マンガを作る事が違法なのではない。マンガと政務活動費―荻野稔 大田区議

政治山 / 2016年12月27日 11時50分

先月、静岡市議会の市議団が、政務活動費で制作したマンガを後援者らに無償で配布していたことが報じられました。報道では公選法に抵触する恐れがあるという指摘でしたが何が問題だったのでしょうか。オタク議員として普段からマンガを使った議会報告をしている荻野稔大田区議に、政務活動費とマンガについてご寄稿いただきました。

        ◇

「静岡市議会の自民党市議団(20人)が政務活動費で地元の偉人のPR漫画を約3万冊作り、後援者らに無償で配っていたことがわかった。費用は1200万円を超える。政活費は議員が自治体の仕事を調査研究するための費用で、識者からは趣旨を逸脱しているとの指摘が出ている。有権者への寄付を禁じた公職選挙法に抵触する可能性も指摘されている。」

引用元:政活費1200万円で漫画3万冊制作 静岡・自民市議団(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASJCL4H8KJCLUTPB008.html

 先日、このような報道が出たことを皆様はご存知でしょうか? 見出しを読まれると、誤解をしてしまうかもしれませんが、政務活動費を使ってマンガを作る事そのものが公職選挙法に抵触するというわけではありません。

 普段からマンガを作成し、HPで公開、区政報告の形で配布し、区内にマンガの議会報告を掲示。コミックマーケットで議員マンガ本を頒布している「自称大田区のオタク議員」として私なりに解説と意見を書かせていただきます。

1.政務活動費の法的根拠とマンガ作成の有無

 ここ最近、話題に上がる地方議員の政務活動費問題。そもそも「政務活動費」とは何なのか?

 根拠となる地方自治法第100条第14項にはこう書いてあります。

「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究、その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することが出来る。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない」

 他の自治体も近似していると思いますが、細かい規定などは、例で定められており、例えば大田区議会では「大田区議会における政務活動費の交付に関する条例」があり、その中で政務活動費を充てる事ことができる経費の範囲の中に「広報費」という項目があります。

 この広報費についての説明は「会派が行う活動、区政について住民に報告するために要する経費」とあります。マンガやイラストではダメといった事は記されていません。

2.静岡市の例の何が問題か?

 話を静岡市の件に戻しましょう。静岡市の「静岡市議会政務活動費の交付に関する条例」の中に、交付の範囲として「広報広聴費」があり、その説明として「1第7条(*1)の政務活動及び市政について住民に報告するために要する経費」とあります。大田区同様、条例の中にはマンガではダメとの規定はないのです。

(*1)第7条 政務活動費は、政務活動(会派又は会派に所属する議員が行う調査研究、研修、広報及び広聴、要請及び陳情、各種会議への参加等市政の課題及び市民の意思を把握し市政に反映させる活動その他住民の福祉の増進を図るために必要な活動をいう。)のために要する経費で、別表に定めるものに充てることができる。

 交付の対象の範囲であればマンガ作成、またマンガの印刷に政務活動費に充てる事に問題はない。それではなぜ、報道のような疑惑が発生したのでしょうか?

 引用させていただいた記事にはこのような続きがあります。

全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長は「議員の役割は市の仕事をチェックすること。漫画は僧侶の紹介にとどまり、郷土史の研究でしかない。根本的に政活費の趣旨を理解していない」と指摘。「明らかに目的外支出で速やかに返還すべきだ」と話す。

 今回の問題は2つです。内容が政務活動費を充当するに値する、市議会活動や市政を住民に報告する物ではないのではないか?(*2)ということ。そして、これが市政報告に当たらないとされた場合、今度は(マンガかどうかは関係なく)資料、本として付加価値のある冊子を「無償で選挙区の有権者に配布した事」が公職選挙法で禁止されている寄付行為にあたるのではないか、との2つの疑惑をもたれていることになります。

 マンガかどうかは、正直あまり関係ありません。

(*2)例えば私は大田区議会内での自分の発言や質問、議会の動きをマンガにして作成、配布をしております。こちらは区制報告という形であり、政務活動に該当します。

荻野議員の区議会レポート
荻野議員の区議会レポート

3.このスピード線は都政に関係ない?マンガで議会報告は道半ば

 マンガのことでなぜ熱くなっているのか?と思う方もいるかもしれませんが、実は私は区議会議員に当選する前、約5年の間、議員秘書をしており、党派を超えて10人以上のマンガを作成させていただきました。

 その中では現職議員の政務活動費を充てたマンガを作成することもあり、各議会事務局の方ともやり取りをさせていただいたのですが、まだまだ「マンガで議会報告」に対する理解は遠いと感じていました。

 下は、かつて私が制作させていただいたマンガです。このコマ(実際には目線はなく、セリフも入っていますが)のどこが問題でしょうか?

過去に議会事務局から問題を指摘されたマンガ
過去に議会事務局から問題を指摘されたマンガ

 このコマの赤と黒のスピード線、こちらに「このスピード線は都政に関係ないのではないか?」と物言いがついたのです。その分、このスピード線の部分は政務活動費を充てずに作成し、チラシなどに印刷するならその印刷費からも面積分を引け…という事です。

 他にも「このモブ(*3)は都政に関係ない」「顔のアップは2回まで」とマンガに慣れ親しんできた世代としては驚きの連続でした。

(*3)モブとは群衆などを意味する英語。漫画では群衆状態になったキャラクターを「モブキャラクター」と呼ぶ。

 「荻野さんのせいで、マンガの政務活動費支出について新ルールを作った」と嘘か誠か判らないようなことも言われましたが、このようなマンガを政務活動に使っていく事への理解の遅さが結果的に議員がマンガを使うことの珍しさと相まってマンガが強調されるような報道となってしまったのかもしれません。

4.住民に分かりやすい方法で情報を伝えていく点でマンガはとても重要!

 前述の通り、私は議会報告などにマンガを作成し、配布、掲示をしています。中には「議員が漫画なんて…」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、好意的な反応も多くいただきます。

 議員は、代表として議会に送り出されているので、その議会での動きや活動をただ報告するだけでなく、判り易くすることも必要ではないかと認識しています。

 私自身も、マンガの作成を引き続き行っていくとともに、マンガでの議会報告の有用性、楽しさを、議員、地域の皆様に伝えていきたいと考えています。

<大田区議会議員 荻野稔>

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