インターネット投票研究会が発足―2022年参院選で実現を
政治山 / 2015年7月31日 11時30分
情報ネットワークをめぐる法的問題を学術研究する情報ネットワーク法学会が27日、「インターネット投票研究会」を設立しました。同研究会は、主査を湯淺墾道氏(情報ネットワーク法学会副理事長、情報セキュリティ大学院大学教授)が、副主査を河村和徳氏(東北大学大学院情報科学研究科准教授)が務め、内外の事例を研究し公職選挙におけるインターネット投票(以下、ネット投票)の実現を目指しています。
ネット投票は、エストニアの国会議員選挙・地方議会議員選挙、ノルウェーの地方議会議員選挙(試行)、韓国の政党代表選挙などで利用されていますが、わが国においては2013年7月にインターネットを用いた選挙運動が一部解禁されて以降、ネット投票の本格的な議論には発展していません。しかし、2016年のマイナンバー制度開始に伴い、政府はマイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)として、2020年以降の参院選(=2022年)において在外邦人のネット投票実施を掲げています。
ネット投票の実現には課題も多く現行制度のままでは実施できないわけですが、過去の政治山調査からも関心の高さがうかがえ、ネット選挙解禁の際には多くの人が「ネットで投票できるようになった」と勘違いしたほどでした。ネット投票の研究がなぜ今必要なのか、主査の湯淺墾道氏にうかがいました。
ネット投票の利便性を享受するのは若者だけではない
選挙は民主主義の基礎をなす重要な制度であり、国民が候補者や政党に投票して民意を政治に反映させることは、民主政治の上で欠かせないものとなっています。また選挙だけではなく、最近は各地の自治体で政策決定にあたって住民の民意を問うために、住民投票も実施されるようになってきました。
このような選挙や住民投票における投票を、インターネットに接続されたパソコンやスマートフォン、タブレット等の上から行うことができるようになれば、有権者の利便性は飛躍的に高まります。
ネット投票の利便性を受けるのは、スマートフォンやタブレットを常時持ち歩いている若者だけではありません。投票所に出かけることの負担が大きい高齢者や、人口が少なく投票所が遠い場所にある地域に住んでいる有権者、在外投票を行うために非常に煩雑な手続を要求される海外の有権者なども、ネット投票が実現すれば、投票環境は大きく改善されることになるでしょう。
法的要件からセキュリティまで、検討と検証が必要
他方で、選挙の実施には特に公正性が要求され、秘密投票の原則、普通選挙の原則など選挙に関する憲法上の原則に基づき、公正・公平なインターネット投票が行われるようにする必要があります。
また相次ぐサイバー攻撃や個人情報の流出事案にみられるように、インターネットの利用にはセキュリティ上の問題点が常に伴うことも事実です。停電やネットワークの障害によって、インターネット自体が利用できなくなるということも考えられます。このため、実証実験の実施などを通じて、インターネットを投票に利用する際の問題点を把握し、障害発生時の対応などを検討していく必要があります。
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