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現役大学院生が挑む地域おこし協力隊「人生をかけて農村活性化に挑む」―農業改革特区・養父市(1)

政治山 / 2016年2月22日 12時30分

 京都大学大学院での研究成果を実践の場で活かそうと「地域おこし協力隊」に挑戦した青年がいます。衛藤彬史さん(28)は、同大学院で“地域おこし”や“村づくり”を研究。理論や先行事例を学ぶだけでなく、現場での経験を積む重要性を感じていたところ、中山間地域の農業改革拠点として国家戦略特区に指定された兵庫県養父市で協力隊の募集が出ていることを知り、「これは飛び込むしかない!」と思ったそうです。

 とはいえ、衛藤さんは農学研究科博士課程の現役大学院生。研究をしながら実践にも取り組みたいという熱い思いを指導教官に伝えたところ快諾をもらい、養父市の面接でも理解をもらい、2014年10月から協力隊員と研究者という「二足のわらじ」生活が始まりました。

地域おこし協力隊員と研究者という、「二足のわらじ」に挑む衛藤彬史さん
地域おこし協力隊員と研究者という、「二足のわらじ」に挑む衛藤彬史さん

 研究と実践を続ける中で、両者の更なる融合を求めて今年1月から研究拠点を神戸大学農学研究科の地域連携センター 篠山フィールドステーションに移し、キャンパスのある篠山市で農村地域の課題を解決するための調査・研究を行いながら、養父市との間を往復しています。

地域特産の大豆「八鹿浅黄」復活へ予算化に成功

【政治山】 養父市での活動状況を教えていただけますか?

【衛藤さん】 青大豆の地域在来種である「八鹿浅黄(ようかあさぎ)」を販売に結び付けるプロジェクトに取り組んでいます。市内に点在する耕作放棄地に八鹿浅黄を植え、生産から加工、販売まで、いわゆる六次化に取組むという活動です。

 主体は田舎暮らし倶楽部・高柳地区自治協議会の2団体で、前者の田舎暮らし倶楽部は移住・定住支援をこれまで行っていて、移住希望者と地域を、そして空き家をマッチングさせていく取組みに10年以上関わってこられた方々です。

 倶楽部の代表は移住希望者から職探しの相談を受けることが多く、就農支援を地域で取組む体制づくりができないか、とアイデアを探していました。そこで八鹿浅黄を栽培することになったのですが、資金がないため理念に賛同した自分が「補助金が出ないか当たってみるので、一緒に取り組みましょう」となりました。

 予算化を求める提案書が採択され、今年度と来年度の補助金を戴き、プロジェクトが始動しました。再来年度までの自立化を目指しています。

八鹿浅黄で開発した商品第一弾、浅黄ゆばについて報じる地元の新聞記事
八鹿浅黄で開発した商品第一弾、浅黄ゆばについて報じる地元の新聞記事

オンラインショップやSNSを使った連携にも着手

【政治山】 予算化に成功されてからの取り組みは?

【衛藤さん】 私は全体的な取組みのコンサルティングと、研究テーマとも関連する、販路の部分でオンラインショップの開設とソーシャルメディアを活用したネットワークづくり、情報発信に関わっています。

 目標は、広がる一方の耕作放棄地を大豆畑に変えて、八鹿浅黄をブランド化して農業関連で雇用を創出し、移住希望者を職住ともに支援する中で取組みを継続させていきたいと考えています。

【政治山】 協力隊の応募動機に書かれた「ICTを活用したネットワークづくり」も動き出しているのですね。

【衛藤さん】 ICTに関してはこれからの部分も多いです。オンラインショップの開設のほかに、講習会の開催を考えていました。インターネットが使えるようになれば、農村での暮らしももっと便利になり、生活も豊かになると思います。他の地方でiPadを配布しフェイスブックを使ってもらう研究プロジェクトに関わっていたのですが、やはり明確な目的がないと、利用を促進しても進まないという問題に直面しました。

 どういう使い方であれば利用が広がるのかという点は、今後も挑戦していくテーマです。

現在は、学びながら協力隊活動をする「半学半域」

【政治山】 京大大学院農学研究科で研究した内容は、現場でどのように役立ちましたか?

