全面禁煙の市庁舎で、なぜ議会喫煙室は廃止されないのか―井関貴史 堺市議
政治山 / 2016年10月18日 17時30分
政府は2020年東京五輪・パラリンピックまたは19年ラグビーワールドカップまでに実効性のある受動喫煙対策を実施する方針を示しており、2003年に施行された健康増進法では公共施設などの管理者に対策を義務付けています。大阪府堺市の市庁舎も屋内は全面禁煙となっていますが、一部には例外があるようです。受動喫煙対策に取り組む、大阪維新の会堺市議会議員団の井関貴史堺市議にご寄稿いただきました。
議会喫煙室の廃止は持ち越し
堺市役所では屋内全面禁煙が実施されているが、議会フロアのみに喫煙室が設置されている。議員専用というわけではなく、傍聴などで議会フロアを訪れる市民の皆さんも利用可能であるが、実際には大半は議員が利用している。
そこで、今年8月、我々大阪維新の会堺市議会議員団は、議会フロアにある喫煙室の廃止を提案した。結果から言うと今回の定例会では採決をせず、各会派に持ち帰り次回11月定例会で結論を得ることになった。
私は、2011(平成23)年の統一地方選挙で大阪維新の会から堺市議会に初当選させていただき、現在2期目、6年目の堺市議会議員である。以前は製造業の大手企業で会社員をしていたが、地方議会に足を踏み入れて以来、お金の使い方や組織の運営などの面で、なんとも釈然としないものを感じてきた。
5年余りの議員経験を経て、企業や一般社会での体験がそのまま行政や議会にあてはまるものではないことは理解ができたが、本会議や各委員会での質疑内容の充実に加えて、実はまだまだ旧態依然たる議会のあり方を改革し議会の運営に影響力を発揮しなければ何もできないとの思いも持つようになった。
本件の「議会喫煙室の廃止について」は、予算や条例を承認するなどの議会本来の権能とは異なり、議会の自律権に属すると考えられるものである。いわば議会の内部管理規定であり、議会審議そのものとは関連しないため、時代の趨勢に合わせて柔軟に改革すべきものであるが、古い議員を中心に抵抗が大きい。
議会喫煙室の廃止は時代の流れ
我々大阪維新の会堺市議会議員団が議会喫煙室の廃止を提案する理由は以下の3つである。
1つ目は、健康増進法の規定である。
第25条において、官公庁等における受動喫煙の防止措置を求めている。受動喫煙の防止措置には、建物内の禁煙措置以外の例えば分煙措置等も考えられるが、同法が認める国民の健康増進の重要性の増大や正しい知識の普及などの観点からは、もっとも厳格な建物内の禁煙措置が望ましいことは言うまでもない。
2つ目は、他の政令市等の状況である。
全国の政令指定都市20市のうち、議会棟または議会フロアにおける喫煙については、札幌、仙台、さいたま、川崎、相模原、新潟、静岡、堺、岡山、広島、福岡、熊本の12市が認めている。一方、千葉、横浜、浜松、名古屋、大阪、神戸、北九州の8市では認めていない。半数近くの政令市では、すでに議会喫煙室の廃止を行っている。
3つ目は、現在の堺市議会喫煙室に関する規定のされ方である。
これを直接規定する堺市議会の喫煙室に関する規定はなく、庁舎管理権限を有する市長が設置したものだが、議会が市長に申し入れた結果である。つまりは、議会フロアに属することは議会の内部管理権限を尊重するべきものであるから、議会の意向により、建物の管理権者の市長が設置したということである。ならばその廃止も議会の意思で可能であり、議会自らが声を上げなければならない。
議会運営委員会での提案と情勢
堺市議会において、大阪維新の会は第1党であるが、議会運営の主導権は握れていない。議会構成は、定数48名に対して、大阪維新の会13名、公明党11名、ソレイユ堺(民進、その他)8名、自由民主党7名、日本共産党6名、無所属2名、欠員1名である。また現市長は、大阪維新の会とは対立関係にある。
