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自死遺族の1人として自殺対策に取り組む、荻野稔 大田区議からの寄稿

政治山 / 2016年10月20日 11時50分

 昨年の自殺者数は2万4千人。その苦しみは本人だけでなく、家族や友人など親しい人にも大きな影響を及ぼします。自死遺族の1人として、また議員として自殺対策に取り組む荻野稔大田区議にご寄稿いただきました。

        ◇

 去る4月1日、自殺対策基本法が改正されました。自殺対策は基本法が制定されて10年。福祉においてはまだまだ新しい分野です。対策の必要性への認知、そして多くの方の尽力により、一時毎年3万人を上回っていた時期から、2万人台に年間の自殺者は減りました。しかし、忘れてはならないのは、自殺者は生き返るわけではなく、年間ベースで亡くなる方が減っても、累計での自殺者は増え続けているということです。そして、それは自死遺族、残された周囲の方々も増え続けていることも意味します。

 今回の自殺対策基本法では、今まで書かれていなかった自殺者の親族等の支援の在り方、自殺の恐れのある者への医療提供に関する施作、そして都道府県・市町村ごとの自殺対策計画の策定が追加されました。大田区の現状と今後について、私自身が議会で質疑をしたことと合わせ紹介します。

大田区の自殺者数の年次推移
大田区ホームページより

大田区の自殺対策計画策定について

 大田区は基本法改正に伴い、国の大綱、東京都の動向を注視しながら、自殺対策計画の策定に向けての準備を進めていますが、既に改正前の平成26年から関係機関との連携を強化し、地域の実情に応じた効果的な自殺対策総合計画を推進するための自殺総合対策協議会を設置、年1回開催しています。

 年1回なのでそれぞれの活動、近況報告、認識の共有に終始するに近しい内容になってしまっているとの話も聞きます。今後の計画策定に向けて、課題ごとの専門部会などの設置など協議会での対策、課題への取り組み・議論の充実、自死遺族、関係者との連携強化と共に、協議会で話された内容を公開、広く区民と共有することでより実情に即した大田区の自殺対策計画の策定を行うことができるようになります。

自殺未遂者支援について

 平成21~26年の累計で、大田区の自殺者は865人、そのうち自殺未遂の経験があったことが明らかな方は126人と約14%の方が、未遂経験をした後に自殺既遂となっています。自殺未遂者の治療、相談に直接あたっている精神科の先生からもお話を聞いてきましたが、自殺者は男性が多いのに比べ、未遂者は女性の方が多くいます。

 また、未遂者たちは致死性の比較的低いオーバードラッグ、過量服薬などの自殺企図を行う割合も高いことから、衝動的な自殺企図も多いと推測されます。加えて、適応障害、統合失調症、うつ、パーソナリティー障害といった精神面での疾患を抱えた方も多く見られることもあり、精神面の支援、精神疾患への対応を強化することによりハイリスクな自殺企図予備軍、また自殺未遂経験者を素早くキャッチし、支援に結びつけることができます。

 自殺未遂者が病院に搬送された際、また窓口に精神疾患とみられる方などから相談があった場合に、精神科をはじめとした必要な支援に繋げる連携強化をしていくべきです。

大田区の年齢階層別死因
大田区ホームページより

生活保護者の自殺リスクについて

 警察庁および厚生労働省の調査によれば、平成25年の生活保護受給中に自殺または自殺と推定された全国の死亡者は10万人に対する自殺率が全国の自殺者自殺率の倍以上になっております。これは生活保護受給者の中で、自殺の大きな要因と考えられている精神疾患を持つ方の割合が、平均よりも高いことが要因の一つと考えられています。

 さらに、大田区の例でいえば平成27年の全自殺者の約半数が無職であり、失業、倒産、負債等の経済的理由が自殺の大きな要因の一つでもあることからも生活保護受給者の自殺リスクは高いと考えられます。実際の数字の上でも大田区の自殺者中、生活保護受給者の割合は決して少ないとは言えませんでした。自殺対策において生活保護受給者への支援も重要な視点です。

自死遺族支援について

 平成21~26年の大田区の累計自殺者865人中、同居人がいた方は495人と約57%、半数以上の方が同居人を残したまま命を絶っています。同居人を失う悲しみは筆舌に尽くしがたいでしょう。

 大田区は基本法改正前から、自死遺族への支援として何ができるか調査をするために、身内を自殺で失った経験のある方も多く参加しているゲートキーパー研修参加者に対し、周囲に自殺者がいるかどうかや、自死遺族会の結成、参加の希望調査などのアンケートを実施してきました。

 しかしながら、具体的な支援の取り組みについては、東京都の作成するパンフレット配布や電話相談などの業務に留まっています。精神的な支援はもちろんとして、経済的な課題の解消、行政手続きなどの生活上の課題への支援、遺族会の早期結成など、遺族支援の早い段階での体制整備も必要とされています。

遺族の方向けのリーフレット
大切な人を突然亡くされた方へ(平成28年3月発行)(PDF:816KB)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/tokyokaigi/insatu.files/izokusien.pdf

 区全体の計画が策定されなければ支援をしてはならないということではありませんので、今後も早期の遺族支援充実を求めていきます。

 私自身、子どものころに同居している家族を自殺で失った自死遺族であることから、自死遺族支援も含めた自殺対策について当選以来取り組んで参りました。今後もその悲しみを知るものとして、様々な角度から提言を続けていきたいと思います。

<大田区議会議員 荻野稔>

        ◇

【相談窓口】

■こころといのちのほっとライン(東京都自殺相談ダイヤル)
電話 0570-087478
14:00~翌朝 5:30/年中無休
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/tokyokaigi/madoguti/

■東京自殺防止センター相談電話(NPO法人 国際ビフレンダーズ)
電話 03-5286-9090
20:00~翌朝 6:00/年中無休
上記以外の相談電話窓口
http://www.befrienders-jpn.org/

■いのち支える相談窓口一覧(自殺総合対策推進センター)
都道府県・政令指定都市の相談窓口一覧
http://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

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