シャープ・東芝・オリンパス―企業に問われるガバナンス
政治山 / 2016年3月16日 12時10分
ガバナンスという言葉を耳にする機会が増えていますが、最近のニュースでは以下のように使われています。「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)について、厚生労働省の審議会が国民の信頼を高めるため、ガバナンス体制の強化を求めた報告書をまとめた」。
ガバナンスを直訳すると「統治」。コーポレート・ガバナンスは「企業統治」で、企業が不正行為をしないで、長期的に企業価値を高める経営上の仕組みを指します。
2000年代に入ってから企業統治が問題に
米国で2001年12月にエンロン社、2002年7月にワールドコム社が相次いで倒産し、多額の粉飾決算が判明した際、マーケットの信頼が損なわれたことから企業統治が問題になりました。日本では、2004年から2006年にかけて、西武鉄道やカネボウ、ライブドアといった有名企業の不祥事が相次ぎ、企業統治を超えた問題として金融商品取引法が成立しました。
一歩踏み込んで社会貢献を行う企業も
企業の社会的責任を指すCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)も企業の組織としての在り方を示す用語として、世界的に注目されてきた言葉です。企業統治で不祥事を事前防止するだけでなく、人事採用や商品開発などの面で積極的に社会貢献しようと一歩踏み込んだ活動と言えるでしょう。
CSRは結果的に企業のイメージアップにもつながります。企業が環境を含む社会課題に取り組むことで生活者との共通価値を生み、それが成長戦略につながります。例えばトヨタは早い段階でハイブリッドカーの開発に取り組み、環境性能の高い車を生み出した結果、売上だけでなくイメージアップにも寄与したと言えるでしょう。
不祥事はネットですぐに拡散
関連して、企業コンプライアンス(regulatory compliance)またはビジネスコンプライアンスも抑えておきたいキーワードです。コンプライアンスは「法令遵守」と訳されることが多いですが、倫理を含めたモラルに近い意味もあります。こちらもコーポレート・ガバナンスの基本原理の一つで、企業が基本的なルールに従って活動する事を指し、入社試験でもよく尋ねられる概念です。
記憶に新しいところでは、オリンパスや東芝の粉飾会計でも話題になりました。フォルクスワーゲンの排ガス不正問題もコンプライアンスに反していると言えるでしょう。最近では、労働基準法に違反するような時間外労働やパワハラ、モラハラが非人道的であるとしてブラック企業のレッテルをひとたび貼られると、ネットで拡散して売上が長期低迷することもあります。
不祥事起こした後の対応も重要
企業自ら法令違反を犯していなくても、子会社や関連会社が情報漏えいや偽装表示などの不祥事を起こせば企業のマイナスイメージは甚大です。トラブル発生後もガバナンスが問われます。対応次第で企業の評価は180度変わるでしょう。被害者救済や再発防止策を迅速かつ的確に打ち出して結果的に信頼醸成につながる場合もあれば、後手後手の対応によって経営難に陥る場合もあります。
企業だけでなく、地方公共団体の中にもコンプライアンス推進課を設け、外部評価委員から指導や助言を仰いで、職員の意識づけを徹底する役所が増えてきました。
社会的な要請に応える形で株式会社サーティファイは2007年、ビジネスコンプライアンス検定を創設し、昨年までに累計1万6,783人が受験しています。コンプライアンスに関する法律基準や意思決定基準などを問うもので、高まる規範意識のニーズに応える動きのひとつと言えそうです。
<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>
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