につながるアクションになること。また、ありたい姿を実現するために、できる範囲にとらわれずに一歩前に踏み出すことの大切さ」を本当に理解してもらえたのか、人マネが大切にしている考え方や対話について研究活動の中で体感できたかという点では不足している部分があると感じています。
早稲田人マネ部会がそうであるように、枚方版人マネ部会もどんどんバージョンアップしてやっていきますし、マネ友の組織化も見据えて、連携強化も進めていこうと考えています。
2022年度は、引き続き内製化による枚方版人マネ部会を実施するとともに、課長級が参加する人材マネジメント管理職部会にも研究生を派遣し、合計9人で取り組んでいます。今年度は他の自治体とも連携したいと考えていますし、研究生自身も地域に出て活動の範囲を広げてもらいたいとも感じています。
今年度の枚方版研究生も大いに悩みながら研究を進めていますし、第1・2回研究会では、鬼澤幹事、青木事務局次長のご協力もいただきながら、年度末の報告会に向けて研究を続けるとともに、事務局としても、一歩ずつ、粘り強く歩みを進めることで、地域・自治体の未来を創る人材育成につなげていきたいと考えています。
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