23区で唯一の消滅可能性都市から持続発展都市へ-細川正博 豊島区議
政治山 / 2016年10月28日 17時30分
平成26(2014)年5月8日、豊島区へ激震が走りました。日本創生会議が全国で896の自治体(全体の49.8%)に消滅するおそれがあると指摘し、その中に豊島区が東京23区で唯一含まれていたためです。
区は直ちに「豊島区消滅可能性都市緊急対策本部」(本部長は高野之夫豊島区長)を立ち上げ、消滅可能性都市から持続発展都市へつなげるための対策を練りました。施策の柱となるのは「女性にやさしいまちづくり」「高齢化への対応」「地方との共生」「日本の推進力」の4点です。
「としまF1会議」から、女性目線に立った提案が事業化
「女性にやさしいまちづくり」では、「としまF1会議」から女性目線に立った多くの提案を頂き、効果的な事業が実現しております。
「としま鬼子母神プロジェクト」では、若年期・妊娠前からの切れ目のない子育て支援を展開していくための、健康・妊娠・出産・子育て等に関する総合的な取組みを進めており、妊娠前からの出産・子育て応援サイト「としま見る知るモバイル」の運用や、ゆりかご・としま事業(妊婦や産婦との面接、誕生御祝い品の配布と相談支援など)の展開などを行っています。
また、28年からは「女性にやさしいまちづくり担当課長」を公募により採用し、女性ニーズの掘り起こしや女性向け施策の情報発信を行っています。
私が28年6月の議会で提言して実現した「としまイクボス(※1)宣言」は、まさにこの分野の施策です。
9月29日に豊島区議会議場にて行われた「としまイクボス宣言」は、高野之夫区長以下101名の幹部職員全員や区内7大学、区が認定した「ワークライフバランス推進企業」などをはじめとする企業など産官学の総勢67団体によるもので、女性にやさしいまちづくり担当課長などが中心となって動いてくださいました。
女性の活躍のためには男性を含めた「働き方改革」が必要不可欠です。宣言をきっかけに生産性をあげて短い時間で効率よく仕事ができるように働き方を変えていく努力を促し、ワークライフバランスがとれる社会を構築する所存です。
28年9月29日、豊島区議会議場にて行われた「としまイクボス宣言」
また、「高齢化への対応」では、元気な高齢者が担い手として活躍する場の確保などの生きがいづくりの充実や、不足が見込まれる特別養護老人ホームの区外設置の検討などを進めています。
豊島区には一人暮らし高齢者や高齢者のみの世帯が多くいらっしゃるので、支援を必要とする高齢者を見守るための高齢者アウトリーチ事業や見守りと支えあいネットワーク事業などを積極的に推進しています。
※1 イクボスとは
NPO法人ファザーリング・ジャパンの定義では、
「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指します(対象は男性管理職に限らず、増えるであろう女性管理職も)。
地域の力を結集して、まちの魅力を発信
「地方との共生」では、地方の発展なしには豊島区も存在できないという観点から、交流都市との連携を通した相互発展に結びつく施策展開や、姉妹都市である秩父市との豊島区版CCRC構想の具体化の検討などを行っています。
また、区内7大学と連携を行い、地域活性化策の共有・研究を進め、独自の活性化策を推進しています。現在進んでいるのは、大正大学との自治体コンソーシアム(※2)参加自治体の交流研究活動などです。
さらに「日本の推進力」では「国際アート・カルチャー都市構想」を打ち出し、安全・安心な都市空間の中で誰もが多様な文化を享受しあい、世界中の人々を魅了する賑わいあふれるまちを目指しています。
都市構想の実現戦略には「文化戦略」「空間戦略」「国際戦略」があります。
前田三郎氏(株式会社キョードーファクトリー代表取締役)など11名のプロデューサーには都市構想策定についてアドバイスを頂き、近藤誠一氏(第20代文化庁長官)を会長とする懇話会には実現戦略策定にご尽力を頂きました。
「文化戦略」
豊島区駒込(旧染井村)発祥の「ソメイヨシノ」や雑司が谷未来遺産などの歴史・伝統の継承や、文化芸術の場の整備として新ホール・新区民センターの整備などを挙げています。
「空間戦略」
国家戦略特区活用によるオープンカフェやリノベーションまちづくりなどを推進し、人間優先の都市空間の構築を目指します。
「国際戦略」
世界へ向けた情報発信とインバウンドの受入れ態勢の整備などを行います。
消滅可能性都市から持続発展都市とするための4本柱の施策について説明を加えさせていただきました。
総花的に見えるかもしれませんが、人口減少問題へ対応するためには一点突破の施策では難しく、複合的な施策が必要になると考えます。
※2 自治体コンソーシアム
地方創生の方策を共同研究するため、大正大学の地域構想研究所を中心として自治体が参加して構成する組織
危機感を共有し、持続発展都市のモデルへ
最後に豊島区の将来人口の見通しについて触れさせて頂きます。
豊島区は人口密度日本一の超過密都市であり、全国屈指のターミナル駅である池袋、「おばあちゃんの原宿」として有名な巣鴨、などを擁しています。
また、人口に関しても17年からは毎年増加していますし、住民基本台帳のデータを基にした推計(豊島区人口ビジョン)では悲観的シナリオでも37年頃までは人口が増加する見通しとなっています。
(グラフ1)豊島区の人口の推移と各区の人口密度の推移
ややもすると人口減少問題への危機感に乏しい都心部において「消滅可能性都市」という衝撃的な指摘を受けたことは、「持続発展都市」へ豊島区をつなげるためにはどうしたらよいかを行政職員や議員、民間の方々などが真剣に考えるきっかけとなりました。
上記の通りご紹介した施策を推進することで、魅力ある都市であり続け、定住人口を確保し、一定のバランスのとれた年齢構成を維持することにつなげたいと考えております(グラフ2のパターンBが目指すべき将来人口です)。
(グラフ2)豊島区の将来人口
余談ですが、豊島区を「消滅可能性都市」と指摘した日本創生会議の座長は増田寛也氏でした。そして東京10区(豊島区と練馬区の一部)選出の当時の代議士は小池百合子氏です。奇しくもこのお二方は28年7月の東京都知事選挙で有力候補同士として対決をすることになりました。
これからも豊島区のことを知り尽くしている小池百合子東京都知事と連携をしながら、豊島区を「持続発展都市」にすべく尽力する所存です。
<豊島区議会議員 細川正博>
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