政策比較表を読み解く―都議会議員選挙で議会改革は進むのか
政治山 / 2017年6月28日 12時10分
今回の都議会議員選挙の争点のひとつとして、都議会においても議会改革を断行するのか否かという点を挙げることができる。全国の地方議会で議会改革が推進されている中で、東京都議会ではその取り組みが大変遅れた状況にあり、今回の選挙では重点政策や公約の中で議会改革に言及する党派も見られた。具体的には、重点政策・公約比較表に「議会改革」の項目があり、以下では、いくつか注目した点について述べたい。
政治山「都議選2017:重点政策・公約比較表」のスクリーンショット
自民以外の党派が「議会改革」に言及
まず、議会改革に直接言及したのが公明党・共産党・民進党・都民ファーストの会・生活者ネットワークである。そのほか、東京維新の会と社民党も議会のあり方に間接的に言及している。対して、東京都議会で最大の議席数を持つ自民党は、議会改革に直接言及していないため、その姿勢は不明確である。なお、比較表への掲載は一定のルールに従っており、議会改革の項目について手厚く言及している党派と簡単に触れるに留まる党派との間で、比較表の上では大きな差が見られないようになっている。
特に注目すべきは、全国の地方議会で制定が進み、すでに800を超える議会で制定されているとされる議会基本条例に対する姿勢である。議会基本条例は、2006年に北海道栗山町議会が制定し、その後に全国で制定が広まったものであるが、議会や議員の役割、議会と首長の関係、議会と住民の関係などを定める条文からなる条例である。東京都議会では議会基本条例が未制定である一方、既に隣の神奈川県議会は制定済である。都内の自治体でも荒川区や板橋区、八王子市や立川市が制定済であり、もはや議会基本条例は地方議会の標準装備となりつつあると言っていい。この議会基本条例の制定に直接言及したのが民進党である。また、都民ファーストの会も「議会改革条例」の制定を挙げており、議会の改革を推進するために条例を制定しようという姿勢がうかがえる。
もちろん、議会基本条例は制定すればそれでいい、というわけではない。むしろ、実際の取り組みが重要となる。最初に制定した栗山町議会は条例制定にあたって情報公開と住民参加を拡充することを目的として掲げているが、実際に議会基本条例制定前から様々な取り組みを行っていた。その具体的な取り組みを制度化するために条例を定めたとも言える。
情報公開に積極的な公明、民進
情報公開については、小池都知事も再三にわたって主張している点であり、議会としてもそれを推進していくことになると思われるが、その具体策として公明党と民進党は「委員会のインターネット中継」の実現を掲げている。この委員会のインターネット中継も全国の議会で既に取り組みが広がっている。ようやく東京都議会でもそのような取り組みへ向けた機運が高まりつつあると言える。
公明党と民進党は通年議会の実現を掲げている点でも共通している。地方議会は概ね3・6・9・12月に開催されている。これを通年での開催にしようというのである。実際には、常に開会している状態にしつつ、適宜休むということをすることになる。これは、その都度に招集手続を取らず、必要なときに機動的に議会を開催できるようにするための措置である。地方自治法上、通年議会を選択すれば実施可能であり、それを選択しようというのである。
その他、公明党は「都が策定する総合(長期)計画を議会の議決事項に」としている。自治体は総合計画を策定し、それに基づき活動する。この総合計画について、議会の議決を必要とすることにしようというのが公明党の主張である。2011年の地方自治法の改正で、市町村に課されていた総合計画の起点となる基本構想の策定義務が削除されたことにともない、市町村ではその対応策として総合計画の策定を議会の議決事項とする条例の制定を進めている。総合計画を議会の議決事項とすることも全国で広がっており、それ自体は特別なことではないわけだが、東京都議会でもそのような動きが出てきたということである。
東京都庁
二元代表制の一翼として提案・監視する議会に
都民ファーストの会と東京維新の会は議員特権の廃止を主張している。都議会議員は全国の中でも厚遇で知られている。まずは、その特権を廃止しようというのである。議員の待遇を変えることが直ちに議会改革につながるとは思えないが、議会や議員の役割を改めて明確化するという意味では、特権とされる点について再考するのはひとつの方法だろう。
知事に対して議会はどのような立場で相対していくのか。議会改革という言葉を使うかどうかは別として、今回の都議会議員選挙は、議会としての機能を強化し、二元代表制の一翼として首長に対して提案や監視を行っていく議会への転換を図る第一歩になるのではないだろうか。
<東京工業大学環境・社会理工学院研究員/東京大学大学院情報学環客員研究員 本田正美>
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