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イチから教えてマイナンバー!基本情報Q&A

政治山 / 2015年12月3日 16時30分

 マイナンバー制度が2016年1月から開始されます。政府は2015年11月中に国内に住む全ての人を対象に通知カードを郵送するはずでしたが、12月に入ってからも全員に行き渡らない状況が続いています。スタート前から予定が狂う状況で、果たして来年からの制度開始は大丈夫なのでしょうか。そもそもマイナンバーって何なのでしょうか? 知っているようで知らないマイナンバーについて、基本知識から現場の状況まで不定期連載で特集します。

最新の更新情報が閲覧できる政府広報オンラインのページ
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【Q】マイナンバーとは?

【A】 日本ではこれまで、国民一人ひとりの税や社会保険の支払い状況をきちんと把握する仕組みがありませんでした。そこで、12桁の番号を割り当てることで、税や社会保障の取りっぱぐれを防ぐ仕組みが考案されました。国はこれによって、税収や年金など社会保険収入の増加が見込めるメリットがあります。また、煩雑な手続きが番号1つの照合で済む効率化と人件費の削減が見込めます。2017年1月からは、インターネット上で個人情報のやりとりの記録が確認できるようになるマイナポータルが利用できるようになります。

【Q】身分証代わりになるの?

【A】10月から発送が始まった通知カードは、紙のカードで、個人番号の他、住所、氏名、生年月日、性別等が記載されており、透かし等の偽造防止技術も施されていますが、身分証明書にはなりません。顔写真は記載されておらず、通知カードを使用して番号確認と本人確認を同時に行うためには、別に運転免許証や旅券等の本人確認書類が必要となります。

 番号確認と証明書の双方を備えるには、個人番号カードが便利です。1月から本人の申請によって交付が開始される個人番号カードには、通知カードと同じ情報のほかに顔写真も添付されることとなり、番号確認と本人確認が1枚で行えます。臓器提供意思表示欄もあります。交付手数料は当面、無料です。個人番号カードは、個人番号を証明する書類や本人確認の際の公的な身分証明書として利用でき、また、さまざまな行政サービスを受けることができるようになるICカードです。

【Q】通知カードの受け取りを拒否することはできるの?

【A】総務省は11月18日の時点で郵便局に留め置きされているカードが223万通、期間が過ぎて自治体に返還されたのは84万通に上ると発表しました。「受け取る必要はない」などと週刊誌などが煽っている影響もあり、一部で受け取り拒否運動も起きているようです。確かに罰則はありませんし、社員からの番号通知を得られなかった企業は「督促をした旨」の記載を税務署に通知すれば受理されます。

 しかし、来年1月以降、税や社会保障などの手続きでマイナンバーの提示を求められた際に、番号を提示できない理由を繰り返し聞かれることになりますし、税や社会保障の書類にマイナンバーを記載しなければ、当局から目を付けられ、税務調査などの対象となる可能性が高くなるかもしれません。

 通知カードを受け取れず、後から番号が必要となったときに、マイナンバーが記載された住民票の写しや住民票記載事項証明書を交付して確認できますが、遅かれ早かれ番号がなければ不都合な状況に直面しますので、通知カードは正直に受け取るのが得策でしょう。

マイナンバーの通知カードと個人カード
マイナンバーの通知カードと個人カード

【Q】私たちにメリットは?

【A】ざっくり3点挙げます。

(1)確定申告や年金支払いなどの手続きがスムーズに進みます。特に、引っ越しの際の行政手続きが便利になるでしょう(副次的なメリットとして、行政側の事務コストが軽減し税金のムダ使いが減ります)。

(2)所得の過少申告、扶養控除の不当申請、生活保護の不正受給を防止し、不公平感がなくなります。

(3)災害時の安否確認がスムーズになります。

【Q】私たちにデメリットは?

