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道府県議選では371選挙区、無投票当選という仕組みの副作用

政治山 / 2019年4月1日 10時0分

 3月29日、2019年統一地方選挙の道府県議選が告示となりました。そして今回は、945選挙区のうち371の選挙区(39.3%)で無投票当選となりました(前回は966選挙区のうち321選挙区が無投票=33.2%)。

 無投票当選という仕組みには、選挙管理委員会事務局にとってみれば選挙実施の費用を浮かすことができるというメリットがあります。また、選挙運動をせずに当選が決まるので、「ありがたい」と思っている立候補者もいるかもしれません。しかし、無投票当選には副作用も存在します。この副作用について考えてみたいと思います。

投票用紙

見えない民意

 まず無投票当選では、有権者がどの程度当選者を信任したのか、民意が見えません。「有権者の信任が厚いので無投票となった」と言う議員をしばしば見かけますが、それは勘違いと言っていいと思います。

 無投票当選が多いのは、1人区・2人区ということはよく知られています。選挙は一般的に「現職が有利」とされています。現職は知名度もありますし、実績もあります。1人区で新人が現職に対抗するには、強固な後援会組織を有していたり(地盤)、知名度が高かったり(看板)しないと厳しいとされています。選挙に勝てる見込みがなければ、わざわざ立候補しようとはしません。だから1人区では無投票になりやすいのです。

 2人区で無投票当選が多いのは、国政の与野党でそれぞれ議席を分かち合うケースが多いからです。特に国政野党が強い力を持っているようなところでは、与野党それぞれが共倒れを気にして、現在の議席を守ろうとします。そのため、選挙戦になりにくいのです。

 選挙結果という形で民意が可視化されていれば、政治家は自分が民意を背負っていることを強くアピールすることができます。選挙を勝ち抜いた首長や議員の方が、無投票当選した首長や議員よりも強い姿勢で意思決定に臨めるのは、そのためです。

見えない公約

 次に選挙公報について、2018年に新潟県が県議選で選挙公報を発行する条例を定めた結果、すべての都道府県議選で選挙公報が発行されることになりました。通常、立候補者は選挙戦を見越して選挙公報を作成し選管に届け出るのですが、無投票当選になってしまうと、この作成された選挙公報は選挙区の有権者に配布されることなく、いわゆる「お蔵入り」になってしまいます。

 選挙公報が発行されれば、誰がどのような公約を掲げているのか分かりますし、議員活動を通じて有権者の付託に応えているか評価することができます。しかし無投票当選では選挙公報が発行されないため、彼の議員活動が果たして妥当であるのか、判断することは難しくなります。

市議選の選挙公報

※写真はイメージです

後援会組織への影響

 かつて「人生楽ありゃ苦もあるさ」とオープニングで流れる時代劇がありましたが、後援会組織も同様だと言えます。無投票当選になれば、立候補者は選挙にかかる費用を節約することができます。しかし、その過程で後援会名簿の刷新や新しい支持者の開拓などを行うことによって、後援会の強度は増します。また後援会の新陳代謝にもつながります。

 無投票当選では、選挙を経験すれば得られたはずのものが得られません。そして、無投票当選で楽をしたことに伴うツケは、ボディブローのように効いてくる可能性は高いと考えられます。運動不足の人が急に体を動かすと、体のあちらこちらに痛みが出るのと同じだと思えばわかりやすいかと思います。

 長期的にみれば、無投票当選が後援会組織に負の影響を与えることは理解しておいた方がいいかと思います。

有権者にもたらす負の影響

 選挙は、実践を通じて学ぶ「主権者教育の場」と言えます。選挙があれば、有権者は、候補者の論戦を見て地元の課題を知り、また多様な考え方があることを学びます。そして、投票することで主権者としてのレベルを上げていくことになります。しかしながら、無投票ではそういう訳にはいきません。

 また無投票当選という制度の存在は、有権者の投票習慣の観点からもマイナスかと思います。選挙が常に行われているところの方が、投票習慣はつくりやすいと思われるからです。とりわけ、新しく有権者になった若者にすれば、人生最初の選挙で「(無投票で)投票できなかった」ということはあまりいい話ではありません。

 以上のように、無投票当選という仕組みには、費用を節約することができるというメリットはありますが、副作用もあるということも知ってもらいたいと思います。

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