大阪維新の会と現市長との対立軸は、主に大阪の広域行政の一本化(大阪都構想、副首都構想)への賛否、及び旧来型のまちづくりや組織運営への評価である。堺市では、依然として旧来型の数十億円規模のハコモノ行政がいくつも続いており、また昨年以来、全有権者情報の流出事案をはじめとして、情報管理・組織管理の稚拙さが明らかになっている。
こうした議会情勢のなかで、大阪維新の会堺市議会議員団では、今年の3月頃から議会喫煙室の廃止に向けて取り組むことになった。
堺市議会では、政務活動費、委員間討議、議会報告会など様々な議会改革を話し合うための「議会力向上会議」という名称の会議体が開かれており、まずは同会議において議会喫煙室の廃止について取り組みたい旨の表明をしようとしたが、そのまま議会運営全般を話し合う議会運営委員会に諮られることになった。
議会運営委員会は、各会派が交渉をしながら議会の運営について決めていくところである。いわば、多数派を形成するための交渉の場でもある。賛否両論の意見が出され、各会派で持ち帰り検討することになり、結論は次回11月定例会まで持ち越されることになった。
なお、大阪維新の会堺市議会議員団でも、他の会派ほど多くはないが喫煙者の議員は少数おり、議会喫煙室の廃止の提案後は、喫煙する場合は議会喫煙室を使わず、職員の皆さんと同様に建物外の喫煙所へ行っている。
まずは身を切ることから~大阪維新の会の議会改革
最後に、大阪維新の会がこれまで実現に向けて取り組んできた議会改革のメニューをご紹介して、我々の目指す議会改革の方向性を感じ取ってもらいたい。
議員定数・報酬の削減
大阪維新の会堺市議会議員団は、議員報酬の2割削減条例などを提案してきたが、議会第1党とはいえ、市長野党で、主導権を確立できていない堺市議会では、成立させることはできなかった。まずは、議員や市長自らが身を切る改革をしていくことでしか、その後の行政機構や公務員制度の改革はできない。
議長の任期
議長の任期は法律上は4年と定められているが、多くの地方議会では議長ポストを多くの議員が一度は経験できるようにするため、より短い任期で代わる慣行が確立している。かつてと比べて、予算編成の方針など市政の根本方針が議会で議論されることも多くなり、市長や財政当局の通り一遍の説明を超えた真の判断理由をあぶりだしていくには、議長の熟練した議会運営が必要である。その意味では、大阪府議会ではすでに実現しているが、議長の任期は2年又は4年としていくべきである。
委員長手当の廃止
議長ポストと同様に、委員長ポストや副委員長ポストも、順送りで必ずしも会議体の議長としての適性や能力によらず、会派間の交渉で決まることが多い。堺市議会では、委員長手当が月2万円、副委員長手当てが月1万円支給されており、正副委員長ポストの順送り人事や必要性の高くない特別委員会の設置の一因となっていると思われるため、これを廃止したい。
議会事務局の改革(調査機能の充実、議長の人事権の確立)
日本の地方議会は、首長の予算や条例を承認することがほとんどで、議員自らが条例を提案することはほとんどない。少数の例がある場合でも、いわゆる市民派等の議員によるかなり先進的な取り組みが理念条例として成立する場合等が多く、議会における利害調整の結果として提出される条例案は非常に例が少ない。その一因は、議会事務局の調査機能(特に法制能力)をさらに強化する必要があること、また、議会事務局の人事について、人事権者が本来議長であるにも関わらず、市長部局がそれ以上の影響力を発揮することにある。
議会の論戦以上に、「何を議題とするか」が政治である。都合の悪い結論が予想される議題は、そもそも議論の遡上に乗せないことを図る。
堺市議会での議会喫煙室の廃止に関する大阪維新の会の取り組み事例はほんの小さな話題かもしれないが、これをご紹介することによって全国の地方議会の運営上の改革が進み、本来取り組むべき財政問題等、困難な判断が求められる案件にも指導力が発揮されることを望む。
<堺市議会議員 井関貴史>
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