【A】ざっくり3点挙げます。

(1)番号が知れ渡るとなりすましの被害に遭う恐れがあります。

(2)年金情報、銀行口座、健診結果なども紐付け(=連結)されれば、詳細な個人情報が漏れる恐れがあります。

(3)収入や資産が把握されやすくなるので、副業収入が丸裸になる恐れや、節税が難しくなる可能性があります。

 マイナンバー先進国ともいえるアメリカの場合、社会保障番号のなりすまし被害が社会問題となっていますが、日本ではマイナンバーを口頭で伝えるだけでの本人認証は認められず、個人番号カードや運転免許証等の顔写真付きの身分証明書によって本人確認を行うことが義務付けられているので、こうした身分証明書が偽造されない限りは「番号が漏えいしたら一巻の終わり」ということはありません。万が一、番号が漏えいし不正に利用される恐れが生じた場合は、番号の変更という選択肢もありますので、過度に恐れる必要はありません。

 社会保険との紐付けは日本年金機構の情報流出により作業が遅れ、基礎年金番号との連結の開始時期が半年から1年延期される見込みです。また、預金口座との紐付けは2018年から任意で始まります。2021年以降の義務化も検討されています。健康保険やクレジットカード機能、医療情報、戸籍謄本、パスポート、不動産の登記情報や自動車の登録情報などとの紐付けも検討されています。

 国が個人資産を把握できるようになれば、例えば金融機関が破たんする際の預金保護や税務調査の際に役立つとされています。また、隠し資産の多い低所得者が生活保護を受給するといった不正給付も防止できます。

代表的なマイナンバー先進国

【Q】国にメリットは?

【A】国が強調するメリットは、国民のメリットとほぼ同様で以下の通りです。

(1)行政を効率化

(2)国民の利便性を高める

(3)公平かつ公正な社会を実現する

 しかし、財政難に苦しむ国にとって、本音のところでは課税逃れを防ぐ大きな目標があると考えていいでしょう。2021年からの預金口座紐付けの義務化が実現すれば、日本国内の金融機関に預け入れている資産額が国に正確に補足されるようになり、徴税逃れはほぼ不可能になるでしょう。

 国はマイナンバー導入により、国民一人ひとりの納税状況が把握できるだけでなく、マイナンバー特需も見込めます。日本には約1万2000の大企業と、約420万の中小企業があります。全企業がマイナンバー制度導入によるシステム構築で3兆円前後の経済波及効果があると言われています。

 ものごとには必ず光と影があります。一方の側の不都合はもう一方の側の好都合でもあります。便利で効率的になる一方で、国家統制や情報漏えいの課題が生じます。どちらに重きを置くかで、マイナンバーの評価も180度変わりそうです。

        ◇        ◇

コラム「財政健全化に名を借りた財務省陰謀説!?」

 預金口座や証券口座などに紐付けされた場合、国民の国内財産が正確に把握されていきます。現在、預金や債券等の利息、株式・投資信託・FX等の利益にかかる税率は約20%の分離課税になっていますが、金融所得の課税が一体化し、累進課税方式の総合課税、もしくは貯蓄額に応じた貯蓄税などの財産税が導入される可能性があると指摘されています。

 「また重税かぁ」と思う人もいるかもしれませんが、デイトレーダーで年間数億円を稼ぐ人たちの課税が一律20%というのは、最大45%の所得税を納めている高額納税者には承服しがたい状況かもしれません。年収695万円以上の所得者は23%以上の所得税を払っており、汗水垂らして働いて得たお金が、マネーゲームで得たお金よりも収入によっては重税になっているのが現状です。

 マイナンバーと新税の関係が囁かれる背景には、過去の財政難に際して預金封鎖を行った実績が引き合いに出されます。戦時下の1944年、日本国債の債務残高は国内総生産の2倍超に達し償還不可能な状態でした。戦後の1946年2月17日、政府は突如として預金封鎖と新円切替を実施。個人と法人問わず預金引き出し制限を設け、旧紙幣の預金は完全に封鎖され、新円のみを世帯主が300円、家族が100円しか出金できなくなりました。これにより、いくら旧紙幣で預金していようがその資産はほぼゼロになり、政府がコントロールした額のお金しか手にすることができなくなったのです。

 さすがに預金封鎖という手荒な方法は使わないにしても、1000兆円を超える国の借金を穴埋めするのに、1700兆円超に膨らんだ個人金融資産をいつでも徴税できる状態にしておこうと考えるのであれば、資産状況を把握しておかなければなりません。

 政府は2020年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化を目標にしていますが、預金口座のマイナンバー紐付け義務化が検討されているのが2021年。時間軸の繋がりが、政治的な意図に感じられなくもありません。

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