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平和安全法制はなぜ安全保障法制と呼ばれるのか

政治山 / 2016年5月16日 11時50分

 昨年9月に成立した平和安全法制(今年3月施行)。マスコミでは安全保障法(制)という呼称が一般的に用いられています。読者から「なぜそう呼ぶのか」という問い合わせをいただきましたので、解説します。

政府は「平和安全法制」推し

 政府は「平和安全法制」という呼称を用いて、首相官邸ホームページなどで、日本を取り巻く状況の変化について、地図やグラフを使って分かり易く解説し、普及に努めています。

首相官邸ホームページ
厳しさを増す日本の状況について、分かり易く解説した首相官邸ホームページの【「なぜ」、「いま」、平和安全法制か?】

 一方で、マスコミを中心に安全保障法制、または安保法、安全保障関連法などと呼ばれるのは、これまでの経緯が大きく影響しています。

最初の呼称が「安全保障法制」だった

 2013年2月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が首相のもとに置かれました。同年12月には、国家安全保障会議が内閣に、国家安全保障局が内閣官房に設置され、「国家安全保障戦略」などを決定しました。安保法制懇の報告書をもとに安倍首相は法案整備の方針を打ち出し、関連法案の具体的な検討が始まりました。

 政府・与党でも昨年5月まで、「安全保障法制」と呼んでいましたが、同月に法案が閣議決定して以降、「平和安全法制」という呼称に変更しました。いわば、本家の方が後から付けられた名称なのです。

複数の「安全保障に関係する法律」だから

 この呼称が今一つ普及しない別の理由として、一つの法律を指すのではなく、平和安全法制整備法と、国際平和支援法を総称した法制度である点が挙げられそうです。特に前者は自衛隊法など10本の法律を、「安全保障に関係する法律」としていっぺんに改正した“集合体”です。平和安全法制、または安全法制という呼称だと、平和安全法制整備法だけと受け止められかねません。

反対派は「戦争法」の“レッテル貼り”

 一方、平和安全法制に否定的な立場からは戦争法(案)と呼ばれています。自民党は、この呼称については「レッテル貼りだ」として批判しており、社民党議員が参議院予算委員会で「戦争法案」と呼称した際には、議事録の修正を求め、強く抗議しました。

<株式会社パイプドビッツ 政治山カンパニー 編集・ライター 上村吉弘>

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