地方分権を実現するための戦略コンセプト―地元愛の醸成とシビックプライド
政治山 / 2018年1月19日 16時30分
放映権料の激減がプロ野球の地方分権を推し進めた!
その昔、プロ野球界は中央集権を絵に描いたような業界でした。球界の盟主・読売巨人軍を中心にすべてが回っていました。ドラフト制度も江川事件に始まり、巨人が弱くなると「逆指名制度」が導入されたり、フリーエージェント制度が導入されたりと、巨人が勝つためになりふり構わず制度変更が行われていたようにさえ思えます。
どうしてそういう構図ができ上がってしまったのか?その理由のひとつに経済(お金)の問題があります。毎晩ゴールデンタイムにテレビ放送されていた当時のプロ野球の放映権料は巨人戦だけ全国放送で約1億円。それ以外の試合でテレビ放送されるのは、阪神戦や中日戦、広島戦など地方局限定なので放映権料は数百万円~1千万円くらいだったと思います。セ・リーグ球団は巨人戦が年間13試合あったので約13億円の放映権料が収入となります。一方のパ・リーグ球団は巨人戦が無いので、放映権収入がほとんどありません。だからすべての球団が巨人の意見を忖度するようになってしまったわけです。ファンやパ・リーグ球団が熱望していたセパ交流戦がなかなか実現しなかったのも、セ・リーグ球団にとっては年間の試合数が決まっている限り、交流戦を実施すると巨人戦が少なくなる、つまり放映権料が減収になるので否定的だったわけです。
ところが、ご存知のように消費者の嗜好の多様化と、サッカーやスケート、音楽、ゲームなどエンタテインメントコンテンツの充実、ネットメディアの台頭によるテレビの影響力の低下により、巨人戦の視聴率が落ちていきました。ついにはゴールデンタイムから巨人戦は姿を消し、今では日本シリーズやオールスター戦以外はBS放送でしか見ることができなくなっています。さらに、楽天やソフトバンクなど本業の利益が十分にあり、プロ野球経営が仮に赤字でも宣伝費と割り切れる親会社が登場し、巨人一局集中の構図が完全に崩れたわけです。今では、常勝チームのソフトバンクホークス、ダルビッシュ有や大谷翔平を擁した日本ハムファイターズ、ニューヨークヤンキースで活躍する田中将大が在籍した楽天イーグルス、地域密着型の球団経営でカープ女子などのブームを巻き起こした広島カープなど地方のチームが実力だけでなく人気の面でも熱い状態を生んでいます。そうです、地方が熱いのです。
Jリーグは地方分権の成功モデル
プロ野球界の東京一局集中を崩すキッカケにもなり、その課題の解決策を見事に提示したのがJリーグです。設立時のチェアマン川淵三郎氏はJリーグの放映権収入は全て個別チームの収入とはせずに、Jリーグの収入とし、それを各チームに分配する方式を取りました。生まれながらにして生じる球団の「貧富の差」を減らし、球団経営を頑張るチームに頑張りに応じて分配する方式を採用したわけです。もし、Jリーグがプロ野球界と同じように放映権収入を個別チームの収入という運営ルールにしていたら、三浦カズやラモス瑠偉などが所属していた当時の人気球団ベルディ川崎(読売新聞系列)が資金面で一人勝ちとなり、ベルディ川崎一局集中の流れを止められなかったのではないかと思います。
各チームは地域密着型でサポーターを形成し、昇降格で涙を流すくらいチーム愛を醸成しています。決して「東京のチームが一番」なんて誰も思っていません。鹿島アントラーズがある茨城県鹿嶋市は人口7万人の小都市ですが、日本国民の多くがその名を知っています。今、流行りのように地方自治体がシティプロモーションと称して様々な宣伝を展開していますが、こうした地元愛の醸成こそが本当の「シビックプライド」につながり、地域創生の本質だと思います。
また、海外で活躍するJリーガーを見るとグローバル化が進んでいるのを感じます。「近頃の若い者は内向き志向で海外に行きたがらない」という声もありますが、私はそうは思いません。Jリーガーは当たり前のように自らの成長のために海外移籍をしています。彼らはもともと英語やドイツ語、イタリア語が堪能だったとは思えませんし、個々のプロ意識も非常に高いように感じます。しかし、どれだけ海外で活躍しても日本代表に選ばれることを望み、日の丸を背負ってワールドカップで戦うことを誇りに思っています。
このように、発足当時から「地域」と「地域のサポーター」を強く意識してきたJリーグは新たに2017年から10年間、合計2100億円におよぶ巨額の放映権契約をダ・ゾーン(DAZN=スポーツのライブストリーミングサービス)と結び、その資金をJリーグのさらなる発展のために使うことを決めました。地方分権と地域主権を実践しながらグローバル化も進んでいるJリーグ。ワールドカップで優勝する日も意外と近いかもしれません。
政党の地方分権の鍵はネットワーク化とロングテール
さて、政治の世界。政党交付金の総額は、国勢調査の人口に250円を乗じて得た額を基準として国の予算で決まり、約320億円です。各政党に交付される政党交付金の額は、政党に所属する国会議員の数と、前回の衆議院議員総選挙、前回と前々回の参議院議員通常選挙の際の得票数によって決まるので、自民党に多額の金額が配られます。これだと強いところはますます強くなり、弱いところは瀕死の状態になっていくわけです。かつての巨人と今の自民党、放映権収入と政党交付金、とても構図が似ているとは思いませんか?
これを改革するには、既存マスメディアの広告収入がグーグルなどのネットメディアに広告市場シェアを奪われていったように、大手企業の大口取扱高だけではなく、個の小さな広告の圧倒的な積み重ねによるロングテールが必要だと思います。ロングテールとは、アマゾンのようなオンライン小売店が無店舗による人件費と店舗コストの削減に加えてITの利用による在庫の一元化やドロップシップの導入などによる物流コストの極小化を進めた結果、従来型の小売店の制約に縛られず、普通に考えれば年に1個、またはそれ以下しか売れないような商品まで顧客へ提供することで、店舗を構えていたのでは実現不可能な大きな販売機会の取り込みを可能にしたITを駆使した新たな物品販売のビジネスモデルのことを言います。
「全国政党を都市銀行とすると、我々地域政党は地方銀行」という役割分担はとても重要ですし、地方銀行&地域政党じゃないと汲み取れない市民ニーズはたくさんあると肌で感じています。それに加えて、大きな業界改革を促すために我々地域政党が地方銀行からネットバンクに進化し、ロングテール的仕組みを実現する全国ネットワーク化を進める必要があると思っています。そして、そのチャレンジが地域政党連絡協議会「地域政党サミット」なのです。
まだまだ10党になったばかりの小さな組織ですが、47都道府県にある地域政党や無所属議員をつなぎ、切磋琢磨しながら、本当の地域創生を実現するために着眼大局着手小局で進んでいきたいと思います。ご興味ある議員、候補者、スタッフ志望の方々、ぜひご連絡ください!
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