地方議会はおもしろくなくてよい!?「6時の公共」みんなの学習会
政治山 / 1970年1月1日 9時0分
先月2日金曜夜、千葉市内にてNPO法人6時の公共が11月期の定例学習会として開催した「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション」。地方の民主主義のサイクルを回していくために不可欠な「地方議会」について、地方議会議員や議会事務局職員をパネリストとして迎え、市民や学生、ビジネスマンなど、多様な参加者と一緒に、そのリアルに迫りました。
※千葉県界隈の地方公務員等が中心となり設立したNPO法人「6時の公共」設立趣旨や本パネルディスカッションの開催趣旨についてのコラム(2018年11月1日)はこちら。
地方議会のリアルを垣間見てパネリストも参加者もハラハラするような「際どい」質問が次から次へと繰り広げられた2時間弱。「議会に興味を持ったこともなかったのですべて新鮮!」「議員の生の声を聞けるナイスな企画!」という市民の声から「質問の作り方が多様!質問を受ける側としても役に立った」という行政マンの感想まで。
「県議会」と「市議会」の立場が異なる議員や、議会運営をサポートする「議会事務局」職員から直接お話を伺うことで、議会質問の意義や作り込み方、よい答弁を引き出す質問の仕方、議場の「外」の舞台裏での幹部行政マンとの駆け引きなど…、参加者は地方議会のリアルを垣間見て普段知ることができない世界を感じ取っていただいたようです。来春の統一地方選を前に「会派など議員の立ち位置を考える参考になった」という政治家志望の参加者もありました。
議会質問の「表舞台」、そこに至るまでの「舞台裏」今月(12月)は、全国各地で地方議会が今まさに開会シーズンを迎えています。議員は、「議会質問」という形で、自治体の仕事の内容や進め方に対する改善提案や新たな方策の提案などを問いかけ、首長や幹部行政マンが答弁するという議会審議が進められています。
6時の公共は「議会質問は一体どういう着眼点や過程を経て作り込まれているのか」という素朴な質問を投げかけました。市民としては、地域の課題が議会でどう取り上げられているのか気になるでしょうし、若手の行政マンにとっても、議会前後で日々の仕事に影響を受けることになるはずだからです。議員にとってはある意味「舞台裏」の手の内を明かすことになる質問でしたが、登壇者議員は「ぶっちゃけトーク」の意図を汲み、つまびらかに解説してくれました。
まず、議員により方法や比重は様々であるものの、業界団体や組合などの意見・要望や、「この制度や仕組みはおかしいよね」という市民の声などを集める、まさに「足でかせぐ」手法は欠かせないようです。県政や市政の状況に係る政務調査について、議会事務局の職員数の少なさから、職員に多くを頼ることができない自治体では、「外に」各分野の専門家や実務家などの相談者を多く作ることも重要との解説が雨宮議員からありました。
また、各地方ニュースの情報収集、役所が作成する膨大な資料の読み込み、民間の動き方との比較など、全国の都道府県や県内全ての市町村の状況を徹底的に調査し、緻密な分析・比較検討に基づき質問を作成する方法も紹介されました。元行政マンの網中議員は、自分の自治体だけやっていない、遅れをとっているという客観的な事実は、「真面目」な行政マンのマインドに働きかけ、改善が期待できる効果的な方法と加えられました。
議員それぞれの問題意識や個性、戦法の違いが現れる、この議会質問の作成プロセスを知ると、翻って、行政マン自身も普段からどういう視点で業務点検や改善をしていったらよいのか、ハッと気づかされるような気がしました。
地方議会をライブ感ある空間へ?ところで、インターネット中継・録画放送も一般化した今日、議会中継を見て「おや?」と思った方も少なくないのではないかと思います。質問する議員も答弁する首長も予め用意された手元の原稿を淡々と読み上げているようで、臨場感のない単調かつ退屈なものになっていると。地域の重要な意思決定機関であるからこそ、予定調和的な進め方ではなく、臨場感ある討論型の議会に変えていってはどうか、そうしたら人々の関心をもっと引き寄せられるかもしれない、そんな仮説を立て、6時の公共は、登壇者の意見を伺いました。
