性別にとらわれない、多様な生き方が可能な社会へ
政治山 / 2017年4月28日 11時50分
性別にとらわれない多様な生き方へ変化の兆し
「女性活躍推進法」施行から1年。国、地方公共団体、そして大企業は、女性の採用比率や継続勤務年数の男女差、労働時間の状況、女性管理職比率等の状況把握・分析を踏まえ、数値目標や取組内容等を盛り込んだ「事業主行動計画」を続々と公表しました。
その後、現場ではどのように計画が実行されているのでしょうか?国や地方公共団体は取組の実施状況の公表が義務とされていますが、大企業は定めがなく、取組実施や目標達成についても努力義務となっているため、実際の進捗を外部から知ることは難しい状況です。
さらに、日本の企業の9割を占めると言われる中小企業は、「事業主行動計画の策定」ですら努力義務となっており、日本社会全体としての「法律による女性を取り巻く環境の変化」が肌感覚として全くわからない状況です。しかし、社会には少しずつ、「性別の固定観念にとらわれない多様な生き方を求める」変化の兆しが見えているのです。
出典:“Kyodo-Sankaku” Number 82 September 2015 Japan Cabinet Office 9 内閣府 P.4 特集1/「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立しました
「男性の生きづらさ」に注目が集まっている
その変化の兆しとして、社会が「男性の生きづらさ」に注目し始めたことが挙げられます。「男は正社員で定年退職まで働くのが当たり前」「家族を養い守るのは男の責任」「男は弱音を吐いてはいけない」といった固定観念に男性も「生きづらさ」を感じていることがわかってきました。「男性学」の登場により、表面化したのです。「男性学」とは、「女性学」から派生して出来た学問で、男性が男性であるがゆえに抱える悩みに目を向ける学問で、最近メディアに頻繁に取り上げられています。
男性学を専門とする田中俊之さんの『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社+α新書)によると、男性学の役割は、「これまであまり注目されてこなかった男性特有の悩みや葛藤の輪郭を明確にし、解決の糸口を見つけ出すこと」。これほど社会で男性学の需要が高まっているということは、男性はもちろん女性も「性別の固定観念にとらわれない多様な生き方をしたい」と願う意識の現れなのではないでしょうか?
妻の扶養に入っている夫は11万人
実際に性別の固定観念にとらわれない生き方をしている方もたくさんいます。
白河桃子さんの『専業主夫になりたい男たち』(ポプラ社新書)によると、日本には妻の扶養に入っている夫が11万人もいるのだそうです。裏を返すと、11万人の妻が一家の大黒柱となって働いているのです。年収が130万円未満であれば、配偶者の扶養に入ることができるため、11万人の夫が全て専業主夫である可能性は低いと思いますが、大変興味をひく数字です。
出典:厚生労働省年金局 平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 表1 男女別公的年金被保険者数
また、今年3月に厚生労働省が発表した平成27年度の男女別第3号被保険者を見ると、妻の扶養に入っている夫は11万人、夫の扶養に入っている妻は904万人ですが、平成23年度から27年度までの5年間の推移を見ると、妻の扶養に入っている夫は11万人と固定されているのに対し、夫の扶養に入っている妻の数字は年々10万人単位で減少し、妻が夫の扶養から外れていることがわかります。この数字の動きは、男女の働き方の変化を表しているといえるのではないでしょうか?
出典:厚生労働省年金局 平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 表15 国民年金被保険者数の推移
男性の生き方の選択肢を増やす、秘密結社「主夫の友」
前出の白河桃子さんの著書から「女性管理職を3割増やすなら、男性の3割を主夫にしよう」と主夫が集い、活動している「秘密結社 主夫の友」の存在を知りました。CEOは東大卒の兼業主夫で、「病気」や「妻の転勤」「介護」「圧倒的な年収差」など、様々な理由で主夫になった男性が活動をしているとのこと。
「秘密結社 主夫の友」のホームぺージ(http://主夫.com/)を見ると、本当の目的は、「主夫を増やす」ことではなく、「選択肢を増やす」ことで、「夫婦どちらかが負担を抱え込むのではなく、状況に応じて、柔軟に生きられる社会を目指している」とあります。実際に「性別役割の固定観念」から離れた男性が固定観念を払拭していこうと声を上げたのは、法律に勝るものです。これは新しい社会への大きな一歩なのです。
「秘密結社 主夫の友」のホームぺージ
男VS女ではない、多様化社会へ
男性と女性はコインの表裏と同じで、それぞれに抱えている「生きづらさ」は性による二分化がもたらした社会構造から来ています。それゆえ、性別が入れ替わるだけでは、それぞれの「生きづらさ」は解決しません。だからこそ、この問題を女性だけ、あるいは男性だけで考えるのではなく、共に考え、性別にとらわれない多様性のある生き方について、対話を重ねていく必要があるのではないでしょうか。
<田中志保 /Single Parent 101代表>
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