[当事者と地方議員]シングルマザー・貧困―三次ゆりか江東区議
政治山 / 2019年4月5日 10時0分
4年に一度の選挙シーズン。地方自治体選挙にも注目が集まっていると思います。人によってはマイナスの要因として見られることもあった課題・特性を持った5人の方に取材しました。課題を抱えながら社会をどう考えていたか、選挙に出て、議員となって何を感じたか?なぜ当事者が必要かを答えていただきました。
三次ゆりか 江東区議会議員(1期)シングルマザー・貧困
議員になる前、当事者としての選挙、政治への思いはシングルマザーでダブルワーク、トリプルワークが当たり前でした。でもシングルになりたかったんですよ。毎日ご飯一膳くらいしか食べられない時期があって、精神的に病んじゃってとかではなくて、お金がなくて食べられなかったので一人親になって手当てをもらわないと生活ができなかったのです。
当時付き合ってた人とは生活費は折半で。私が子どもを欲しいと言ったから、私が負担すると。でも私は臨月まで働けると思ってた。みんなお腹大きくなっても働いていたから、それらを計算して「良し」と思ってたんだけど、未知の世界「つわり」というのがあって働けなくなってしまった。出産も自分のお金で、その後は貯金を切り崩す毎日でした。
最初に子どもを授かったのは2008年。当時は今のような券もなく、病院も全部、自己負担。つわりが酷かったので、往復もタクシー。産後、ほとんどお金が無くなってしまい、貯金が底をつきました。
当時は資本主義者、お金持ちが偉いと思ってた。自分がまさかお金が無くなるとは思ってなかったです。
仕事は不動産と銀座でホステス。多い時は月収100万円ありました。ホステスは個人事業主。お金も凄くかかります。着物の日とかあると、自腹だし、贈り物もたくさん。妊娠2カ月から生まれるまで、きつくて働くことができなくなりました。
妊娠5カ月の時だけつわりがなくなったんですよ。その時だけ、お金稼がなきゃとキャバクラで働かせてもらったんです。その後、すっからかんになった時に、もうどうしたらよいかわからなくなりました。政治とかまったく分からなくて、政治家はだれがいるかわからないし、興味もなくて、大人だから水さえ飲んでいればいいと思ってたけど、赤ちゃんはそうはいかなくて「結構、ヤバいな」と思って、心中を考えたこともありました。
見かねた友人が生活保護をすすめてくれて、「私が生活保護?」と。でも、生活保護ってどこで受けるかもわからなかった。当時、住んでいた港区の出張所に、首がまだ座っていない赤ちゃんと行ったら「あなたまだ若いでしょ?」「障害があるわけでもないんだから働きなさい」と。
「親もまだ若いんだし、親に頼りなさい」と言われて「えーっ」と。そしたら、当時の友人たちが赤ちゃんを預かってやるから、散歩に行ってこいと。戻ってきて、友人が子どもの面倒を見ているのを見て、自分は引きこもって時が止まった感じで生活してたけど、このままでは駄目だと思った。子どもを預けて、働きに出て、なんとかしないと。
自分がこんなに預け先に困ってるんだから、預け先を作ろうと思いました。各区に一人くらい自分と同じ境遇の人がいるだろう。なんとかしないと、と。チャイルドマインダーとベビーシッターを取ろうと思って、そこから預けて働きに出て。
自分と同じ引きこもっているお母さんたちを、自分も外に出たら変わったから、なんとか引っ張りだそうと。その時はごはんもたべられないし、本当にヤバい状況で。自殺を考えたこともあって目の前で「飛び降りてやるー」といって離婚してもらって、離婚すれば母子手当とかもらえるのもわかっていたので、その方がマシだと思って。全然、わかってなかったんです。政治も行政も仕組みも。
産後うつ?と言われるくらい大変だった食事をする事も、電気をつける力もなく、ずっと引きこもっていました。赤ちゃんが泣いていても、どうしようとも思わなかった。「別に」と、無気力で。
時が止まっているんですよ。赤ちゃんが泣いていても「この子かわいそう、私もかわいそう」と他人事みたいになっちゃって、今言われたら虐待になっちゃうかもしれない。かわいそうと思いながら、このままいくと私もこの子も二人とも死ぬなぁと。時が止まった感じでしたね。ポロポロと涙が止まらずでした。
当事者として実際に当選してから感じたことや取り組み私はこういう人たちを、こういう場所を知らなかったんだろうと思いました。
