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サボっても議員報酬や歳費は全額支給?

政治山 / 2016年1月25日 11時40分

 北九州市議が病気療養で2年以上欠席している間に3300万円余の議員報酬全額が支払われていたことが分かり、市内外から批判の声が上がっています。

 報道によると、小倉北区選出の木村年伸議員(56)は、2013年9月の定例議会の初日に出席したのを最後に、2年4カ月にわたって本会議や常任委員会などを150回欠席しているそうです。

病院

 本人は「糖尿病などで出席できなかったが、電話による陳情などには応じてきた。2月から出席したい」などと釈明していますが、そもそも地方議員が受け取る議員報酬とは、どんな活動の対価として払われるものなのでしょうか。

報酬は活動の対価でなく、身分の対価?

 地方自治法203条では、地方公共団体は議員に対し報酬を支給しなければならないと定めています。第2項で「議員以外の者に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する」とありますが、議員の欠席や活動内容についての言及はありません。

 札幌市では定例議会を1年超欠席した場合、欠席が1年を超えた翌月から議員報酬を月額30%減額するという、かなり限定的な規定を2012年に施行しましたが、他の自治体で追随する動きはありません。

 本来、議員活動に対して払われるべき対価が、活動しなくてもその身分だけで支払われているのが現状であり、本人が拒む規定もありません。

本会議場
(参議院ホームページより)

地方議員は議員報酬、国会議員は歳費

 地方議員が受け取る議員報酬に対し、国会議員が受け取る報酬は歳費と呼ばれ、憲法第49条に「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と定められています。

 具体的な内容は国会法や歳費法(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律)などに明記されていますが、こちらも本会議の出欠で減額される規定がないことは、いわゆる“議員の育休議論”でも話題になりました。

 歳費の法的性質については、職務に対する報酬と一般には理解されています。一方で、国会議員は民業との兼業を禁止していないことなどから、職務で生じた出費を弁償する費用弁償説を唱える学説もあります。ですが、国会議員の場合は文書通信費や立法事務費、地方議員の場合は政務活動費という、職務で生じた出費を弁償する給付が別途存在します。

 歳費の月額について、国会法35条は「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」と規定し、歳費法で両院の議長は月額217万円、副議長は158万4千円、議員は129万4千円を歳費として受ける旨定めています。

議員報酬も歳費も、収入の一部でしかない

 歳費とは別に、国会議員には期末手当約635万円、文書通信費毎月100万円のほか、立法事務費毎月65万円など様々な特権も支給されます。

 規模が大きく財政的に豊かな自治体では、400万円以上の期末手当や政務活動費月額50万円前後、職務を行うために要する費用弁償などの給付が行われており、国会議員を模範としているかのようです。

 歳費については、財政問題や東日本大震災の影響を受け、2012年5月から2割削減(当初は1.2割)したものの、約束した議員定数削減も行われないまま2014年4月には元に戻りました。1月20日の参院本会議では、2015年度の国家公務員の給与を引き上げる改正給与法が可決・成立し、国家公務員のボーナスは年間支給4.2カ月分となり、年収は平均5万9000円増える計算です。議員にしろ公務員にしろ、財政難に喘ぐ国とは別次元のような大盤振る舞いです。

育休議論の本質は、歳費の在り方にあるのでは?

 議員が欠席しても議員報酬や歳費が変わらない、という意味では、“議員の育休議論”と今回の市議欠席は同じ問題といえます。つまり育休や長期欠席そのものの問題ではなく、議員報酬や歳費が何に対して支払われているかを論じることが先決であることを示唆しているように思います。

 ちなみに、衆議院では登院記録はあっても本会議出欠について記録を取っていないので、国民が議員の活動を正確にチェックすることができません。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>

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