衆院選、ソロモンと南スーダンの投票期間は2日間―在外投票の実態とは
政治山 / 2017年10月15日 11時30分
海外に暮らす日本人は、在外選挙制度を用いて国政選挙に投票することができます。在外投票ができるのは、日本国籍を有する18歳以上の有権者で、在外選挙人名簿に登録され、在外選挙人証を持っている人に限られます。
外務省ホームページより
100万人のうち選挙人登録するのは10万人
この在外選挙人名簿への登録は本人が申請する必要があり、手続きの煩雑さから大半の人が登録していません。外務省の発表によると、2016年10月1日時点で海外に在留する邦人総数は133万8,477人で、前年より2万1,399人(約1.6%)増加し過去最多を更新したとのことですが、今回の衆院選に投票することのできる登録者数はわずか10万405人となっています。
在外邦人の実質投票率は3%以下
ここ数年の国政選挙を見ても、100万人を超す18歳以上の有権者(2016年の参院選前までは20歳以上)のうち10人に1人程度しか登録しない状況は続いており、さらには登録した人の投票数も決して多くないため、実質的な投票率は3%以下にとどまっています。つまり、当日有権者数に対する投票者数の比率として公式に発表される投票率=名目投票率の10分の1程度が、実質的な投票率であるということができます。
○2014年12月衆院選
選挙人名簿登録者数…10万4320人
投票者数…1万9256人
名目投票率…18.45%
○2016年7月参院選
選挙人名簿登録者数…10万5194人
投票者数…2万3361人
名目投票率…22.20%
○2017年10月衆院選
選挙人名簿登録者数…10万405人
233の在外公館で投票受付
在外投票には、(1)在外公館投票、(2)郵便等投票、(3)日本国内における投票、といった3つの方法があり、今回の衆院選では233の在外公館で投票を受け付けています。期間は10月11日からで、締め切りは国や地域によって異なりますが、時間は9時半から17時までと定められています(一部例外あり)。
投票用紙は外務省職員が持ち運ぶ?
在外公館での投票には、(1)在外選挙人証、(2)旅券等の身分証明書、の持参が必要で、投票用紙は拠点ごとに集約して職員が外務省に搬送し、その後各選管に郵送されます。到着を22日の開票日に間に合わせるため、そこから逆算して在外邦人の投票期間は極めて短く設定されています。
ソロモンと南スーダンの投票期間は2日間
もっとも短いのはソロモンと南スーダンの大使館で、投票期間は10月11日から12日の2日間となっています。ほかの多くの国では14日または15日まで、最長で16日までの6日間となっています。
外務省在外選挙室によると、投票期間が短く郵送等の事情も異なるため、国内の選挙で用いられる投票所入場券の送付による投票案内は行われておらず、各大使館ごとにホームページで周知したり、メールアドレスを取得していればメールで案内したりしているとのことです。
「選挙の実施が決まってから申請しても間に合わない」
今年度からカンボジアに赴任している会社員のTさんは、「海外駐在してから初の国政選挙でしたが、在外選挙人証を持っていないと投票できないことを知らず、また選挙が決まってから申請しても当該選挙に投票することができないことを今回初めて知りました」と言い、自ら選挙人登録の手続きが必要なことが周知されていない様子がうかがえました。また、「海外では投票場所・投票期間も限られているので、普段から政治に興味・関心を持っている人でないと、なかなか投票所まで足を運ばないだろう」とも。
在カンボジア日本国大使館では、大使館のメールマガジンに登録している邦人に選挙の案内を送っています。投票方法が丁寧に書かれているものの、そもそも手続きに時間がかかるため、Tさんのようなケースは投票には間に合いません。手続きの簡素化や投票方法など、制度の見直しが求められます。
投票機会の均等のためにインターネット投票を
現行制度下では最大限の投票環境向上が図られていますが、在外邦人の投票機会は大きく損なわれているのが実情です。政府は2020年以降、在外邦人の投票をインターネットで行うべく検討を進めていますが、当事者である在外邦人からも改善を求める声が上がっています。
<政治山 市ノ澤 充>
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