ママたちを引っ張りだそうとママイベントを始めていたんですよ。家に引きこもっている人を助けたいと思ったのに、どこに引きこもっている人がいるんだろうと少し行き詰って、そこで台東区議会議員の方に出会って「議員にならないか?」と。
議員はよくわからないし「選挙の時にうるさい人でしょ?」っていうイメージでした。選挙は楽しかった。当時はわかってなかったので、楽しかった。今はつらい、苦しい(苦笑)。
当選してからは、自分が体験してきたこと、今まで思ったこと、やってきたことをやっていこうと思って、質問とかでシングルマザーのことや産前産後のこととか、産後うつとか。そこをケアできれば離婚も減るし、虐待も減るし、貧困とかも減ると思うんです。ほとんどがそこの産前産後で解決できると思うんです。そうした、何もわかってない子が、自分の困ったことをそのまま江東区にぶつけたって感じですね。
待機児童も年々100人ずつ増えてきたところを、330人から76人まで減りました。自分の提言してきたことで、小規模保育と居宅訪問型保育事業というやつです。最初は行政も後ろ向きな答弁だったのが、2018年に予算がついて、すごく嬉しかったです。3年目にこれができて完全燃焼で。でも、4年目も手を抜いたわけじゃないですよ。お母さんたちの集まりで聞いたことをそのまま議会で発信して、変えられたこともたくさんありましたね。
なぜ当事者が必要か?当事者にできることとは?行政とか政治って考えたことがありませんでした。行政に行ったら、助けてもらえるって知らない人は多いんですよ。私もそうでした。
行政、政治って困った人のもの。私はお金にも困ったこともなかったし、いい車にも乗ってて、役所のお世話になるなんて、全く考えたことがなかった。でも、一寸先は闇というか、そういう人が一番やばい。
テレビとかで虐待の話とか見て、この人たち、どこに助けを求めたらいいかわからないのだろうなぁって。困ってる人はわからないの。声を挙げる先とか、政治とか。うまくやっていこうと頭のいい人が、仕組みをわかってる人が、その中で仕組みをどう変えるかって話してるけど、それだけじゃ困ってる人には届かないと思いますよ。
事件とか、ニュースとか、人が死んだとかは出るけど、じゃあこういう場合、困ったら、どうすればいいのかわからない。どうしたらいいかわからない、わからない。わーって言ってるうちに死んでしまう。さっきの産後うつの話も、ご飯も食べられなくて、ずっと引きこもってしまっていて、もしかしたら私もそのまま、子どもが死んでしまっていてここにいなかったかもしれない。虐待、虐待って言うけど、みんなそれ、あるんじゃないかと。虐待死はさせちゃいけないけど、虐待はいけない、いけないっていう風土もよくない。もちろん、いけないんだけど、虐待によって自分を責めてしまうお母さんもいるから。そうじゃない社会の底上げをしていきたい。
当事者へのメッセージ私は友だちに恵まれたなって思いました。友だちがいなかったらどうしようもなかった。あの時、俳優さんとも仲が良くて、ロケ弁とか持って帰ってきてくれて、すごくおいしかったなぁ、と覚えていて。友だちですね。やっぱり。すごい感謝してるし。
あの時はつらかったけど、そういう人はほかにもたくさんいると思う。教育を変えていきたいですね。こういう時、困ったら、ここに行くんだよって。偏差値だけ追うんじゃなくて、勉強だけできるのと、やっぱり違うなって。
※次回は、高校中退・不登校の当事者として、山本たかし中野区議にご登場いただきます。
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三次ゆりかプロフィール
1985年5月1日生まれ。江東区立東雲小学校、江東区立深川第五中学校、都立紅葉川高校卒業、視覚障がい者だった祖母と父親の元で育つ。23歳で出産。産後うつ気味になり産後2カ月にして離婚。シングルマザーとなり起業。
預け先に困った経験から自分のように困っている母親も少なくないのでは…と、子育て・母親支援のイベント企画、事業運営を展開。ママイベント『ママハピ』を毎年開催、一度に5000名の親子が参加してくれるほどに。
地盤看板カバンもなく、無所属で2015年に江東区議会議員に初当選。その年に東京都議会議員の音喜多駿氏と再婚し第二子を出産。会社経営をしつつ、江東区議会議員として子育て世代の応援をしている。
三次ゆりか氏プロフィールページ
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