市民が主役の自治体づくりを目指して―「なら・未来」の活動
政治山 / 2022年7月28日 12時56分
ローカル・マニフェスト運動から出発
政策研究ネットワーク「なら・未来」(代表幹事・奥田寛)は、主に奈良市をフィールドとして、市民が主役の自治体づくりを目指し2003年に設立された市民団体です。そのきっかけとなったのがローカル・マニフェスト運動。市長選などで候補者がきちんと政策を競い合い、有権者はその内容を判断して投票するという選挙本来のあり方を実現することが、民主主義の第一歩となります。そのために、後述する通り現在に至るまで奈良市長選での公開討論会などを行っています。
また、市民啓発や政策提言などへと活動の幅を広げてきました。たとえば、総合計画や議会改革、市民自治などをテーマとして、連続セミナーを開催するとともに、その成果を踏まえて奈良市に提言してきました。また、市長選に際して市民からマニフェストを募集して候補者にそれをぶつけたり、議会報告会を市民が主催して開いたりといった、ユニークな取り組みも行ってきました。
2021年の市長選でも公開討論会を開催昨年(2021年)は奈良市長選がありました。これまではJCが主催して大規模な候補者討論会が行われ、「なら・未来」はそれとは別に討論会や個別に候補者を招いての意見交換会を開いてきました。ただ今回は、コロナの影響やその他の要因もあり、JCが討論会の開催を見送ったため、「なら・未来」の開催する公開討論会が、候補者が一堂に集って政策を戦わせる唯一の場となりました。
6月27日の討論会当日は、現職の仲川げん氏のほか市議・県議出身などの新人候補4人、立候補予定者全5人が揃い、NHKや奈良テレビなど取材陣も多数詰めかけました。コロナの関係で、会場参加は関係者のみに限定し、一般の方にはZOOMで視聴していただく方式にしましたが、一時は200人を超える視聴者があるなど、多くの市民に関心をもっていただくことができました。
最初に一人ひとりがアピールし、続いてクリーンセンター建設問題など主催者側が用意した質問に答えていただき、さらに候補者同士が質問し合うクロストークも行うという、密度の濃い2時間の討論会になったと思います。討論会の様子はYouTubeでも視聴できるようにしており、これまでに3000人以上の視聴者がありました。
高校生による奈良市へのまちづくり提案コンテスト昨年の活動におけるもう一つの柱は、「高校生による奈良市へのまちづくり提案コンテスト」の開催です。メンバーの高齢化が課題となっている「なら・未来」にとって、若者世代とのコラボレーションは年来の悲願でした。元奈良県教育長の矢和田忠一さんのお力添えもあって、奈良市、奈良市教育委員会、奈良県教育委員会の後援をとりつけることができ、49件の応募がありました。この応募作品については、奈良市長選の立候補予定者にも提案概要をまとめて送付し、公約に生かしてもらうよう依頼しました。
1次審査では、実行委員会のメンバーが課題設定の的確性や提案の独創性などの観点から各作品を点数化。1作品について3人が審査し、その合計得点で16の作品を選びました。最終審査では、応募者がオンラインでプレゼンしたうえで、新川達郎同志社大学名誉教授(審査委員長)など5人の審査委員が合議を行い、最優秀賞1点、優秀賞3点、審査委員特別賞4点を選出しました。最優秀となったのは、奈良女子大学附属中等教育学校6年の中田真由さんによる「高校生の高校生による高校生のための奈良修学旅行作り」でした。
昨年8月には、仲川市長らを招いてコンテストの表彰式およびプレゼン大会を開催。入賞者が提案内容を発表し、仲川市長が一人ひとりに対して丁寧かつ前向きに講評してくださいました。
提案の具体化へ向けプロジェクトが始動その後、応募者の多くが大学受験に臨むといった事情もあり、しばらく活動が止まっていましたが、今年の3月からコンテストで応募のあった提案を実現しようというフォローアップ会議が動き出しました。現在のところ、「音楽を通じて人とのつながりをプロジェクト」と「帰ってきたくなるまちづくりプロジェクト」の2つが活動しています。
前者は、奈良市内の観光スポットなどにストリートピアノを設置しようという提案です。ただ、プロジェクト名が示すように単に設置して終わりではなく、ストリートピアノを通じてさまざまな出会いや交流の場を生み出そうという取り組みです。提案者の竹本心美さん(畝傍高校出身、現在は奈良県立医科大学の学生)を中心に、設置場所や維持管理の方法などについて検討しています。
仲川市長は「すぐにでもできる」と大いに乗り気でしたが、担当課レベルではなかなかそうもいかず、「(設置場所の候補となっている)JR奈良駅改札前の広場は道路扱いなので難しい」など、まずはできない理由を並べるという行政の常套手段に直面。そうした社会の壁を実感しながらも、奈良市の関係各課やJR、観光協会等と粘り強く協議を続け、大人たちもそれぞれの立場から先進事例の情報を提供するなどして、前向きに活動を続けています。
後者は、大学入学などでいったん奈良を離れた若者が、もう一度帰ってきたくなるようなまちにしようというプロジェクト。当面はその一環として、高校生などが学校以外で自習したりおしゃべりしたりできる場所が意外に少ないという課題を解決するための取り組みを始めています。「あそぶなら」という学生団体が全面的に協力し、中部公民館の一室を期間限定で高校生に開放する予定です。
この試行の結果を検証しながら、次のステップに進んでいきたいと考えています。
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