参議院不要論を多面的に考える

政治山 / 2015年10月21日 16時30分

 参議院不要論について、前回はその存在意義から、前々回はコスト面から考えました。最後に、様々な側面からその是非を検討したいと思います。

任期6年はメリット? デメリット?

 突然の解散がある衆議院と異なり、ひとたび当選した参議院議員は6年間の任期が約束されています。「大衆迎合せず、じっくりと政策課題に取り組める」とのメリットに対して、「どんな議員も6年間辞めさせることができない」というデメリットもあります。

衆院解散中は参院が日本を守る?

 「衆議院が解散している間に緊急事態が発生した場合、参議院が緊急集会を開ける」という意見に対しては、「特別国会まで内閣は継続するのだから、解散日から40日以内の選挙と、選挙の日から30日以内に召集される特別国会までの最大2カ月余の間に緊急を要する事態の対応は、憲法改正で新たに規定を設ければいい」という反論があります。

二院制が政情安定につながっている?

 GHQを説き伏せた「政情が安定しない」との説得については、2007年以降に衆参ねじれ国会が繰り返され、「決められない政治」の原因の一つともなってきました。与党に対する批判が参院選での野党勝利を呼び込み与野党対立が先鋭化することで、衆参二院制が逆に政情を不安定にするという指摘もあります。

まるで有名人の人気投票?

 衆議院が小選挙区制であるのに対し、参議院は県単位の選挙区で、エリアが広い分だけ知名度の高い人に有利に働きます。10増10減で「鳥取&島根」「徳島&高知」の2合区が採用され、この傾向はますます強まるかもしれません。

 比例代表は事実上の全国区なので、選挙区以上に有名人のアドバンテージが働きます。個人名が書かれることで政党の得票にもなるので、政党は比例議席の上積みを目指して、国民受けの良い有名人を比例代表に擁立しようとする傾向があります。

 有名人といえば、新設されたスポーツ庁でも、オリンピック金メダリストで国民的人気も高い鈴木大地氏が初代長官に就きました。鈴木氏の起用は、日本水泳連盟を黒字化した手腕に加えて、来夏参院選での擁立も視野に入っているのかもしれません。

 五輪メダリストの参議院議員は、現職でも橋本聖子氏(自民)や谷亮子氏(生活)がいます。知名度だけでなく、爽やかなスポーツ界で大成した人物は好感度も高く、比例票の掘り起こしのために、各党とも喉から手が出るほど欲しい人材です。

 もちろん、有名人だからNGというわけではありませんが、じっくりと政策課題に取り組む院であるはずが、衆議院以上に大衆受けが求められる選挙制度になっているのが実情です。

文部科学省に新設されたスポーツ庁
文部科学省に新設されたスポーツ庁

参院3年半のコストで幻の新国立競技場は建設できた?

 最後に、コストのところで考えた参議院の必要性について補足します。少し古い資料ですが、福田康夫政権時の2007年11月の政府答弁書で、衆参合わせた国会議員1人あたりの経費を機械的に算出すると3億1078万円になるとのデータが公表されています。衆議院よりも参議院の方が1人当たり経費は割高ですが、仮に3億1078万円を参議院議員242人で掛けると752億円です。これを3年半分積み上げると、見直しが決まった新国立競技場の2651億円に近づきます。数字だけで考えるわけにはいきませんが、参議院には相応の貢献をしてもらわなければなりません。

改憲、道州制、地方分権、税制……様々な政治課題テーマとも関連

 今回の記事で、読者から寄せられるコメントの多くが「参議院は必要ない」という意見でした。しかし、参議院の在り方を変えるには憲法を改正しなければなりません。また、道州制を導入し、地方分権を進めれば参議院は州代表の少数精鋭議会として生まれ変わるかもしれません。

 とはいえ、2合区を導入するだけで猛烈な反対があったことを考えると、あまり現実的な話とはいえないでしょう。税収を増やすのではなく歳出を減らすために国の統治機構を抜本的に見直すという考え方は、永田町ではなかなか現実的な話にはなりません。

参議院調査会は自画自賛?

 昨年6月、参議院の調査会が提出した「国の統治機構等に関する調査報告(中間報告)」では、参議院の在り方に関して「衆議院のみでは困難とされる多様な民意を表出する機能を担う」「参議院議員は独立の立場で党内において独自の力を発揮する役割がある」「6年に及ぶ任期の安定性をいかした、政治指導者を養成する機能がある」といった報告が行われ、具体的な改善策は提示されませんでした。

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