給付型奨学金は教育の機会均等かバラマキか

政治山 / 2016年4月13日 12時10分

 安倍首相は3月29日、大学生らを対象にした給付型奨学金を創設する考えを表明しました。首相官邸で「本当に厳しい状況にある子どもたちには、給付型の支援によってしっかり手を差し伸べる」と述べました。今夏の参院選で「18歳選挙権」が適用されることを念頭にしているとも言われています。

私的な給付型奨学金はすでに数多く…

 「給付型」は、返済不要な奨学金です。一方で、卒業後に無利子か有利子で返済が必要な奨学金は「貸与型」と呼ばれます。

 大学や企業が独自に行っている給付型奨学金は、すでに沢山あります。苦学生のイメージで浸透している例としては、大手新聞社が販売所での配達等の仕事をすることで、毎月の給料や無料宿舎が完備される制度もあります。

若者

国の奨学金制度は貸与型のみ

 安倍首相が示したのは、文部科学省所管の独立行政法人「日本学生支援機構(JASSO)」が運用する国の奨学金制度です。同機構の奨学金には現在、海外留学奨学金にのみ給付型奨学金があります。

 JASSOが大学や短大、高専などで学ぶ学生らを対象にした一般的な奨学金としては、返済が必要な無利子型と有利子型があります。安倍首相は、こうした奨学金についても「必要とするすべての子どもたちが利子のない奨学金を受けられるようにする」と語り、返済については卒業後の所得に応じて軽減措置を講じる方針を示しました。

 JASSOによると、2015年度予算における事業規模は貸与金額が約1兆1000億円、貸与人員は134万人に上り、有利子の貸与金額は全体の約7割に上ります。また、制度利用可能な大学院生や学生・生徒のうち、2.6人に1人がJASSOの奨学金制度を利用しています。

国の奨学金滞納者は33万人

 大学や企業、財団法人が行っている奨学金制度は掛け持ちで複数利用することも可能ですが、金額が大きくなるほど卒業後の負担や滞納の問題に直面します。JASSOの奨学金制度を利用した人のうち、滞納者は2014年度末で約33万人に上ります。

 教育の機会均等に反対する人は多くないと思いますが、国が給付型奨学金を導入するには相応の財源が必要です。財政難のなか、JASSOも滞納者に対し取り立てを厳しくしている事情もあります。

 夏の参院選に向けて、各党とも若い有権者にアピールできる奨学金制度の拡充に前向きですが、支給対象を優秀な学生だけに絞り込んでいいのか…など課題は多く、バラマキ給付にならない仕組みづくりが求められます。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村 吉弘>

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