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決別宣言されたゆとり教育とは何だったのか?

政治山 / 2016年5月12日 11時50分

 馳浩文部科学相が「教育の強靱(きょうじん)化に向けて」と題する見解を発表しました。2020年からの新学習指導要領で、学習量を減らさず学力の質を高める方針を打ち出し、「ゆとり教育との決別を明確にする」と述べました。ゆとり教育とは何だったのか、改めて振り返ってみましょう。

「詰め込み教育」への反省から生まれる

 日本の戦後教育は、「科学技術の発展についていける人材を養成すべきだ」という声から学力向上に力を入れてきました。この結果、「詰め込み教育」の弊害が表れ、受験戦争や落ちこぼれ、不登校の問題がクローズアップされました。

小学生

 1977年に改訂され、80年から実施された学習指導要領で「ゆとり教育」の考え方が登場し、学習内容の削減が始まります。92年には月1回の「学校週5日制」が導入され、95年には月2回になります。

 学習指導要領とは、文科省が定める教育課程の基準で、全国のどこで教育を受けても一定水準の教育が受けられるよう、ほぼ10年ごとに改訂しています。小中高のそれぞれの教科等の目標や大まかな教育内容を定めています。公立や私立を問わずに適用されますが、実際には公立に比べ私立への影響力はそれほど強くありません。

1998年の学習指導要領で本格化

 1998年に改訂された学習指導要領では「確かな学力、豊かな人間性、健康と体力など『生きる力』の育成」が盛り込まれます。この改訂は狭義のゆとり教育と呼ばれます。ゆとり教育をさらに推し進めたこの改訂が2002年から実施されると、小学5年生で扱う小数点が10分の1の位までとされたことから「円周率が3になる」と報道され、物議を醸しました。学習内容の3割削減や「総合的な学習の時間」の授業が新設。「完全学校週5日制」も始まり、授業時間は小学校6年間で418時間、中学校3年間で210時間削減されます。成績は相対評価から絶対評価へとシフトします。

 「ゆとり世代」に明確な定義はありませんが、ドラマや雑誌などで一般的に用いられているのは、この狭義のゆとり教育を受けた世代で、1987年4月から2004年3月までの生まれ、もしくは1996年3月までの生まれで、2016年4月1日時点で29歳以下の世代を指すようです。

学力低下が顕著に

 ゆとり教育の充実と反比例するように、日本の国際的な学力低下は顕著になります。経済開発協力機構(OECD)が実施している15歳の生徒を対象にした学習到達度理解調査(PISA)では、2000年に32カ国中で読解力8位、数学1位、科学2位だった成績が、2006年には57カ国で読解力15位、数学10位、科学6位と大きく後退しました。

 学習指導要領の影響が少ない私立校に比べ、公立校の学力低下が顕著であることから、ゆとり教育や公立校進学に慎重になる声も教育現場で大きくなり、2008年改訂の学習指導要領では、「ゆとり」でも「詰め込み」でもない、バランスのとれた生きる力の育成を強調し、「脱ゆとり教育」と呼ばれました。

今後の教育は「学力の質」向上へ

 以上のように、戦後教育は「詰め込み」から「ゆとり」、そして「脱ゆとり」という正反合とも言える大きな揺り戻しがありました。2020年に改訂される次期学習指導要領では、学力の質を高める方針で、具体的には小学校で外国語教育が教科となり、高校で「公共(仮称)」が新設される予定です。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>

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