まず、現状でも議会の様子を目を凝らして見ると、実はスリリングなシーンが織り交ぜられていることがわかりました。フクザツな事情はあるのでしょう、往々にして歯切れが悪く、すれ違いの執行部行政マンの答弁、この逃げ道を一つ一つ論理的に潰していき、最終的に辿り着くのはこの回答しかないという、詰め寄りの技を繰り出すこともあるという雨宮議員。逆に執行部が一発で真摯で意に沿う回答を返した際は一回の質問でストンと終わらせるそう。こうしたコントラストを意識して眺めてみると、両サイドの意図することや真相が見えてきそうで、もっと議会中継が面白く見えてくるかもしれません。
いずれにしても、網中議員からは、私たちがイメージするような臨場感のある討論型の議会というのは、議員の質問に対して首長や幹部行政マンが一問一答形式で答弁するといった現在の仕組みでは限界があるとの指摘がありました。ましてや、首長に代わり幹部行政マンが答弁する場面では役所のノリを超えた発言ができるはずもない、自分の発言に自分で責任をとれる立場の政治家同士でなければ、丁丁発止の議論は困難とのご指摘です。
面白くなくてもいい、「役に立つ」議会。これからの議会の新たな形とはそれでも、多くの方々に議会がもっと注目されるようにしていくために何か打開策はないものか。通算23年間、議会を、議員を、見守り育てようと尽力されてきた岩崎氏から、議会改革の一つの視点が示されました。本会議や委員会で、議員が個々順番に質問する形式だけでなく、議員同士でも質問し合い、その結果を踏まえて議員が行政へ質問を投げかけていく。
まさに「チーム議会」と行政との討議。時には行政から議員への逆質問があってもよいかもしれません。議会を、行政からポジティブな答弁を引き出し、地域課題のより良い解決策を導き出す空間へと転換していくことが、これからの時代には必要であると。日頃から、市民や議員、行政など、様々な役割を持つ人たちの対話がもっと必要だと考える6時の公共としては、こうした形の議会がもしも実現できたとしたら、どんな化学反応が起こるのか、ぜひ見てみたいと思いました。
また、そもそも「議会は面白くなくていい。市民にとって役に立つ場所でありさえすればよい」というコメントも提示されました。果たして今の地方議会は、市民にとって役に立つ議論や意思決定ができているのか。「議会愛」にあふれる事務局職員の視点から投げかけられた本質的な問いかけを受け、複眼的な目線で、地方議会にまつわる改革について考えていく必要がある、そんな気づきを得ました。
地方の民主主義のサイクルを回していくために、膝詰め議論を続けよう地方分権が叫ばれて久しくなった今、人口減少がますます進行する中で、自立した強い地方をつくり、より良いまちづくりのアイデアを紡ぎ出していくには、行政も議会も、政策法務能力や政策立案能力をさらに高めていく必要があります。また、今回まだまだ詰め切れなかった議員の多様性の確保についても、引き続き非常に気になる問題です。
今回のパネルディスカッションは、およそ1年前に公務員「的」なNPOとして誕生した6時の公共が、その独特な立ち位置の目線から、地方議会や地方政治について考えるキックオフの機会として開催したものです。参加者の多くから「まだ第2弾、第3弾を!」との声をもとに、1度、開けっ広げたこのフィールドで、市民、行政マン、議員の皆さんと、3者がそれぞれの役割を果たしていくために、今後も継続的に膝詰めの議論を展開していければと思っています。
動画配信スタートさて、6時の公共では、学習会での生のやり取りをパソコンやスマホで学んでいただける動画配信サービスを12月からスタートさせました。
初回の配信としては、本記事で紹介したパネルディスカッションに加え、平日夜に定期的に開催する「みんなの学習会」記念すべき第1回目、所有者不明土地をテーマに地域の課題解決の担い手について考えた内容をお届けしています。
平日夜、千葉での学習会に参加できない方々も、ネットを介して、6時の公共がお届けする学びと対話の場にご参加ください。
※動画視聴方法(オンラインコミュニティ参加方法)は「6時の公共」ホームページをご覧ください。
※本パネルディスカッションのダイジェスト動画(46秒)はYoutubeにて公開中。
特定非営利活動法人 6時の公共
千葉県内の有志の自治体職員による2年間の任意活動を経て、2017年12月にNPO法人として誕生した学習会コミュニティ。「自分たちのまちは自分たちでつくる」社会の実現を目指し、市民、学生、ビジネスマン、自治体職員、地方議会議員など、誰でも参加できる平日夜の学習会開催や、まちづくり学習教材の作成、まちをつくる意識の啓発活動などに取り組んでいる。
NPO法人「6時の公共」ホームページ:http://pm6lp.org/
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