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号泣議員から2年で「議会改革度No1」、丸尾牧兵庫県議から富山市民へのエール

政治山 / 2016年10月5日 11時50分

 政務活動費の不正問題による、富山市議会議員の“辞職ドミノ”が止まりません。この異常事態に富山市民はどのように向き合うべきなのでしょうか。かつて“号泣議員”によって有権者の信用を大きく損なった兵庫県議会で、議会改革に取り組む丸尾牧県議会議員にご寄稿いただきました。

富山市議会政務活動費問題 兵庫県議会の不正と類似の手口

 富山市議会(定数40人)において、政活費の不正使用が発覚し、自民党、民進党系会派の議員11人が辞職しました。その動きは、富山県議会にも飛び火し、県議3人が辞職(9月30日現在)。

 新聞報道では、「茶菓子代500円×400人分」の支出、「領収書の偽造」などの文字が踊り、2年前の兵庫県議会の映像が蘇って来ます。政活費問題に揺れた兵庫県議会においても、同様の不正がありました。

兵庫県議会

旧来型の富山市議会の議会制度

 政活費の交付月額は、会派の所属議員数×15万円とは別に、会派人数が3人から9人までは15万円、10人から19人まで30万円、20人以上45万円が加算されます。加算される最高額を貰っていたのは、自民党会派だけ。政活費収支報告書と領収書は公開対象となっていますが、市議会に情報公開請求しなければ見ることはできません。1件ごとの支出を記録している会計帳簿は非公開です。

 参考までに、富山市議会では、議員報酬(月額60万円 条例上来年4月から70万円)とは別に、議員が議会の本会議などに出席した時に、1日4千円の費用弁償(交通費)を支給。議員が視察した時に支給される宿泊費は、副市長と同じ基準で、都市部1泊14800円、その他の地域13300円に設定。さらに視察時には、日当が1日3000円(片道250km以上の場合4500円)支給されます。

 今年6月に、自民党、民進党系、公明党が、来年4月からの議員報酬の10万円アップを決めましたが、他の議員の手当等を見ても、お手盛りのものが少なからずあり、議員同士が馴れ合い、相互チェックが働かない議会になっていることがわかります。

前に進んだ兵庫県議会の議会改革

 兵庫県議会で政活費の不正使用疑惑が明らかになった当初、私は全ての問題を明らかにすることが、次の改革に繋がると考えました。そこで私は、マスコミの追求とは別に、政活費によるカラ出張の実態だけではなく、切手の大量購入や寄付行為を伴う意見交換会の参加費など不透明な支出を次々と明らかにしていきました。

 案の定、明らかになった不正支出を中心に再発防止策の議論が進められました。具体的な改革内容としては、政活費の領収書をHP上で公開し、それまで非公開であった会計帳簿も公開しました。年間2万枚もある領収書を1枚1枚見るのは現実的ではないため、1件ごとの支出が記載された会計帳簿を公開することが重要です。

 視察に行った時や研修会に参加した時、県政報告紙を作成した時などは、領収書とは別に1件ごとに「活動報告書」を作成し、提出することになりました。日時、場所、視察先、内容、支出金額など、概要を報告書に書くと共に、広報紙や研修会の案内などの裏付け資料等を添付し、実際に開かれた会合なのか、請求金額は妥当かなど議会事務局からも細かなチェックを受けています。

活動報告書

支払証明書は一部を除き廃止、切手の大量購入は原則禁止

 公共交通機関を使い領収書が発行されない時に使用していた支払い証明書は、不正出張に悪用されたことから、領収書が発行されない路線バス以外での使用が禁止されました。その代わりに、切符+領収書もしくはICカードの利用履歴を付けています。切手の購入については、月1万円未満の購入は認められ、切手受払簿に1件ごとの郵便物の郵送先、郵送内容、使用枚数などを記入することになりました。

