ドローン活用を含めた国家戦略特区、幕張新都心を近未来都市へ―田畑直子 千葉市議
政治山 / 2016年12月6日 17時30分
地方自治体は、すでに始まりつつある人口減少、少子超高齢化を踏まえ、若年層の人口流入や地域経済活性化を目指し、都市の魅力向上に向けた施策展開をしている。千葉市においても、千葉県内をけん引する都市として、都市ブランドの確立と価値向上に向け、他自治体とは異なる魅力のある街づくりを行う必要性が高まっていることから、国家戦略特区に申請し、今年1月に指定を受けた。
ドローンの実証実験
幕張新都心における国家戦略特区指定
国家戦略特区に指定された幕張新都心とは、オフィスビル、ホテル・ショッピング施設、学校・教育機関、集合住宅・海浜公園等の大規模施設を有した就業者約5万9千人、居住者約2万6千人、就学者約1万1千人、年間来街者約4820万人が活動する『「職・住・学・遊」が融合した未来型の国際都市』をコンセプトとする千葉市三大都心の一つであり、新都心内にある幕張メッセでは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの7競技が開催される。ほかにも、新たに大型商業施設の開店や大規模イベントの開催、観光庁のグローバルMICE(*)都市に決定するなど、近年でも発展が目覚ましく、千葉市の発展のために、これからも新たな価値を創造し続けていくことが期待される街だ。
千葉市は、国家戦略特区により「近未来技術実証・多文化都市」を実現したいとしている。
*編集部注:企業・団体等の会議(Meeting)、研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、イベント(Exhibition/Event)の頭文字)
無人飛行機(ドローン)を活用した事業
千葉市が提案した6事業の中で最も期待されているのが、無人飛行機(ドローン)による宅配サービスの実施だ。幕張新都心住宅地区では、最後の開発として約4500戸の大規模開発が予定されており、住宅開発と並行して、事業の準備が進められている。物品を積んだドローンが東京湾臨海部の物流倉庫(アマゾン、楽天、佐川急便等と協力)から、海上や河川の上空を飛行して幕張新都心内の集積所に着陸し、そこから住宅地区の高層マンション各戸へ宅配するサービスの実施を目指している。
本年4月には、千葉市のほか、内閣府や市内のドローンを研究するベンチャー企業が参加し、ドローンによる物資輸送のデモンストレーションが都市部として初めて行われた。
さらに11月には、楽天・NTTドコモなどの大手企業がサービス実用化を想定した実証実験を成功させた。実験の内容は、熊谷俊人千葉市長がスマホのアプリで商品を注文、東京にある楽天本社で注文を受け、ドローン配達の指示を出す。指示を受けたドローンがLTEのネットワークを経由し、千葉市の海上を飛行、市内の海浜公園に配達するというものだ。
ドローンの実証実験に参加した熊谷俊人千葉市長
宅配品目の中には医薬品も検討されており、TV電話等を通じ、薬剤師による服薬指導を実施し、医薬品のネット販売を可能とする規制緩和も行う。さらに、ドローンを活用して不審者・侵入者に対するセキュリティーサービスを行う。実際の運用は、国内外観光客にアピールするため、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を目標としている。
ドローンは、市民にとって、まだ十分な理解と利用の普及には至っていない新しい技術だが、千葉市では、4月に専門国際ドローン展が開催されたほか、消防局では、総務省から無償貸与されたドローンによって、災害時に現場の撮影や有毒ガスの検知等を行うための訓練が始まっている。自治体の新たな資源としてドローンを積極的に活用する姿勢だ。
関連事業を合わせて展開し、更なる経済活性化・魅力向上を目指す
特区では、ドローン宅配の提案以外にも、ロボットタクシーの無人運行やパーソナルモビリティ(小型電動コンセプトカー・・電動車いす・移動支援ロボットセグウェイ等)のシェアリングサービスの実証実験が提案されており、先進技術による未来都市のイメージを打ち出す。
そして、ドローン産業の一大集積地となるよう、市内企業立地促進事業補助制度の補助対象業種にドローン関連産業・MICE関連産業を追加し、補助要件の緩和や補助内容の拡充を行い、幕張新都心のビジネス地区にも経済効果を波及させる考えだ。
千葉市は、国家戦略特区の効果として
・先端技術を集約した取り組みであり、日本の産業競争力の強化などに大きく貢献する。
・世界に向けて日本の先端技術を活用した未来都市をアピールする。
・オリンピックレガシーの創出や国際競争力の強化とともに、これら近未来技術を活用した取組みにより、すべての人がストレスフリーな生活を享受できる「ユニバーサル未来社会」の実現に資する。としている。
議会として、どのように評価していくか?
このような先進的な技術を活用しての事業は、今までの行政であれば、リスクを避け、取り組むことに躊躇しただろう。地方都市活性化の打開策がない中で、特区の指定を受け、民間企業と連携し、新たな価値を創出しようとする果敢な姿勢は評価したい。
このドローンによる宅配サービスは、街が完成されている都市部では同様の事業展開が難しいことから、一から住宅街を作るという千葉市のチャンスを大きく活かしたといえる。
今後、この住宅地区は10年程度かけ、販売していくと聞いているが、このようなサービス実施をうたうことで、付加価値を高め、若年層の人口流入にも大きく寄与するだろう。
しかし、市民生活を守る立場として、今後の事業費が適正な予算措置であるか、予算規模の妥当性を見極めたうえで、事業を円滑に進め、成果が出るよう検証していかなければならない。前例のない先進的な取り組みであることから、多少の試行錯誤は致し方ないと考えるが、事業をブラッシュアップしていき、しっかりと事業の継続性・定着を担保させることが重要だ。
課題として、ドローンの安全性やプライバシー保護の確保・騒音など、環境面の対策、また飛行中の制約から、監視員の配置や漁協等の関係機関との調整が必要と言われている。
この課題をしっかりとクリアにすることが、市民の理解につながるだろう。
また、幕張新都心を今まで築きあげてきた企業・団体・地域住民に理解・協力を得て、巻き込み、ともに作り上げていくことが重要だ。話題性のある大きな取り組みほど、一番重要な存在である市民や地域が取り残されていることが多い。幕張新都心を市内外で盛り上げていくためには、彼らの存在は必要不可欠であると日々、市民の方と向き合っている地方議員の立場として申し上げておきたい。
そして、幕張新都心の魅力・認知度向上による経済効果を市域・県域に波及するよう取り組む必要もあると考える。今回、幕張新都心にスポットが当たっているが、千葉市では、6区ある行政区それぞれで、海辺・緑・農園・中心市街地・歴史・遺跡など、今まで活かされていなかった資源を活用して、独自性と魅力向上に向け施策を打ち出している。その背景があるからこそ、幕張新都心は「近未来都市」としての存在がより一層際立つのだ。このようなことから幕張新都心が一つの拠点となり、市域・県域に影響を与えてほしいと考えている。
幕張新都心は4年後に、東京とともにオリンピック・パラリンピックが開催され、多くの観光客が訪れる「日本」「東京オリンピック・パラリンピック」の顔になる都市の一つであることから、国内外にどう「千葉」を打ち出すか、千葉市の挑戦を議会からもしっかりと提言し、オリンピック・パラリンピック後も魅力ある街として持続できるよう長期的な視点を持ち、評価していきたい。
<千葉市議会議員 田畑直子>
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