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開票前の「当選確実」は信用できるのか?―選挙速報の不思議

政治山 / 2019年7月21日 9時0分

 選挙特番がNHKから民報各局までずらりと並ぶ選挙のライブ中継。投票が締め切られた数秒後に「○○候補、当選確実(当確)」というテロップが流れます。まだ、1票も開かれてないようなタイミングですが、何を根拠にしているのでしょうか?

テレビ

※写真はイメージです

各メディアの独自判断、外れるリスクも

 当確はそれぞれの報道機関が独自に「当選で間違いありません」と太鼓判を押しているだけで、内容を保証するものではありません。逆に言うと、信用性を掛けて「絶対に大丈夫ですから」と宣言しているわけで、万が一外れた場合に、当該メディアの信用性を著しく損なうリスクも潜んでいます。

 それだけに、準備にも抜かりはありません。ムービー(テレビ局やネット動画など)やスチール(新聞社や通信社、雑誌など)と呼ばれる各報道機関は、独自または共同分担して、投票所出口に調査員や記者を配置し、投票を終えた有権者に「誰に投票しましたか?」と尋ねます。通常は系列メディアで分担体制を敷きますが、選挙の規模に応じてライバル社同士が部分的に協力する場合もあります。

 これに加えて、事前に各選挙事務所や党本部・支部で票読み(獲得票の予測)の状況を取材したり、独自に電話調査を行ったり、期日前投票の状況を加味したりして、有権者の動向を逐一ウオッチしています。

総合判断で選挙班のトップがゴーサイン

 集めた情報を総合判断して、地方支局のデスクや選挙班のトップが当選確実か否かを判断し、ゴーサインを出した瞬間にムービーは生放送で、スチールはネット上などで情報を流します。

 票が拮抗する場合は、開票現場の状況も判断に大きな役割を果たします。小学校の体育館などで行われる開票現場では、入館を許された各メディアの記者が2階の通路などから双眼鏡で票の束を数えて、刻々とデスクに状況を報告します。

通常ニュースの誤報より影響力大きく責任問題も

 当確と発表された後に落選が判明した場合、落選者と当選者の陣営双方にとって、大きなショックを与えます。当確と言われた候補はぬか喜びで恥をかき、落選とされたはずの陣営は万歳しようにも駆け付けた支援者の多くは肩を落として帰路についています。実際、過去に当確と出た後に結果が逆転したケースはいくつもあります。

 2014年12月の衆院選では、放送行政を所管する総務省から事前に「当確放送については慎重にお願いしたい」と要請されたにも関わらず、テレビ報道で6件の誤報(キー局3件、ローカル局3件)がありました。通常ニュースの誤報以上に大きな影響を与えることから、社外的には原因究明を求められます。社内的には責任問題に発展するケースもあります。

期日前投票の利用者増で票読み難しく?

 それだけに、各メディアとも事前取材を含め、票読みには非常に神経質で、国政選挙の投開票日は選挙事務所と同様、報道各社の本社・支局は一種のお祭り状態の雰囲気に包まれます。放送局は夜通しで放送を、新聞社は降版時間(※)を大幅に遅らせて編集部門から配達サイドまでぎりぎりの時間で情報を詰め込めるだけ詰め込んで読者に届けます。

 最近は期日前投票を利用する人が相対的に増えてきたため、票読みも難しくなっているようです。特に参院選は衆院選に比べて、選挙区、比例代表ともエリアが広いため、一部地域の偏った票と全体の結果が異なるケースがあるので、各局の選挙特番でも衆院選の時ほど当確のスピードや数に差は出ない傾向にあります。

イギリスの国民投票でも誤報

 2016年6月23日にイギリスで行われたEU離脱の是非を問う国民投票でも、投票が締め切られた午前6時(日本時間)の段階では、現地報道で「残留派が勝利したとみられる」と誤った“当確”が打たれていました。ロンドンでは残留派が大勢だったものの、地方での離脱票が結果を覆しました。

 選管が「当選」と発表するのは、開票率100%か、残り票数がすべて対抗票になったとしても「当選」という状況になった場合であり、こちらは「確実」ではなく、「当選です」という確定情報になります。

※紙面データを印刷部門に送る時間。

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