チルドレン・ファースト!なぜ子どもたちへの投資が必要なのか(前編)
政治山 / 2017年2月1日 11時50分
なぜ子供たちの貧困問題対策が必要なのか。
現在、子どもの貧困は、6人に1人が貧困状態という過去最高の値を更新しました。学校の上履きを買えない子どもたちがいて、給食でしか栄養が取れないような子どもたちがいます。
都市部に住んでいると理解しにくいかもしれませんが、地方によっては非常に厳しい現状の地域があります。例えば沖縄県では、3人に1人が貧困状態です。これは昭和の時代のドラマの話ではないのです。平成29年の現在、目の前で起こっている現実として、自分たちがそれを理解できているのか、という問題です。
元神奈川県議会議員の中谷一馬氏。現在は民進党神奈川県第7区総支部長として活動中
そして、今の政治・行政は貧困問題に対して根本的に解決をするというよりも、見えないように蓋を閉めるのが得意です。
よく言われるのは、魚が欲しい子に魚を与えても仕方がない。魚の採り方を教えなければ意味がないということです。魚の採り方を教えるよりも、その場で魚を与えたほうが楽かもしれません。問題がなくなっているように見えるかもしれません。しかし、実際は何も解決はしていないのです。
ひとり親家庭のお父さん・お母さんが働きながら子育てをできるようにするにはどうすればいいか、働くのが困難な人たちはどうすればそれを乗り越えられるのか。子どもの立場で言えば、学校に行きたくても行けない子どもたちが、どうすれば学校へ行けるようになるか、勉強をできるようになるのか。この問題を社会が真剣に考えず、放置すれば、自分たちの将来に必ず歪みが出てくるということを理解しなければなりません。
子どもの貧困の問題は親の責任?国の責任?
子どもの貧困問題は、親の貧困問題と直結します。親が貧困状態のため、子どもも貧困状態になります。
親の経済的貧困が教育格差を産み、子どもが低学力・低学歴になった結果、就労状況が不安定となり、その子どもが親になった時にまた経済的貧困に陥るという「貧困の世代間連鎖」が起こる状況は、データが証明しています。
大阪府堺市の調査によると、市内の生活保護世帯のうち、過去に生活保護世帯で育った経験があるのは25.1%で、母子世帯では、その割合は40.6%に上ります。
親も生活保護でギリギリの生活をしているから、子どもに充実した教育を受けられる環境を与えることが出来ない。行政も人と知恵が不足し、現金給付がメインとなる。表面上はこれで解決するので、結果として自立をサポートするための支援が弱くなります。
そして教育をまともに受けることのできなかった子どもが自立できなくなり、また生活保護を受給する。こんな連鎖の続く国は、必ず弱くなります。
一部のエリートだけが強くなっても意味がありません。中間層がどんどんいなくなってしまって、それが貧困層にシフトしてしまっています。そして、その状況の方がはるかにソーシャルコストはかかることに国家は気づかなければいけません。
子どもの貧困問題を解決することは、その子どもの将来にとってももちろん必要なことです。しかし、それは巡り巡って、日本の将来にも関わってくる大きな問題です。
経済的な意味合いでも「子どもへの投資効果」というのは非常に高く、逆に子どもへ投資をしないことによる損失は計り知れません。子どもの貧困を放置することにより、総額で約40兆円の社会的損失が出るという推計があります。未来を担う子どもたちへの支援の拡充は、社会的にも、倫理的にも、経済的にも必要不可欠です。
私自身、貧困世帯に育った子どもの一人として、この問題に関しては使命感を持って取り組んで行きたいと思います。
私が政治家を目指した原点は、自身が経験した「子どもの貧困」
そもそも、私が子どもの貧困問題に取り組んでいるのは、私自身が生活保護受給のひとり親世帯で育ったためです。小学生の時、父の暴力がもとで、両親が離婚。母は、健康に問題を抱えながら、私を含め3人の子どもを育てることになりました。
こうした母をみて育ったことから、女性のひとり親が、経済的に自立し、子どもを育てていくことの難しさは、身に染みて理解できるところです。
そして幼少期の私がもっとも痛感したのは、子ども自身の力や、努力だけでは、貧困から抜け出すことはできないという現実でした。かつての私には、働きに出て母を助けることもできなければ、父の暴力を止める力もありませんでした。
子ども自身にできることは、とても限られています。子ども一人ひとりが自分の努力では乗り越えられない壁を突破する力は、やはり社会が補わなければなりません。
たとえば、私たち家族が幸運だったのが、存命であった祖母の存在です。働く母に代わり祖母が子育てを引き受けてくれたおかげで、兄妹3人何とか大きくなることができましたが、こうした子育ての「セーフティネット」が家族の中になかったら、果たして今どうなっていたかわかりません。
私は、そうした、厳しい経済環境で育った事から、経済的な自立に焦り、地元の中学校を出てそのまま高校には進学せず、芸能プロダクションに所属するなど、社会に出ました。しかし、社会人として未熟であった私は、せっかくいただいたチャンスを無駄にするなど挫折。鬱屈した日々を送る中、いつしか当時流行していた「ヤンキー」「チーマー」と言われていた若者となりました。
神奈川県議会で発言する中谷氏
「貧困ヤンキー」を生み出す社会
皆さんは、「貧困ヤンキー」という言葉をご存知でしょうか。これは、「貧困」が原因で、社会のレールをそれてしまった若者を指す言葉です。
「ヤンキー」というと、“不良”であるとか、“暴力的”といった印象を持たれることが多いと思います。確かに一面でその通りではあるのですが、一方、貧困ヤンキーのリーダー格だった私が内側から見た限りでは、そこに集っていたのは、多くが「子どもの貧困」という共通項をもち、自分の力では解決できない様な生活の悩みや課題をもった若者たちばかりでした。
つまり、それぞれが「貧困」に起因する、様々なディスアドバンテージ(「勉強ができない」「両親や友人との関係がしっかり保持できない」等)をもち、それゆえにうける社会的な圧力を、徒党を組むことではじき返したい考える、そうした「子ども」たちの集まりでした。
「ヤンキー」というのは、別の視点から見ればある意味で弱者の集団です。
しかし、その中から暴力に頼る生き方を選ぶ若者、社会的にドロップアウトする若者が出てきます。私が政治家を志した背景には、こうした経済的な理由で、図らずも道をそれていく子ども・若い世代を、政治の力で何とかしたいという気持ちが根底にあります。
(後編へつづく)
<元神奈川県議会議員 中谷一馬>
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