なぜ、若者の投票率が上昇したのか。地域を自分ゴト化できる今こそ、首長、議会、住民による「より良い三角関係」でシン・地方創生へ
政治山 / 2021年6月22日 10時0分
なぜ、若者の投票率があがったのか
小金井市では3月21日投開票で市議会議員選挙が行われました。緊急事態宣言中(3月21日の投票日に解除)の選挙であり、これまでの投票率の下落傾向は止まらないとみていました。4年前の2017年の市議選では全体の投票率が39.54%と、2013年市議選から4.43ポイントも下落し初めて投票率が4割を切ったのでした。
ところが、蓋を開けてみると今回の投票率は全体で40.18%とわずか0.64ポイントですが上昇し、大方の予想を覆したのです。しかも当日は春の嵐のような風雨の天候でしたから、これには選挙関係者の大勢が驚いたと感想を漏らしています。
![選挙街宣車](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/06/IMG_4733-1-500x375.jpg)
選挙街宣車
ただ、ここで注目したいのは若者の投票率です。10代(18・19歳)では4年前比で7.08ポイントUPの38.94%、20代は同比2.88ポイントUPの21.17%、30代でもそれぞれ同比3ポイントUPで30.95%、ついでに言えば40代は一般の定義上では若者ではありませんが、こちらも約3ポイントUPの39.96%と上昇。実に40代までの全世代で投票率が上昇したのです。
4年前の上記世代の投票率が低すぎたといえばそれまでなのですが、小金井市はベッドタウンかつ学生が多く住む文教住宅都市です。毎年人口の5%~8%が入れ替わると言われ住民の移動が激しく、ずっと投票率が下落傾向なことは避けられない環境であると感じていました。何が若者を投票へ向かわせたのでしょうか?
政治に無関心でも、決して無関係ではいられない。を実感したコロナ禍科学的な根拠はなく、私が求めてきた投票行動調査も小金井市はやってくれませんので、あくまで推察でしかありませんが、やはり感染症が影響したものと捉えています。新型コロナウイルス感染症をこの1年経験して、嫌でも自分が住む街の政治に“関わらざるを得ない”状況だったのではないかというのが原因の1つではないかと。
昨年の1人10万円の特別定額給付金支給において、小金井市は東京都の多摩地域26自治体の中で最下位を争うほど支給が遅かったことが問題になりました。私も多くの市民から「なぜ小金井市はこんなに仕事が遅いのか」「隣の市ではもう支給されたよ」などかなり怒られましたが、住民の皆様は住む街によって差があることを改めて実感されたと思われます(執行そのものに直接関与できない地方議員の立場では非常に悔しい想いをしたものですが…)。
![特別定額給付金の申請書送付封筒](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/06/d7a9b531006a12af3dcd97ab6a030da3-500x375.jpg)
特別定額給付金の申請書送付封筒
また、昨年小金井市議会には学生団体や、文化・芸術関係の仕事をしている方、生活に困窮している方などから多様な陳情書が提出されました。コロナ禍で日常が大きく変わり、住む街の政治の舞台へ現状を変えるためのアプローチをされたのです。初めて陳情書を書いたという方も多かったようです。
このように、これまでの日常では“無関心”で問題なかった(はずの)自分の住む街の政治が、今回の感染症で変化し、決して自分と“無関係ではない”ことを実感せざるをえなくなった方が一定の割合で存在したはずです。
また、通勤に制限がかかりテレワークへ半ば無理やり移行。平日昼間に初めて商店街近辺をウロウロし、地域発見をされた方も多いのではなかったでしょうか。「こんな店・施設があったのか」「もっと使いやすいテイクアウトの仕組みがあったら」「お店の情報をわかりやすくしたらいいのに」とぼんやり思った人もいたでしょう。中にはアプリを作成したり、地域コミュニティをSNS上で新たに立ち上げたり、いろいろな動きも見えました。住む地域が、コロナ禍でようやく自分ゴト化できたのです。
![店頭でお弁当を販売するお店](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/06/IMG_0177s-500x366.jpg)
店頭でお弁当を販売するお店
話を元に戻すと、若者の投票率が上昇した原因は明確ではないものの、コロナによって自分が住む街の情報にこれまで以上にアクセスするようになったことが影響したという点、私は確信しています。昨年から私の元にもメールやLINE、twitterなどあらゆるツールで「はじめまして」で始まる市民の問い合わせやご意見・ご要望などが圧倒的に増えました。
このコロナ禍で改めて自分の住む街のことを見直すキッカケにもなるという悔しいジレンマとも言えますが、国の政治も大事なもののどこか遠い存在。身近な街の政治こそ気軽に相談や問い合わせ、意見を伝えることができる「政治の窓口」なのです。地方自治体議員の私たちは、今こそこれまで無関心だった方の声を聴くチャンスではないでしょうか。
![オンラインでの交流](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/06/1e49ea4fea2224c4f5906d87c7cc59fb-500x251.jpg)
オンラインでの交流
オンラインで気軽に勉強会や交流ができる時代になりました。私も毎週何回か勉強会や研修会・セミナーなどにオンライン参加しており、これまで以上に学ぶ機会も増えています。また、市政報告会もコロナ後はオンラインに切り替え、これまで以上のペースで開催しています。会場に集まっての開催では子育てもあり物理的な都合で参加できなかった方も、オンラインでは都合にあわせて音声だけでも参加してくれるようになりました。新しい声を聴くことができています。
より良い三角関係を築こう(行政×議会×住民)既成概念を取っ払って、地方議会は新しい住民とのコミュニケーションを目指すべきです。コロナ禍では行政ばかりがクローズアップされがちですが、執行権を持たない私たちは、私たちなりにきめ細かく住民の声を聴き、政策を作ることができます。それは、行政ではできないことです。
そして、コロナで目覚めた住民の皆さんも動きはじめています。昨年の第15回マニフェスト大賞のエリア選抜(優秀賞候補)では、「市民・団体」が応募主体として最も多く3割を占めました。この日本最大の政策コンテストはかつて地方議員・議会が主役とも思われてきましたが、既にそういう大会ではなくなってきています(これを受けての議員の発奮も期待したいですが)。
地方政治制度の二元代表制は、首長・議会・住民がより良い三角関係を築くことで、最大限機能すると考えられています。暗い話ばかりではありません。アフターコロナでは、それぞれが切磋琢磨し協働する取り組みが増える「シン・地方創生」の事例が増えていくと期待しています。
![マニフェスト大賞授賞式の模様](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/06/IMG_2716-500x375.jpg)
マニフェスト大賞授賞式の模様
白井亨 小金井市議会議員
日本最大の政策コンテスト・マニフェスト大賞実行委員長(2020年第15回、2021年第16回)/ローカル・マニフェスト推進連盟共同代表/小金井市議会議員/小金井をおもしろくする会(政治団体)代表/ マニフェスト大賞・優秀賞を2度受賞(第8回、第10回 ※いずれも優秀コミュニケーション戦略賞)/1975年大阪生まれ育ち/民間企業約15年経験/2011年まで「無関心市民」。政党に属さず特定の団体推薦も受けず2013年市議選で初挑戦・初当選、2015年市長選敗北後2017年トップ当選で市議へ復帰(→現在3期目)/座右の銘:「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
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