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企業版ふるさと納税で、損する企業、得する企業

政治山 / 2016年1月12日 17時40分

 昨年末、政府・与党は2016年度の税制改正大綱に、企業版のふるさと納税「地方創生応援税制」創設を盛り込みました。通常国会で関連法案が成立すれば、新年度からスタートします。

お金

特産品の“お得感”がふるさと納税の原動力

 ふるさと納税という名称ですが、本質は納税ではなく地方自治体への寄付金。個人がふるさと納税をした場合には、納付する金額から概ね2000円の自己負担額(所得額に応じて変動)を差し引いた分が所得税・住民税から控除される仕組みです。ところが、寄付の本質よりも「2000円以上の価値がある特産品が贈られる自治体に寄付すればお得になる」というインセンティブが、ふるさと納税活性化の原動力となってきた経緯があります。

現行のふるさと納税でも企業は寄付できる

 現行のふるさと納税を企業が活用する場合、特産品を収益に計上しなければなりません。また、個人が自己負担額を差し引いた寄付の全額を「税額控除」できるのに対し、企業の場合は寄付額に法人実効税率をかけた分だけしか納税額は安くなりません。少ない節税効果のために、より多額の寄付をしなければいけないことになります。結局のところ、個人が受けるメリットを法人では享受できません。

企業はCSRで活用すればイメージアップ?

 新たな「企業版ふるさと納税」になれば、寄付金の税負担が3割軽くなります。つまり現行約30%の法人実効税率を倍にした約60%が法人住民税と法人税の合計から控除される制度設計になっています。減税額には上限があり、もともと支払うことになっていた法人住民税、法人税の2割までとなります。

 この新制度でも、寄付金を上回る節税効果は期待できませんが、企業が被災地に寄付するなどCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)活動の一環として活用すれば、地方活性化のための財源確保になりうるのではないかと期待されています。

 一方で、企業と地方の癒着につながるのではないかといった懸念や、税収減になるといった懸念の声もあります。

菅官房長官の肝いり政策

 ふるさと納税は菅義偉官房長官が総務大臣時代に主導し、2008年度に始まった制度。企業版となる今回の案も昨年6月、菅長官が制度の検討を関係省庁に働きかけて具体化にこぎつけた肝いり政策です。今夏の参院選に向けて、地方創生や一億総活躍への取り組みをアピールするうえでも、政府は実現に向け前のめりとなっています。

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