 3万円以上の備品を購入した時は、備品台帳に記載することになり、本を買った場合は、その表紙のコピーを領収書に添付します。

その他、議長には、職員雇用通知・契約書、各種契約書等の原本、会議の通知、委託業務の成果等の資料を提出し、それらは全てHP上で公開しています。100%の領収書の偽造防止などは難しいでしょうが、不正をしにくい仕組みができ上がりました。

領収書等添付様式

政務活動費の交付は後払いになったが・・・

 会派、議員への政活費の交付方法は、従来は前払い方式でしたが、制度改革により、会派に前払い、議員に後払いという形になりました。従来の制度より少し改善しましたが、会派内のチェックでは、相互監視機能が弱く、政活費を全額使い切ってしまおうという意識は変わりません。まさに、富山市がこの制度になっており、中核市の中で、政活費を使い切る唯一の議会でした。あるべき形としては、議会事務局が支出内容をチェックし、議長からの後払い方式に変えるべきでしょう。

 県民の関心が高かった政活費交付額については、議員1人あたり月50万円の10%カット(月45万円)に止まりました。ところが、2015年度には政務活動費が使い切れず、返還された額は約1億5686万円に上りました。返還率は33.8%。

不正はなくなっても有効に使われていない

 これらの見直しを行っても、現在も高級車のカーリース料が、年間80万円まで支出することができ、トイレットペーパー代など調査に直接関係の無い事務所費などに、政活費が使われています。

 また、政活費の不適正な支出は激減したのですが、多くの議員の支出を見ると、事務所賃料、広報費、人件費などに多額のお金が注ぎ込まれ、視察や研修会以外、何の調査をしているのか、ほとんどわかりません。現在も政活費は、有効に使われているとは言えません。

 対策として、調査内容や成果を記載する年間の活動報告書を作成すること、議員の仕事ぶりを評価することが重要です。北海道の福島町議会では、一般質問回数や内容、政策提案の回数、議会報告会の回数、議員の取り組み課題などをまとめ、議会白書として、市民に報告しています。市民オンブズマンの中には、議員通信簿をつけているところもあります。市民が議員通信簿を作ることもできるでしょう。政活費の支出を見てみるだけで、議員の仕事ぶりや性格も見て取れます。多くの市民が、議会や議員の仕事ぶりに関心を持つことで、議会は機能し始めるのでしょう。

お手盛り手当は一掃を

 兵庫県議会で支給されていたお手盛り手当てについても、今回、改めて問題を指摘し、改革に繋げました。本会議などの出席時に支給される費用弁償(交通費)は、タクシー利用も考慮に入れた定額から、公共交通機関交通費実費が原則(別途、県職員旅費制度に合わせ1日300円の旅費諸費支給)になりました。

 ちなみに私の場合、往復電車代は1日780円でしたが、会議出席時に1日4500円の費用弁償が支給されていました。もちろん「合理性、妥当性の無い手当」は受け取れないことから、全額受け取り拒否し、その額は約176万円になっています。受け取らなければ寄付行為が成立すると言われていますが、その対処は現在検討中です。

 また、県議会開催時に宿泊する場合は、定額で1泊16500円支給されていたのが、現在は実費支給になりました。視察時の宿泊料については、東京など都市部に宿泊すると1泊16500円、地方であれば14900円が支給されていましたが、現在は、従来の宿泊料を上限とし、朝食・夕食代を抜いたホテル代の実費支給になりました。

 県議会改革の全体の流れは、私を含めオンブズメンバーで執筆した「号泣議員と議会改革~市民のための議会改革処方箋~」(出版社 エピック)に記載しています。

富山市議会は「市民のための改革」のチャンス

 以上の議会改革の取り組みなどが評価され、兵庫県議会は早稲田マニュフェスト研究所の2015年度議会改革度評価において、第1位を獲得しました。まだ課題は残っていますが、「あの号泣」が議会の改革に役立ったのは、間違いありません。

 富山市議会にとっても、政活費の問題が明らかになった今こそ、情報公開、市民参加制度など「市民のための改革」を進める最大のチャンスです。兵庫県議会からエールを送ります。

<兵庫県議会議員 丸尾牧>

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