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収支報告書に「家族旅行」と記載していたら法的にはOK?―舛添知事疑惑

政治山 / 2016年5月13日 19時0分

 要職に抜擢されたり、批判を受けたりして政治家が注目を浴びると、その直後に「政治とカネ」の疑惑が報道される、というパターンが続いています。民進党政調会長に抜擢された山尾志桜里・衆院議員や、参院選への出馬を表明していた田母神俊雄・元航空幕僚長(公職選挙法違反容疑で逮捕)など枚挙に暇がありません。

 渦中の人物でいえば、舛添要一東京都知事。高額すぎる海外出張費や公用車を使った毎週末の都外別荘通いでリコールの声が高まる中、とうとう「政治資金を家族旅行などに流用していた」と5月11日発売の「週刊文春」が特報しています。なぜ、注目を浴びた後にこうした疑惑が噴出するのでしょうか?

舛添要一都知事
虚偽記載の疑惑がかかる舛添知事(東京都ホームページより)

文春の特別取材班が収支報告書を精査

 今回、「文春」特別取材班は舛添知事の3つの政治団体の政治資金収支報告書(2012―2014年)を精査した結果、13年1月3日と14年1月2日に千葉県木更津市のホテルにおいて、「会議費用」の名目でそれぞれ23万7755円と13万3345円を計上していたことを確認。現地取材した結果、「会議は行われていない」「家族でグレードの高い部屋に泊まったと思う」という証言を得たと報じています。

 舛添知事は当時、参議院議員の2期目で新党改革の代表を務めていました。文春の記事には<正月の温泉リゾートで、いったいいかなる「会議」が開かれたのか>とありますが、この収支報告書の存在を知れば、誰でも同じような疑問を抱くのではないでしょうか。

膨大な政治団体の数…注目されて初めて精査対象に

 しかし、舛添知事が3団体持っていたように、現職国会議員の政治団体だけでも2142団体(総務大臣届出579団体、都道府県選挙管理委員会届出1563団体)もあります。地方議員を含めると膨大な数に上ります。中央選挙管理委員会や各都道府県選管が政治資金収支報告書をPDFファイルで公開しているものの、すべてを精査することは現実的ではありません。

国会議員関係政治団体一覧(総務省ホームページ)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000068058.pdf

政治資金規正法は「ザル法」、「家族旅行」と正直に記載していたら…

 政治資金収支報告書の作成・提出を義務付けている政治資金規正法では、使途についての規制はしていません。「議員は悪さをしない」という性善説が透けて見えます。「規制」ではなく「規正」という字を用いるのは、制限でなく正す点に主眼があり、ザル法との批判は常にあります。

 今回の疑惑は、「会議費用」の名目なのに「家族旅行」だったという虚偽記載の疑惑であり、堂々と「家族旅行」と記載していれば、「公金を含む政治資金を私的に流用していた」という道徳上の責任は問われても、同法や公職選挙法上の罰則には問われません。

 現地取材によって証言を得るという文春の粘り強い取材で問題が発覚したわけですが、収支報告書は虚偽記載を立証できなければ疑惑のままで終わることも多く、政治資金規正法のあり方そのものに問題があるといえそうです。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>

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