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福知山線脱線事故から11年、遺族が求める組織罰とは

政治山 / 2016年5月13日 11時50分

 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故は、4月25日で発生から11年を迎えました。乗客106人と運転士が死亡、562人が負傷した大事故は、遺族や関係者にとっては終わることのない過失事故です。彼らがこの度、「組織罰を実現する会」を発足させました。組織罰とはどのようなものでしょうか。

JR西日本のホームページ
福知山線脱線事故について再発防止の決意を述べたJR西日本のホームページ

英国の法人故殺罪がモデル

 組織罰は、重大事故を起こした企業など法人の刑事責任を問う刑罰です。現行の業務上過失致死傷罪は個人が対象で、法人の刑事責任は問われません。同会は今後、新たな特別法の制定を目指します。

 参考にした海外事例として、英国に「法人故殺罪」があります。相次ぐ鉄道や船の大事故で組織の責任を問う声が高まり、企業を罰する法人故殺罪が2007年に成立しました。安全管理の不備で死亡事故が起きた場合、企業などの法人に上限のない罰金を科すものです。

大事故でも刑罰に問われない現実

 福知山線の事故では、歴代社長ら計4人が業務上過失致死傷罪に問われましたが、いずれも無罪判決が言い渡されています。

 遺族らは2014年3月に「組織罰を考える勉強会」を起ち上げ、海外事例などを検討してきました。今回発表した素案では、事故で人を死亡させた場合、企業などに500万円以下の罰金を求めます。資力がある企業の場合、500万円を超える罰金も想定しています。

 罰金だけの問題であれば、民事賠償に問えば済む話です。しかし、遺族や被害者の立場に立てば、これだけの甚大な事故で個人も法人も全く刑罰が問われない法体系に納得できないと考えるのは、自然な感情と言えそうです。

業務上過失致死罪も個人の刑罰が前提

 一方で、刑法の刑罰は基本的に個人を対象にしており、法人にはなじみにくいという指摘があります。業務上過失致死罪のように企業の刑事責任を問う場合でも、個人への刑罰が前提となっています。個人の過失がなければ企業の過失を立証できないためです。

 英国の法人故殺罪では、組織の上級管理者に重大な注意義務違反があった場合にのみ適用されます。

 企業としては「前科」の烙印を押されないよう、組織防衛に走り、原因究明や情報開示に消極的になる可能性もあり、今後のテーマの一つとなりそうです。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>

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