【衛藤さん】 理論や先行事例について勉強した内容をどう実践に活かすか、という挑戦でしたので、どう役立てるかを常に意識していました。実際に進めていく中で覚えていく、学んでいく部分は非常に多かったのですが、それでも合意形成やワークショップを行う際の知識と経験は現場で大いに役に立ったと思います。

地元の方々と共に、八鹿浅黄の成長を見守る衛藤さん(あおぞら古流農園の八鹿浅黄圃場で)
地元の方々と共に、八鹿浅黄の成長を見守る衛藤さん(あおぞら交流農園の八鹿浅黄圃場で)

【政治山】 一昨年10月から協力隊員になり今年3月末で1年半の任期が終了しますね?

【衛藤さん】 協力隊としての活動は3月末で終了ですが、八鹿浅黄プロジェクトは当事者の一人として今後とも関わっていきます。

 昨年末までは京大大学院の博士後期課程に在籍しながら協力隊として活動していました。現在の研究拠点である神戸大大学院農学研究科では大学と篠山市との連携協定に基づき、協力隊制度を組み替えて大学生が協力隊として活動する「半学半域」というスタイルを取っています。

 神戸大を選択したのは、実践力でのフロントランナーだったからです。神戸大農学部の前身である旧兵庫県立農科大学は、1949年の設立当初から地域での実践(域学連携)に取り組み、篠山市との強い連携体制が整っています。

 いま地方創生ブームが過熱気味で、全国どこの大学でも社会貢献や地域貢献がテーマになっていますが、しっかりとしたノウハウがないままやっているところも少なくありません。そんな中で、一地方大学、一地方自治体の取組みに過ぎないとはいえ、歴史的にも地域的にも先進的な取り組みをさらに発展させて、全国の域学連携のモデルとなり続ける使命感を持って取り組んでいます。

人生賭けて、社会科学分野の自立方法を探す

【政治山】 農学研究に取り組まれたきっかけを教えてください。

【衛藤さん】 いま、大学における研究環境は脅かされていると感じています。学務や教育の分量が増え、大学教員が研究に使える時間や労力が減ってきており、この傾向は今後ますます高まっていくことが予想されます。

 私は、人類の発展に最も貢献しているのは科学技術であると思っています。長期的にみて、学問の発展は社会にかけがえのない価値をもたらしますが、最近の教育研究機関は目先の経済性に目を奪われ、金にならない研究分野は追いやられ淘汰されようとしています。

 理想的な例を挙げます。自然科学分野になりますが、青色発光ダイオード(LED)の研究でノーベル賞を受賞した中村修二氏はベンチャー企業を立ち上げて、科学技術を社会実装し利益を生みだすことで研究費を稼いでいます。理論と実践で一線を走っている成功例だと思いますが、こうした形は金を生まない研究といわれる社会科学分野ではなかなか実現できていません。

柳地区の住民や関西大の学生たちと秋祭りの手伝いをする衛藤さん
柳地区の住民や関西大の学生たちと秋祭りの手伝いをする衛藤さん

 社会科学から生まれた技術を社会実装することでビジネスにしていき、新たな調査・研究に使うお金を確保していくことに、私は人生を賭けてここに挑戦したいと思っています。

ゆくゆくは研究機関起ち上げて、最前線で研究を

【政治山】 人生を賭けて?

【衛藤さん】 大げさに聞こえますが、本気です(笑)。人に言うと「無理に決まっている。現実をみろ」とよく言われますが、無理だと言われれば言われるほど、挑みたくなる性分のようです。

 ゆくゆくは補助金や科学技術研究費に頼らず、自身で研究所を立ち上げ、農村地域の課題解決に資する理論研究と社会技術の開発、技術の社会実装による資金調達だけに時間と労力を使える環境を整備していきたいと思っていて、そうした環境で理論と実践をともに最前線で取組む研究者を目指したいと思っています。

 いまはそうした目標の達成に向けて、必要なスキル、人脈、経験を最も得やすい環境はどこか、どこに身を置き、どんな仕事に取組めば一番成長機会が多いかという視点で行動しています。

((2)へ続く)

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