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ハードな政策はカタカナでラッピングしてマイルドに

政治山 / 2015年12月15日 11時0分

 世の中に出回る言葉にカタカナ文字が増えてきました。経済用語や政策テーマも好んでカタカナが使われています。訪日観光を「インバウンド」に、共有経済を「シェアリング・エコノミー」という具合に。

マイナンバーキャラクター「マイナちゃん」

 これらの用語は外国人にもそのまま通じるので、むしろカタカナ語で表現した方がいいと思いますが、政権公約の意味で使われるマニフェストやアジェンダはせめてどちらかに統一してほしいし、コーディネーターやファシリテーター、パネリスト、キャストといった言葉になると、どう使い分けていいのかもよく分かりません。

 という時代背景の中でさっそうと登場したのがマイナンバー。国民1人ひとりに番号を割り当てる点では、住民基本台帳ネットワークシステムや納税者番号制度、国民総背番号制と変わらないはずなのに、過去に国民から受け入れられなかった後者の面々とはかなりイメージが異なります。

難しい行政用語もカタカナで易しいイメージに

 マイナンバー。言葉の響きは、「エリア51」「CR7」などのクールな通称もあるイチロー選手やクリスティアーノ・ロナウド選手の背番号を連想します。

 マイナンバー法の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」。一点の漏れも許さない役所の<無謬性>で日本語に表すとこれだけの文字数が必要であり、結果的に言語明瞭、意味不明瞭となります。マイナンバーも同様にそれ自体の意味は不明ですが、スマートでクールでマイルド。「何だかよく分からないけど、行政効率化になるならオッケー」とノリで賛成したくなります。

漢字は画数が増えるほど難解なイメージに

 漢字にも好感度の高いものは沢山あります。翔や駿、颯、愛、菜、美……命名で好まれる漢字は毎年ほぼ同じようなものが並びますが、漢字がこの世にいくつあるかご存知でしょうか。日本漢字能力検定協会が主催する漢字検定で最高位の1級は約6000字を対象にしていますが、国内で使用される漢字の総数は約5万字、中国では異体字なども含め20万字に上ると言われ、その数は現在も増え続けています。なお、日本独自で作られた和製漢字(国字)だけでも1500字あると言われます。

カタカナマトリックス

 象形文字や指事文字など6種類(六書)から成り立つ漢字は、1字だけで意味を表す表意文字または表語文字と言われます。その造形の美しさから漢字のタトゥーを入れる欧米人も増え続けています。しかし、意味が固定し、かつ画数が多くて難解なイメージのある漢字は、「国民総背番号制」などと字数が連なるほど堅苦しく不快なものになっていきます。

 表意や表語に対し、表音文字の代表であるアルファベットはわずか26字で構成されます。同様に表音文字の平仮名や片仮名は50音で構成されています。

狙いは「由らしむべし知らしむべからず」!?

 「由らしむべし知らしむべからず」――人民を施政に従わせることはできるが、その道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はない

 行政の立場からすれば、抽象的で洗練されたイメージのあるカタカナ用語は、政策を円滑に進めるための最適ツールであり、不人気政策に対しては今後ますますカタカナを用いた政策用語や法律用語が増えるのではないでしょうか。逆に、あまり注目されたくない政策は、今まで通り難解な漢字と日本語独特の文法を駆使した「霞が関文学」でコーティングする使い分けが行われると考えられます。

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